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ハッカと小説──どちらが好きですか?  作者: 桜華燐
1缶目 やはり缶を開けないと一粒目はわからない
2/2

前編

 ひらひらと舞い散る桜の花びらを鑑賞しつつ、俺は一人机に突っ伏していた。

 俺は愛用の黒のシャーペンを耳にペンを挟み、白紙のコピー用紙をじーと眺める。時々頭に思い浮かんだ言葉や文章をそれに書いていくが、

「……これは、違うな」

 これもまた愛用で、黒色の消しゴムを黒の筆箱から取り出し、気に入らない物を消していく。

 ごしごしびりっ、ごしごしびりっ、ごしごしびりっ……さすがコピー用紙。破れるのがお早いことで。

「新しいの──鞄の中か」

 放課後の学校というものは案外人がいないもので、教室には俺と静けさだけが残っている。一様部活などで残っている奴等はいるがほとんどが運動部。外にいるか体育館にいるかだ。教室に残っている奴は全くと言っていいほどいない。

 はらはらと舞う桜の花びらを一枚、手のひらで掬う。白に近い薄ピンク。遠くから見ると、より一層薄ピンクが際立ち、幻想的な風景を作り出す。

「きれい、だな」

 机の上にそれを飾り、止まっていた手をまた再開させる。

 カチカチカチ、とんとんとん、カチカチ──

 鞄から取り出した新品のコピー用紙に引き継ぎを行う。

ガ、ガラガラッガラ

 俺が書くのに集中し始めたとき、教室の後ろの方の扉が開く音がした。ここの扉は立て付けが悪いのか、開き時に何か詰っているような音がする。

 正直、音が頭に響くんだよねー。

「……やっぱお前か」

「おすっ!」

 音源の方に目を向けてみれば、そこに立っていたのは俺の二人しかいない友人の一人だった。想像してた通りでなんの面白げもない。

「なんでそんな元気なのかねぇ……なあ?『たくみん』?」

 俺には友達が二人しかいない。正確にはもう少しちゃんと考えれば要るかもしれないが、学校の中ではたぶん二人だろう。

 その二人の内の一人、通称『たくみん』こと、前田匠(まえだたくみ)だ。身長は俺より数センチは低いが、大人びていて社交性もある。なんならそこら辺の陽キャラとか言うやつらと話していても何の遜色もないやつだ。

 だが、俺よりコミュ力ある奴は許さん!

「いつも言ってるが、その『たくみん』って言うの止めてくれないか?」

「じゃあ『たくみく』?」

「それは別の奴」

「それじゃあ『たく』」

「俺の名前は匠だ!」

「なら、たくみん♪」

「お前な!」

 ここ白佐小(しろざこ)高校では、陽キャやらDQNやらイキリ陰キャやらやら──そんな人に好かれそうで、敵の方が多そうな奴らが多い。そん中でも珍しい部類の人間だ。所謂陰キャなのだろうが、それでも親しみやすい部類だ。ぱっと見だけではこいつは上の人間だ。カースト上位とはいかないまでも中間辺りにはいる人間だ。

 ──くたばれ、バカ野郎!

「名前もそうだけどよ……何て言うか、お前。顔に今思っていること大体出てるぞ?」

「糞が……」

「声に出していいとは言ってないからな!?」

「はいはい」

 白佐小高校──通称『シロザコ』は、県内でもそれほど学力は高くない進学校としてそれなりにここら辺では有名だ。先程も言ったが変人が多い。(俺も含めてだけど)そんなところだからこそ、こいつはとても優秀な部類に当たる。こんな会話ができる友達はこいつぐらいだ。

 正直ありがたいと思ってるよ!ちくしょう!

「そういえば、お前は帰らないのか?」

 放課後残るやつと言えば部活してるやつか、友達を待っているやつだ。稀に俺みたいな変人が残っているが、こいつはそんな変人ではない。たぶん理由があるだろう。友達を待っているか、先生に呼ばれたか──

「お前が帰らないからだよ」

「そうかそうか。それは大変だな……はへぇ?」

 こいつ何て言ったんですかね?何々?『お前が帰らないからだよ』だってぇ?なに嬉しいこと言ってくれちゃってんですか!バカ野郎!

「もしかして、俺のこと待ってくれちゃってる感じですかな?」

「待ってやってるんですよ、アホ野郎」

「誰がアホじゃボケ!」


 


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