壱
登場人物
主人公
名前 岩永 蒼依
ニクネ あおい、あおいくん、あお(ちゃん)、いわなが
身長 155cm
性別 女の子
性格 男勝りなとこがあり、大雑把、明るい。
特技、趣味 サッカー
名前 楠田 琉晟
ニクネ りゅうせい、りゅうちゃん、くすだ、りゅうくん
身長 168cm
性別 男
性格 明るい、優しい。
特技趣味 サッカー
その他サッカー部の面々
新井先輩
柏木先輩
七川 夏基【なながわ、なつき、ななくん】
柳川 健光【たけみつ、やながわ、】
最上 幸嗣【もがみ、もっちゃん、ゆっきー】
琉晟中学時代の元カノ
阿佐田 澪歌
ニクネ あさだ、れいか、
身長 155cm
性格 男勝りな所あり。けど女の子らしくて可愛い女の子。蒼依とどことなく似ている。
楠田琉晟
→かつてのライバルで、幼なじみ
親の都合で小学生のころ転校し、高校で蒼依とまた一緒になる。良きパートナー。実は蒼依のことが好き?!
蒼依のことが好きで、蒼依と似ている澪歌と付き合っていたが、澪歌に本当に好きな人の面影を重ねてることがバレて別れてしまう。そんな中蒼依と再開する。
新井先輩、柏木先輩
→サッカー部の先輩。女好き
女の子ポイとこもある蒼依にも・・・?
澪歌のことも少なからずアタック?
七川 夏基
→サッカー部の同級生。琉晟の元カノの今カノ
柳川健光
→サッカー部の同級生。
最上幸嗣
→サッカー部の同級生。
阿佐田澪歌
→サッカー部マネージャー、
琉晟のかつて中学時代の元カノ。あまりにも自分と大好きだった女の子と重ねるので琉晟とは別れた。
サッカー小僧・・・いや、女のコ。小さい頃から男の子に混じってサッカーをしてきた女の子で、高校生になっても続けるつもりだ。でも、やるからには強豪校でやりたくて選んだのは元男子校で、今年から共学になった高校。女子の強豪校もあったが、通うには遠いいし、寮などはないため通えないので諦め、元男子校だが、サッカー部の強豪校であった、壱橋高校へ入学することに。だが、サッカー部は女子部員の募集なんて一切しておらず、マネージャーのみの募集だった。その事を入学試験前に行った学校見学で知った彼女は、願書出す時も、入学試験も男の子のフリをして受けた。すると見事に男の子として合格する。そんな彼女は迷いもなく、サッカー部にこれで入部出来ると喜んだ。
「・・・岩永蒼依です。よろしくお願いします。」
念願に入部した蒼依は自己紹介をする、他の新入部員と同じように自分を紹介した。名前も男の子にいてもおかしくない名前だし、性格も男っぽい所はあるし、声も女にしては低めなのでそうそうに気が付かれることはないだろうと、蒼依は思っていた。もちろん全く他からは気が付かれていなかった。たった一人を除いては。入部して初日の部活動が終了した後、その日から入寮のため、学校の寮に帰った蒼依は特に何も考えず、自分の部屋の場所に入っていった。同室の人がいることも考えずに。
「・・・蒼依って、お前・・・。あおだな?昔一緒にサッカーやってた。」
入ってすぐ同室の男の子に声をかけられた。蒼依は驚いて声のする方を見た。そこに同室の人がいることにも、同室の人がいるという事実も今知った。ただ驚くしかない。
「・・・え、、りゅ、りゅうちゃん?」
「・・・やっぱりな。その呼び方はあおだな。お前女だろ。何やってんだよ。」
「りゅうちゃん、内緒にして!サッカー部入りたくって男のフリしてんの。辞めるの嫌なの!」
まさか、初日にバレるとは思わなかった。かつての幼なじみのライバルである楠田琉晟が同じ部活件寮での同室者であるなんて思わなかった。
「・・・もちろん言わねぇけど。お前のその意思はいくらいいっても聞かねぇだろうしな。」
「・・・ありがとう、りゅうちゃん。」
ある意味、同室者が幼なじみで良かったかもしれない。他の人でバレたらどうなっているかは分からない。
「・・・あお、俺以外にバレるなよ。」
「もちろんバレるつもりは無い。りゅうちゃんだから分かったんでしょ。他の人に男の姿してバレたことないもん。」
「・・・あ、そう。あーでもそうかもな。なんつーか馬鹿力で男がやりにくいこともやってのけたりすんもんな。そういうとこだろ、男っぽく見えんの。」
