チャプター3 「軌跡をなぞる指を眺めて」10
マリスの問いが問題だった。
正直なところ、フィルにはまだ明確な答えがないままだった。
「星魔石を使った魔剣を作って、星の魔力を武器に纏わせるのはどうだ?」
「それだと魔力が発散してしまって……魔力密度と言えばいいのかしら……それが低くなってしまうわ。魔剣が纏う魔力が周囲に散らないように固定化できるならいいのだけど」
「だとしたら、やっぱり星魔石そのもので武器を作るか……」
「星魔石が必要になるなら聖域か霊脈に行かないといけないんですよね。そんな時間――」
フィルが最初の候補として星魔石を使った武器製作を挙げなかったのは、レスリーの懸念と同じだった。
今から霊脈や聖域に出向いて、星魔石を入手するとなれば、数日時間が掛かってしまう。それではアストルムをオルフェンスの対岸から連れ戻す期日に間に合わない。
隣のレスリーが何かに気がついたのか興奮気味に声をあげた。
「あります! 霊脈で採取した、星魔石! マリスさん、言いましたよね? プロタクラム都市群遺跡は霊脈だって!」
「ええ……」
「私、プロタクラム都市群遺跡で、その星魔石を採取してます!」
レスリーは工房内の隅に置いてあった箱を抱え上げた。
「よいっしょっと……ふぅ……。これ、全部、遺跡で採ってきた魔石です。使えますか?」
マリスが青く透き通った魔石を手に取って、灯りにかざして確かめていた。
「大丈夫そうね。これを使って武器を作れるなら、条件を満たすわ」
「じゃあ、星魔石での武器製作をやってみるよ。レスリー、このあとランドリクさんの工房にいこう」
「はい!」
これで武器はどうにかなりそうな目処は立った。
しかし、もう一つ解決しておきたいことが残っていた。
「それでマリスの方はプロタクラム都市群遺跡の伝承についてなにかわかったのか?」
フィルの問いにマリスは渋い顔をした。それだけで進捗が良くないことが察せられた。
「ラピズが自身の蔵書の中でも古い物をみてくれてるけど、結びつきそうなものはないそうよ。私もいくつかの伝手を使ってるけど、さっぱりね。伝承や儀式の詳細が掴めないと、想定外の事態が起きる可能性があるからはっきりさせたいんだけどね」
彼女は腰に手をあって溜め息を吐いた。
「そんなに大変なんですか?」
「後世に伝承を残していく過程で少しずつ変化していくの。だから、プロタクラム王朝時代中心に伝承の源流のようなものを探す必要があるわ。これがまた面倒なのよ」
マリスの様子を見て、レスリーは彼女の苦労を察したようだった。
「それは途方もないですね」
「ともかく、ラピズと二人で調べるわ」
「引き続き頼むよ」
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