表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

前世・悪役令嬢モノ

悪役令嬢の気は長い。

作者: 佐田くじら

感謝!


―――ワタシ ハ オトメゲーム ニ テンセイ シタ!



ちゃんちゃらーん。

と、私その手のゲームやったことないから知らないけど。効果音も適当だけど。



「お前と婚約破棄する! そして僕は彼女と共に王になることをここに誓う!」


ワーッ!



………その手の小説・漫画は読み漁ったから間違いない。

私はどこかの乙女ゲーに転生した!


………それが?



「―――殿下」



ビクリ、と顔を上げる。

……腹黒系高飛車令嬢に、気弱系浮気王子。改めて思えば、お似合いだと思うけど。



「逃しませんわ」



ニコ、と笑う。


性格ちっとも変わらなかったなぁ、私。違和感ないよこれ。あぁ内心の言葉はそこそこ変わったかけど。



「……ど、どうして。お前とは離れて、僕は彼女と婚姻を!」


「なされば良いわ」


「………!?」



屈辱と不幸には嘲笑で返せ、が私訓だ。

最も、この鬼ばかりの社交界で生きてれば、こうならざるを得ないけど。



「ねぇ? あなたずいぶんと(わたくし)のモノに手出ししてくれたようね?」



王子と結婚するというその娘は、怯えたようにこちらを見てる。罪悪感………のようなものもありそうだ。

まったく、なら何もしなきゃ良いのに。


スッと近寄った私は、自然にその頬に触れて。



チュッ。



反対側に、キスをした。


思いの外大きな音。まぁ、そう仕向けたんだが。

周りの人間は王子も含めて、あんぐりと口を開いてる。私がキスした彼女は………あら頬を染めてる。意外とイケるクチ?



「好きよ。()()()()()



奇をてらった態度は、結構有用だったらしい。能力の半分は麻痺したような王子に、視線を合わせる。



「私、上手くやれますわ。だから置いてやってくださいませんこと?」


「な、どうして………」


「私、あなたを愛しておりますもの」


「な………っ!」



はい、ウッソー。なんて言いたくなるくらい驚いている。

だから今のうちに畳み掛ける。



「ねぇ、殿下。私たちきっと、コミュニケーションが足りなかったのですわ。だからあなたともすれ違ってしまった。このまま終わるのは、誰にとっても惜しい。だから………」



くっ、と器用に身体を近付けて、自信のある胸を押しつける。



「………婚約は、続けましょう?」






###






「で、どうなったの?」


「婚約は続行。地位は保てたし、少しは愛してくれたし、結果はまずまずといったところよ」


「………流石、母上です」



半分くらい呆れたみたいに言われた。あなたが話せとせがんだのだろう。


ゲームと私との唯一の差異は結局、知ってるか知らないかだ。人間こうなるとわかってるパターンがあって、しかもそれが失敗例なら、結構上手くやれるものだ。平静を欠いた私は自滅し、飄々とできた私は身を留めた。そこに成功も失敗もない。


「ははうえーッ!」



唐突に抱きつかれた。



「あら、どうしたの?」


「ははうえ! うばがぼくのおかしをとりあげたのです!」



チラリと乳母を見る。普段気丈な彼女も、私に言いつけられたことで少し不安げだ。

今度は下の息子を見る。注意して、と言わないばかりの顔だ。私は彼に向き合う。



「お菓子を取り上げられたの? どうして?」


「いじわるだから!」


「そう」



ふっ、と笑ってみせる。



「本当に?」



尋ねると、ビク、とした。



「きまりだから、かも……」


「あら、では今のは嘘?」


「う……ん…」



ふむ、正直でよろしい。

ニコ、と優しく見えるように微笑んだ。



「いい? 嘘つくのは全く構わないわ。何事も嘘によって潤滑に進むし、効率も勝手もいいもの」



私もよくやるし。



「でも、後からバレるのはいただけないわ。信用を欠くし、人を不快にするもの。だからね、嘘をつくならその場でバレる冗談のようなものか………墓場まで持っていける、バレることのない嘘にしなさい」


「………それ言っちゃうんですか、親なのに」



上の息子が呆れ顔だ。が、大事なことだ。

嘘をつくならそれを秘する義務もあると、私は思う。

私はついた嘘はほとんどを墓場まで持っていく。その中でいちばんの大嘘を、ふと思い出した。




『好きよ、―――――』



………。



―――ふふ、ばかね。身の丈を伸ばすのなら、それを留める術まで考えるものよ。



後宮の隅にまだ独り暮らしているであろうあの娘を思いだして、少ししんみりした。

まぁ彼女も所謂泥棒ネコだ。割に強かだし………ずっと独りということもないだろう。



「終わりよければすべて良し、って言うでしょう?」



私は幸せなのだ。




わかりにくくても、どこか裏のある話が好きです………。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