実は蒼依は、昔から琉晟が好きで今まで誰とも付き合ったことの無いくらい。そんな彼女に彼が言った言葉はショックが少し大きい。
「・・・そうだけど・・・。なんでりゅうちゃん分かったの。私が蒼依だって。」
「名前。と動きだな。お前の動きが見なくてもわかり易かったから。つーかさ、りゅうちゃんはやめろよ?みんなの前では。バレんぞ。」
なんだかよく分からないがとにかく幼なじみであるがために性格などでバレたらしい。基本的にはバレることの無い蒼依。部活動では琉晟がなにかあれば庇ってくれるし何かとフォローしてくれる。だが、サッカーの技術は人並外れた身体能力を持っている蒼依はいくら周りに比べ小さくても、その差をもろともしない動きで簡単に出し抜いていく。
ある日先輩後輩関係無しのレギュラー争い試合が行われた。もちろん琉晟や蒼依など新しく入ったメンバーも加わり争う。2人はさすがに幼なじみとだけあり、互いの何となくいる場所が分かるようにパスを出し合いお互いをアシストし、得点に繋げたプレーを連発。まるで2人の中では周りに分からないような合図があるかのようなそのプレーは、相手チームの予測しない動きであり、簡単に次どう出るかの動きの予測が不可能なのだ。特に蒼依のプレーには細かすぎる程の微調整で微妙な差でズレているためにだいたいボールを奪い取る事が出来ない。そんなプレーのおかげか2人はレギュラーの選抜メンバーに選ばれた。1年の最初のうちに選ばれることは少なくほとんどは強豪校ならではの実力の差を見せつけるはずなのだが、レギュラー相手に翻弄した2人は稀に現れる新入部員の中の天才の逸材だった。
「・・・新レギュラーに、楠田と岩永を加えます。」
新レギュラーは2人だけ選ばれた。
「・・・おい、お前らスゲーな。お互いのいる場所がわかる見てぇに。」
「・・・分かりますよ、蒼依がどの辺にいるかは大体。パスに困ったら蒼依に出せば必ず取ってくれるし。」
「なんで分かるんだ?お前ら互いに場所は確認してねぇよな?」
レギュラーである先輩達や同級生の新入部員達は、天才的な2人のプレーが気になっていた。
「してないです。でも琉晟の場所も出してくるパスの位置も分かるんで。」
「なんでだよ、それが知りてぇんだ。」
「・・・・・・昔同じサッカーチームでプレーしてて名コンビと言われた幼なじみだから。」
先輩達は自分をぬかしてレギュラーの座を奪い取られてしまうかもしれない脅威の2人のプレーの秘密を探り入れていた。
「幼なじみ?」
「・・・僕達の話は今は関係なくないですか、先輩。そんな関係ない話してると本当にレギュラーの座を奪い取りますよ。」
真剣に話を聞いていた気にするメンバーの中には琉晟の親友で中学時代の仲間でもある七川夏基は2人の秘密を知りたくて深入りしようとしたようだが、蒼依の一言により遮られた。
「・・・おぉ、怖っ。もう奪い取られかけてんな。」
「・・・本当に蒼依くんは奪い取ってしまいますよ?先輩。」
「えー。澪歌ちゃんが相手してくれたら頑張るわ。」
レギュラーの座を奪い取られ掛けの先輩、特に新井先輩と柏木先輩は女好きで、サッカー部の唯一のマネージャー阿佐田澪歌へのアタックをしまくっているが、彼女は夏基の女である。もっと言えば琉晟の元カノである。
「先輩、人の彼女を口説かないでくれます?」
夏基が少し怒り半分で先輩へ告げる。自分の彼女へ手を出されたらたまったものでは無い。しかも女好きの先輩達だ。余計嫌である。そんな賑やかなサッカー部は楽しく、バレてもいない蒼依はされてはないが女だとバレれば口説かれるだろう。それはさておき、女好きの先輩達が口説いている間にも蒼依はひたすらに練習を重ねる。テクニックもシュートも出来る能力を上げていく。練習相手になってくれる、同級生の最上幸嗣ことゆっきーと柳川健光と共に勝手に練習し、お互いの技術を高めあって成長へ遂げてっている。こんな入ったばかりの新入部員にもフレンドリーな先輩達のおかげで楽しくできるが、だからこそ疑問に思うこともある。
「先輩、女と遊ぶ前に練習した方がいいと思いますよ。あいつ・・・蒼依はレギュラーの座を本気で奪い取りますよ。1度決めたら意志を曲げない奴なんで。それにあいつまだ見せてない大技秘めてますから。」
