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アルスハイム工房へようこそ  作者: 日向タカト
第4話「オルフェンスの対岸」
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幕間 「魂の還る場所」

 水が押しては引き、引いては押す音が聞こえる。

 波音だ。

 聴覚と同時に肌にはサラサラとした感触があることに気が付いた。

 アストルムはゆっくりと意識を取り戻し、身体を起こした。

 青い海が見え、下を見れば白い砂があった。

 立ち上がり、視線を海の向こうに向ける。

 薄らと都市のような輪郭が見える

 見上げれば、星空のような黒い空間が広がり、奥には薄らと大きな輪のようなものがあった。

「ここは……どこでしょうか?」

 自分の記録情報を遡る。

 プロタクラム都市群遺跡で石碑を読み上げ、竜が出現し、額に現れた瞳が光った。

 そこが最後だった。

 つまり、自己の記録情報に、この場所に移動した記録がない。

「フィル、レスリー、いますか?」

 その声が虚しく響いた。

 二人だけではない。誰かがいる気配もない。

 アストルムはしばらく思考して歩き出した。

 それからどれだけ歩いただろうか。砂浜の終わりが見えない。海を泳いで微かに見える都市にいくことも考えたが、どれだけの距離があるか不明であることから、危険が高いと判断して、やめた。

「あとは……」

 アストルムは海とは反対側、自分の後方へと視線を向けた。

 そこにはドアがぽつんとあった。

 ドアに近づいて、ドアノブ回して開けてみるが、向こう側が見えるだけだった

「なにもありません。なら、どうして、ここにドアがあるのでしょうか」

 アストルムの呟きに答える声が聞こえた。

「そのドアはまだ繋がっていないだけだよ。条件が満たされ、あちら側でエリシオンの門が開いた時、そのドアは正しく繋がるよ」

 男の声がした。

 アストルムは声の方を向いた。

 そこには黒髪と紅玉のような瞳、そして無精髭を生やした男性がいた。年齢は三十歳前半ぐらいだろうか。

「……あなたは、誰ですか?」

「僕かい? そんなことはいいじゃないか。大事なことじゃない」

 アストルムは彼をジッと見つめて、顔をまじまじと見て既視感を覚えた。

「失礼ですが、どこかでお会いしましたか?」

 彼は肩を竦めるだけだった。

「どうだろうね。会ったかもしれないし、そうじゃないかもしれない。どちらにせよ、ここで僕と出会ったことや話したことは夢泡沫と同じ。何かの拍子で忘れてしまうのだから、些細なことだよ」

 彼の発言はいまいちはっきりしない。

 アストルムは追求することをやめて、次の問いを投げかけた。

「ここはどこですか?」

「オルフェンスの対岸だよ。海の向こうに都市が見えるだろ? あれは命が生まれて還る都市オルフェンス。あの都市を臨む海岸だから、オルフェンスの対岸と言うのさ。そして虚空の彼方に浮かんでいるのが命の循環の輪で、星のように見える輝きは魂の煌めきだよ」

 オルフェンスの対岸、その名前は記録情報にある。

「それは伝承に登場する地名では?」

「その通りだよ。君は、儀式魔法を発動させてしまったんだ。しかし、なにかしら不具合があって、ここに来てしまった。それは本来とは手順が逆なんだ。試練を乗り越えたものがエリシオンの門を開き、歩き続けて、オルフェンスの対岸に辿りつく。それがあるべき姿だ」

「儀式魔法ですか?」

「ああ、そこからか。この星には、『仕組み』が存在する。それは星と星の子が世界を運営するのに必要なものと考えてもらっていい。儀式魔法は、その『仕組み』に介入する手段のようなものだよ」

「……わかりません」

「無理に理解しなくてもいいよ。君は時間を持て余すだろうから、しばらく、話でもしようよ。そうだな、君のことを教えてよ」

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