参
先輩たちも引退し、次に向けて本格的に練習が始まる。先輩たちと誓った来年は必ず全国優勝を目標に新たなレギュラーの座を得たメンバーと蒼依、琉晟を中心に劇的な進化を遂げられるように。
「・・・蒼依お前は、体力だ。体力の強化しろ。」
「了解ー!」
「・・・だが、無理するな。倒れられたら困る。」
キャプテンの指示・・・いや、琉晟の指示で全員が強化すべき自分の弱点の克服のために、練習をしていっている。なぜ、キャプテンの指示ではないかそれは、キャプテンとか先輩よりも琉晟がよくそれぞれの弱点や特徴、強みなど1番理解し、ここを強化すべきところを一人一人のことをよく見ているからだ。蒼依はボール裁きやキープ力などテクニックや、シュート力はなんの問題もないが、決定的に体力が男の中に混ざってするには足りないのだ。持久戦に持ち込まれると、蒼依の消耗は激しくコートに立っていられなくなってしまうところだ。
「・・・蒼依、あとお前の弱点は俺に頼りきりなところだ。確かに俺は守ってやる。だけど、お前はもう少し自分の限界を知ってくれ。じゃないとこれから先が困るんだ。」
「・・・うん。りゅうちゃんありがとう。」
「・・・だから、りゅうちゃんと呼ぶなバカ。」
琉晟の言葉にクスッと笑うその蒼依の顔に惚れ込んでしまっている琉晟もいて、バレないようにして欲しいがために禁止している言葉のを言う彼女に忠告していてもとにかく蒼依を可愛くて愛おしく思ってしまうのは彼が重症だから。
こうして着々とメンバーみんなの弱点が強みに変わり、また新たな弱点が出ればそれを強化してとほとんどが弱みなんてほとんど無くなるようになった。そのため戦えば今まではダメだったことが余裕でこなせるように。チームワークも高めるために蒼依中心の輪が出来たり。おかげで練習試合などで、先輩たちが卒業したあとのチームでは弱点だらけの負けっぱなしで、蒼依がいなければ勝つことも出来ないほど、酷かったが、彼らを高める強化練習で彼らは蒼依がいなくても地区予選は余裕で勝ち進めるほどの腕前にみんながなっていた。あの全国大会優勝を惜しくも後一歩で届かなかった悲しみから1年。成長した彼らの力は通用した。特に蒼依に足りなかった体力は激的に変わったのとチョロチョロ動く前とは変わらない動きに、いくら動いても疲れないような方法も生み出し、蒼依は大いに活躍した。そうして昨年逃した優勝の座を取りに彼らの戦いは一人一人の力を大いに出すことができ、優勝へと導いた。昨年の悲しみを胸に変えた優勝が喜びに変わった。昨年の引退した先輩たちも見ていた、彼らも喜んだ。
「蒼依!優勝だ!」
「・・・うん!来年も優勝してやる!」
「・・・さすが蒼依。もちろんそうだな。」
強豪と言われた彼らの先輩達を抜く天才とも言えるだろうか実力は計り知れない努力とチームワーク。そんな努力も身を結びますます、成長した彼らチームメイトは次の年の蒼依達が3年生になる代の最後にも優勝し、2年連続優勝を成し遂げた。そして蒼依は3年連続MVP獲得。もちろんそんな活躍すれば、彼女の元にも良い知らせが来る。スカウトの話は当然のようにかかるが、彼女にはプロで活躍するという意思はなく、全て断っている。もちろんスカウトが男のプロの話だからでもある。女としてなら少し考えても良いが、男としてサッカー部に入って騙している以上は女としてスカウトされるはずもなく、プロになるという夢は諦めようとしていた。
「・・・蒼依、本当にプロにならないつもりか?」
「・・・うん。なんで?」
「なんでって。蒼依の実力があればプロだってやって行けるのに。琉晟はプロになるって決めたらしいし、お前ら名コンビでまたやれば・・・」
蒼依の女という事実を知らない彼らにはそう言われる。琉晟はプロになると決まり、夢の道へと駒を進めた。彼と同じ場所という訳には行けない蒼依の道はまだ開けない。
「・・・ううん。いいの。僕は高校で強いところとサッカーがしたかった。それだけだから。」