「・・・おぉ、その秘密の大技をださせたいですなぁ。そのためにはもっと俺らも強くならなきゃならないってこった。」
蒼依のやる気、琉晟の一言で先輩達へと火をつける。火のついた先輩達はもちろん強かった。それこそが強豪と言われる理由である。
「・・・今度の練習試合は岩永、楠田は先発でいく。」
「・・・はい。頑張ります。」
早くも練習試合で先発を出れることになった。出れること自体が珍しくベンチ入りすることはあっても試合に出るのは異例の速さだった。それほどコーチも監督も期待の新人という所だろうか。
さて、新たな新人を加えて望む試合。相手校は新生の最初っからの使用に舐められたものだと猛反発で抵抗するようになかなか攻め込ませて貰えず苦戦を強いられ、新人を入れたからだなんて仲間内でも始まり出したその時だ、キープしていたボールを琉晟がゴールに向かって思いっきり蹴りこんだ。だがその距離は遠く、蹴ったボールはゴールポストに当たり高く空へ舞い上がった。誰もがそのボールを目で追うなか1人ボールに背を向けるように飛び上がるとくるっと一回転しオーバーヘッドキック。相手のキーパーは見とれセーブし損ねるほど華麗にやってのけっていた。
「・・・ナイス蒼依、」
「なんで私にやらせんの」
「いいだろ結果入ったんだから。それと私なんて言うとバレんぞ。」
華麗に決めた、シュートは吸い込まれるようにゴールへはいった。真っ先に着地した蒼依の元へ駆けつけ称える琉晟その後に続いてびっくりして思考停止していたチームメイトもしばらくしてやってくる。
「・・・おい、蒼依。あんな凄い技隠してたのか?」
「はい。ゴールにパスして行けない時にしか出さない技ですよ。ちなみにこれは琉晟も出来ます。」
「・・・おいおい。マジかよ。」
「・・・はい。でも、蒼依の方が確率高いし。それに実はまだ大技ありますから蒼依。」
蒼依のやった大技により、貴重な先制点を奪い取った。これにて先輩達にされていたマークが外され、蒼依にマークが厳しくなる。また大技は打たせてもらえないと見た先輩達は自分たちが行こうとしたがやはりそうも行かずボールを取れば先輩達へとマークが厳しくなり、強いてあげるなら琉晟がフリーだ。先輩達は思いついた、さっきのような芸当が琉晟にもできると。だったらゴールポストにピンポイントで当てて跳ね返すことは出来ないが高くボールを上げることならできる。それで似たようなことを出来るのではと。できるだけ高く上げると、
「楠田!いけ!シュートだ!」
琉晟は先輩の言いたいことを理解すると高く空へ舞い上がった。相手も上がったが琉晟には届かず、落ちてしまう。琉晟は留まり、オーバーヘッドを勢いよくゴールを向けて放つ。だが、今度は予測したようにキーパーがセーブする体制に入った。それをさらに予測し、蒼依が駆け込む。ボールを見て勢いにそのままゴールに押し込みのヘディング。またまた予測不能行動で相手を圧倒。そういった行動が目立ち圧倒的な力で圧勝した。
「おいおい。お前らなんなの?強豪と言われた俺らより強くてさ?どーなるのさ?」
「先輩達の築いた強豪校というのを守るためですよ。」
期待出来るほどに怖い、新人の言葉はとても説得力があり安心して任せられると先輩は思う。
「それはどーも。でもな、なんでお前らそんなに強いんだ?」
「昔やってたクラブチームの時にめっちゃ俺たち鍛えてたから?」
「・・・だろうけど、そうでなくてさお前ら離れてた期間の方が長いんだろ。なんでお互いの位置を把握し合ってんだ試合中に合図もなしに。」
前にも聞いたはずだが、蒼依に遮られ答えにならなかった質問の答え。
「・・・昔とプレーが変わらないから。それにお互い先輩達はわからない合図おくってるんです。すごく細かい。」
「なーるほど。」
秘密の合図は誰にも理解出来えない合図だったようだ。企業秘密なので教えられないとの事だ。先輩達は、その秘密の合図を見破ってやろうと練習しつつ見るようになった。
「・・・先輩穴が空くほど見てもわからないと思いますよ。」
「・・・あぁ。全く分からねぇな。お前達には一生勝てる気がしない。」
「・・・先輩の女好きには僕も勝てる気しないです。 」
