愛すべき人々 ~生死の境~
今回の主人公は私です。
長い間、過酷とも言える賑やかな環境の中で暮らしてきた私は、
ひとりになると強烈な孤独感に苛まれた。
そこで、当時付き合っていた彼女のところで生まれた猫を養子にもらう事にした。
私: 『ポチ!帰ったでぇ!』
ポチ 『にゃぁぁん♪』
明後日に友人と生まれて始めてのスキーに行くことになっていた私は、
ポチとの食事を済ませると友人から借りたスキーウェアに
撥水スプレーをかけていた。
私: 『ポチ!すまんけど2日ほど里帰りしとってくれなぁ!』
ポチ: 『にゃぁぁん♪』
友人から借りたスキーウェアに撥水スプレーをかけ終わると、
ブルズ対ロケッツの試合を1杯やりながら革張りのローソファで見ていた。
私: 「…うぅぅん…。」
(いつのまにか眠ってしまったらしい。…しかし…なんかおかしい…。)
時計を見ると夜中の3時をまわったところだった。
(い…息が…苦しい…。)
(お腹も…痛い…。)
私は便意を我慢できずに這う様にしてトイレへ入った。
『バリッ!バスッ!ビビッ!』
…失礼しました…。
(…うぅ…息が苦しい…ケ…ケツも拭かれん…。)
ギリギリお尻を拭いたが、水を流す力もなく、
私は這いながらソファまで戻った。
私: 「なんでこんなに息苦しいんやろ…。」
そこではじめて気が付いた。
(撥水スプレーだ…。)
撥水の粒子は空気より重い為、
ローソファで寝転んでいた私はたっぷりと吸ってしまったらしい。
(あかん…少しでも高いところへ行かんと…。)
電動ベッドに乗り、スイッチを入れ、ベッドごと上へあがる。
クローゼットの上に上がっていたポチは、どうやら無事のようだ。
(はぁはぁはぁ…。どんどん苦しくなってゆく…。)
ポチ: 『にゃぁぁん…ゴロゴロゴロ…♪』
ポチがベッドに登ってきて私の胸の上に乗ってきた。
何を思ったか一生懸命心臓マッサージをはじめる。
(うぅぅぅぅ…ポ…ポチ…気持ちはありがたいけど、苦しいから乗らんといてくれぇ…。)
ポチ: 『ゴロゴロゴロゴロ…♪』
(き…救急車呼ぼうかなぁ…。いや…ちょっと辛抱したら治るかも…。)
(ぽち…頼むから降りてくれぇ…。)
しかし、息はどんどん苦しくなって行く…。
息を大きく吸うと咽込んで苦しいので、
『ハッハッハッ』と虫の息状態でじっとしている…。
目を閉じると死んだお婆ちゃんが手をふっている。
お婆ちゃん: 「ひ~にぃ、こっち来たらあかんじょ~。」
(行けへん!行けへん!)
………『あぁぁぁぁ…。うぁぁぁん…。』
朝の5時頃、例によって例の声が聞こえて来る。
(…これは…死ぬかも…。)
(しかし…人生の最後に聞くのがあの声か…む…むなしい…。)
朝8時半まで我慢して、近所の病院へ歩いて行った。
普通なら歩いて5分位の所だが、
歩幅20cmぐらいで歩いていったので30分ぐらいかかった。
(うぅ…なんか年寄りの気持ちがわかる…。)
病院に着いて事情を説明したが、
救急病院へ行ってくれと言われ、
結局救急車に乗る事に…。
救急病院で事情を説明すると、先生はうれしそうにこう言った。
先生: 「いやぁ、話には聞いていたが…撥水スプレーねぇ…。」
先生: 「記念に写真撮らせてください♪」
(き…記念て…笑ろてる場合か…何でもええからはよ楽にして…。)
即入院と言う事でスキーにも行けず、
肺の中にカメラを入れられ鼻酸素で4日間すごしました。
ポチの事が気になったので彼女に電話して
部屋を見にいってもらったが、
まるで殺人現場の様な有様と、
うん○まみれのトイレを見た彼女は相当なショックを受けただろう…。
皆さん、撥水スプレーを使う時はベランダ等の外で使用するか、
換気には十分注意しましょう。
まぁ、こんな間抜けなヤツは私ぐらいでしょうけどね…。