「えー。もったえねぇよ。蒼依実力あるのに。」
チームメイトから暑い勧めを受けるが蒼依の意思は固い。そう、もうこれ限りで辞める覚悟。でもやりたいとは思う気持ちも残るが、固い意思にチームメイトも特に言わなくなった。だが、先に進路の決まった琉晟は蒼依の実はまだやりたいし辞めたくない意志を分かっていて、プロの男子チームに入りたくはなくて断っていることも理解し、琉晟自ら女子チームへ直談判しに行き、蒼依のことを売り込み、あとはどうするかを決めるのは蒼依自身。
「・・・あお、ちょっと。」
「・・・ん?どうしたの、りゅうちゃん?」
「蒼依には俺もプロで活躍して欲しい。だからここに話してきた。行ってみて。」
そう言って渡した1枚の紙きれ。それはただの紙切れには過ぎないがきっと蒼依の運命を変える重要な1枚の紙きれになるであろう。
「・・・え、りゅ、りゅうちゃん。どういうこと、」
「蒼依、説明は後だ。とりあえず行ってこい。お前の人生だ。そこに行って決めてこい。」
「う、うん・・・。」
背中を押され蒼依は琉晟に指定された場所に足を運んだ。そこは蒼依の人生を変えるかもしれない場所であり、眺めていると1人の男の人が近づいてきた。
「・・・どうしたの?・・・あ、君ってもしかして彼の言ってた蒼依ちゃんかな?」
「・・・彼・・・あぁなるほど。はい!岩永蒼依です!」
「・・・おぉ!待ってたよ。彼から聞いたよ。君は男の子に混ざってするほどサッカーが上手だそうじゃないか。ぜひ見せて欲しい。」
どうやらその男の人・・・いや、話を聞くと監督さんらしい。監督さんの言う彼から蒼依のことを説明されていて興味を持ってくれているようだ。『彼』というのが琉晟だということは直ぐに蒼依にもわかった。監督が言うには琉晟から聞いているその実力を見せて欲しいというのだ。
「・・・ぜ、是非!」
「良かった!それじゃあ、集合!!」
監督の一言で練習していたチームメイトが一気に集まってきた。そして彼女らに蒼依のことを説明し、チームに混ざって少し実力を見せて欲しいと頼まれた。ちょっとした無茶な対決を監督は言い渡した。
「・・・蒼依ちゃん。彼女達はこの中で1番の実力者だよ。彼女達からボールを取ってシュートしてみて?・・・それが出来たら認めよう。」
監督の無茶な要求それはかなりハードだ。このチームは女子で1番強い子達が揃う最強のチームだからだ。その中の監督の言う『彼女達』とは4人ほどの実力者という彼女達はもちろん強かった。中々ボールなんて奪えやしない。だが蒼依も強いチームで次の行動を予測してプレーしてきたわけで少し様子を見ただけで手に取るように次の行動がわかる。わりと簡単に奪うことは出来た。だが、シュートは打たせまいと全力阻止してくる彼女らの隙をついて打つがゴールポストに当たり跳ね返る。これが蒼依の狙いだと知らない彼女達は勝ったと思ったのだろか、このボールを目で追う、そこに蒼依は跳ね返り1番の高い位置に達した頃飛び上がりお得意のオーバーヘッドキック。キーパーも彼女らも監督も呆然と見つめ、ゴールに吸い込まれるボールを見送った。
「・・・あ、蒼依ちゃん。本物だ彼の言う通り凄い子だ。ぜひうちのチームにスカウトする、」
「・・・ありがとうございます!ぜ、是非やらせていただきます。」
「それは良かった!蒼依ちゃんが来る日を楽しみにしている。」
そんなこんなで蒼依もこれからもサッカーを続ける場所が見つかり、ウキウキで寮へと戻った。そして紹介してくれた琉晟へと報告に。
「りゅうちゃん!ありがとうね!」
「・・・決まったか。じゃあ、もう1つ。蒼依、お前にプレゼント。俺と卒業したら結婚して。」
指輪を渡し、突如そういった琉晟の言葉に驚き、言葉を失う蒼依。
「蒼依、俺はお前が好きだ。だから俺と結婚して。返事は?」
「・・・うん。蒼依も好き。」
