神社
「··········これが立の言ってた神社なの
「恐らくな·····」
確信はなかった。この暗闇の中で、俺と鈴華が会話している間に神社の姿が見えてなかったのか、急に光を放ち、姿を表した。そこで俺達は神社を初めて認知したのだ。
──導かれるように、自然に一歩を踏み出し、二人は鳥居に近づこうと、
その時だった
「誰かいるぞ」
神社の中から白の衣を纏った老人らしき人物が、何故か影も映らず歩いて来ているというか浮遊して移動しているような··········。
「··········おじいちゃんなの?」
「鈴華何を言って·····」
「で、でも間違いないわ。二年前に亡くなってしまったけれど忘れはずないわ」
(どうなってやがる·····夢なら早く目覚めてくれ)
一方、健と明莉は少し離れた場所で探索していたが、その輝かしい光に気付いた。
「明莉、あれ......」
「ええ、光ね。あちら側で何が起きてるの·····?」
「とりあえず向かう」
明莉は頷き、二人は急ぎ足で向かった。走ってすぐに到着したいところではあるが、足元は暗く電灯で照らさなければ転んでしまう危険性もあり、急ぎたいのは山々だが我慢だ。
そして、立と鈴華の様子を伺うために一応グループLINEにメッセージを送信しておいた。
──光に向かう途中で十分ほど経過したが......返信が返ってくることはなかった。
「おい、正気か鈴華!」
白く包まれた老人に接近しようと──いや、まるで引き寄せられているような気がした。俺はそれを阻止しようと反射的に鈴華の右腕を掴んだ。
そんなことも気にせず鈴華は進もうとするが、咄嗟に振り向き瞼から少々雫を流しながら俺を睨んだ。
「離して......!! 私はおじいちゃんに会わなきゃいけないの」
「な、何を言ってるんだ。鈴華の爺さんはもうこの世にいないはずじゃ......」
「でも目の前に間違いなくおじいちゃんなの。──そして思い出したわ。ここは幼い頃におじいちゃんと巡った神社。なぜ忘れてしまっていたのかしら......」
「とりあえず落ち着け」
光を纏った鈴華の祖父は鳥居の前でこちらを見つめていた。その表情はどこか悲観さを感じような、まだこの世になにか未練があるのか。
──まず、幽霊相手にコンタクトなんて取れるのか、祖父は先ほどからこちらを見つめて一言も口を開かない。
(あぁ......頭がおかしくなったのか、俺は幻覚でも見ているのか)
俺は右手を頭部に乗せて、困惑していた。なんとか左手で鈴華の腕を掴み、進行の停止を継続している。──離せば、間違いなく鈴華は祖父に向かって走り出すだろう。
正直おれもなぜ鈴華の進行を止めているのか分からなかった。が、なんとなく「良い予感」がしなかったから。いや、どちらかと言うと「少し嫌な予感」がするからの方が適切かもしれない。