こんな約束するとは思っても見ないし、付き合ってもない2人の運命というものなのかもしれない。卒業まであと少し。蒼依は騙し続けて男の子の生活を、琉晟の前では女の子に戻る生活を。続けていく。
月日は流れ迎える卒業。大半をサッカーで占めてきた3年間の思い出が蘇り、実は女だったのに大会MVPを独占してしまった事実に心苦しく思う事と、騙していたことにも罪悪感。そんな蒼依の思いは琉晟にはお見通しで、サッカー部連中を集めて、卒業してしまっている先輩たちも集め、卒業祝いの打ち上げと称してみんなで集まった。
「・・・集まってこうして祝えて嬉しいです。そして、皆さんに報告があります。俺と蒼依は結婚することになりました。」
「・・・はぁ?!ふたりが?男同士だろ?」
「・・・いや、蒼依は女。蒼依はさぁーみんなを騙してきてたの。」
何気なく、感謝や卒業後のことを話していた流れで琉晟に蒼依の秘密にしていたことをサラリと暴露されてしまう。
「・・・え、お前疑った時に言ってたこと全部嘘かよ?」
疑問に思うことをぶつけてくる夏基。夏基も琉晟の中学生時代からの親友だ。
「・・・あぁ。蒼依が何がなんでもバレたくないって言ってたからな。嘘というか真逆だ。俺の言った蒼依のことはほとんどが真逆の答えが真相さ。」
「・・・なんだよそれ。ってか、あぁ、なるほどな。お前が澪歌と付き合ったのって蒼依に似てたからか。」
「・・・あぁ。澪歌に振られた時に言われて気がついたけどな。」
暴露で蒼依の秘密だけでなく、琉晟のこともあらわになっていく。
「にしても、性格といい、身長といいそっくりだな。」
「・・・身長までは一緒だと知らなかった。なんとなくこのくらいであって欲しいみたいな。ちび蒼のままでいて欲しかったし。」
「・・・りゅうちゃんもちびだったのに、なによ!」
「いや、少なくとも蒼よりはでかかった。」
ちょっとした言い争いが始まる。この言い争いには琉晟の元カノで夏基の現彼女の澪歌がクスッと笑う。
「・・・琉晟、蒼ちゃんのこと本当に好きね。私、付き合ってた頃誰かと重ねられてるのがすごく嫌で別れたけど蒼ちゃんなら納得。蒼ちゃんすごく可愛いもの。」
「・・・澪歌ちゃん・・・蒼、澪歌ちゃんの方が可愛いと思うよ。」
「・・・ありがう。そうだ、蒼ちゃんこれからは女同士仲良くしましょ。お友達として。」
「・・・うん!もちろん!」
澪歌ともすっかりと仲良くなった蒼依は女同士の話で盛り上がった。
「蒼ちゃん、琉晟ね、本当に私と付き合ってた時から・・・いやもっと前だろうね、蒼ちゃんしか頭にいないの。私ね、付き合って直ぐに後悔するくらい蒼ちゃんと私を重ねてたのよ?」
「・・・お、おい。澪歌、何言ってんだ。」
「あら、本当のことじゃない。蒼ちゃんの性格に似てたから私の告白にすぐOKしたの知ってるんだから。まぁ、その相手が蒼ちゃんだって言うのは今日知ったけど。」
恥ずかしさか、琉晟がうつむき加減であらぬ方向を向いている顔は紅く染まっているようにも見える。
「・・・蒼依、お前愛されてんな。今までの3年間言われてみれば楠田のやつ岩永しかみてなかったな。いつも目で追ってた。恋してるからだなんて思わなかったけどな。」
今度は健光がからかうようだけど羨ましそうに言った。
「・・・だな。岩永お前は愛されてるよ。」
今度は幸嗣に言われる。さらに照れ顔の琉晟が可愛く思えてくる。もう突っかかる意思はないようだ。言いたい放題に彼は言われる。
「・・・蒼、もういいだろそんだけ俺の話を聞けば。分かっただろ。」
「・・・うん。りゅうちゃんが蒼のこと愛してくれてるのよーく分かった。」
2人は言い争いよりも愛の力でこれから先も永く永遠の愛の力で前へ進むのであろう。2人は、サッカー部お別れ会の一週間後に婚姻届を出しに言った。
「蒼、一生かけてお前を幸せにするから、お前も一生かけて俺を幸せにしろよ。」
結構強引な言葉を言っているがもちろん、そのつもりだから。2人は、末永く幸せに暮らしていったのでした。