当然のことながら合図は誰にも分からないように秘密の合図なので見破られることは無い。過去に一緒にプレーしていた時も周りに合図がバレることがなかった。
「それはちょっと関係ない。女はいいもんだぞ。まだお子様だから蒼依には分からねぇか?」
「・・・先輩。僕にだって分かりますよ。それくらい。でも先輩と違って好きなら一途に愛します。僕は。」
「お。お前いるのか?好きなやつ?」
「・・・僕の話はいいよ。さぁ、練習しましょう先輩。僕と勝負です。」
先輩は人の恋事情が気になるらしい。やたらと首を突っ込んでくる。女であることが先輩達にバレない為にも女の話は乗って聞き、流れに頷き頃合を見計らって話を逸らす。勝負を仕掛けた蒼依。先輩の持っていたボールを軽やかに奪うとゴールを目指し走り始める。先輩に勝負を仕掛けたつもりだが、ゆっきーや健光、それに夏基に琉晟まで参加して全力でボールを取りに蒼依へ押し寄せる。テクニック的には蒼依の方が上回り先輩達はなかなか蒼依からは奪えず、琉晟と結局1VS1の奪い合いになっていた。ゆっきーや健光なんかはよく蒼依と練習するが奪えたことがない。
「・・・これじゃあ意味ないよ。琉晟は簡単にうばえちゃうもん。だから琉晟は僕とチーム。あとは先輩とゆっきー、健光、夏基ね。」
「おい、それは最強コンビじゃねーか。取れねえぞ。」
「だめですよ。僕達は2人で先輩達は+ゆっきー健光、夏基もいるんですから僕達の方がフリです。それに僕達からボールを奪えなきゃ強豪という名を作りあげた先輩達は今年で終わりですね。」
挑発的な言動を言ってしまう蒼依に琉晟はため息をひとつ。先輩を煽っているは分かるが、仮にも強豪を築きあげた先輩だ、そんな挑発していいのかと思うのだ。挑発に火をつけたのか先輩達の目が本気になるのがわかった。それに対し蒼依も楽しそうになって笑顔が見られた。その笑顔が蒼依が女だと知っている琉晟としてはとても可愛く愛おしく思えて集中出来ないけど、本気になっている彼らの邪魔になるこの感情は一旦捨ててこの勝負に集中するしか他ならない。いつもの様に合図を送りボールを預ける蒼依。自然の流れすぎて慌てる先輩達がこちらに集中する今度こそ取ろうとする先輩達は強かった。蒼依のテクニックが凄いだけで琉晟はそうでも無いだから先輩には取られてしまいそうなのだ。
「・・・琉晟の方から取った方が取りやすそうだな。」
先輩にも気が付かれる。これじゃあ琉晟がキープする意味が無い。蒼依に預けなくては。と翻弄させながら合図を送ろうとするが先輩達はそうさせてくれない。ならばと高く空へ舞いあげたボールを追って自分も高く上がり上から蒼依に預ける。
「くそ!その手があったか!」
「次は渡させねえ。とってやる!」
蒼依から奪い取る事がなかなか出来ず苦戦を強いられる先輩もだんだん追いついて来られてきたようで蒼依も実は苦しくなってきた。所詮女の子なのだ。男の体力に、しかも鍛えてる先輩達に勝てるほどの体力は蒼依は持っていない。そこらの女よりはあるだろうが疲れているようだ。負けず嫌いの蒼依だから何がなんでも取られるつもりはないみたいだが見ていられない。今にも倒れそうだ。観察していれば合図が来てボールを託され、先輩達がこっちへ集中した瞬間倒れそうになる蒼依ボールを先輩の頭上を通り越すようにあげ間をすり抜け蒼依を支え、ボールもキャッチする。
「・・・ばーか。もう限界なんじゃねぇか。お疲れ蒼。」
「・・・ありがとうりゅうちゃん・・・。」
その隙に先輩が琉晟からボールをは奪い取った。取られたボールはそのままに蒼依を抱えあげた琉晟。
「・・・先輩の勝ちです。蒼依は寮に連れて帰りますね。もう今日の練習は終わりの時間でしょう?」
「・・・あぁ。どうしたんだ蒼依は?」
「・・・いつになく全力だったんで疲れたんだと思います。寮で休ませます。」
先輩に挨拶を済ませ、寮に戻っていく。自分たちの共同の部屋へ入った。
倒れた後から息の荒い蒼依。その事に倒れた前に気がついていた琉晟は即座にあの勝負を止めにして寮に運んだのだ。少し安静にしているとスゥーっと落ち着いていく蒼依。
「・・・ったく。このバカ。朝から調子悪かっただろ?熱も微熱だけどあるって。俺も今の今まで忘れてたけどな、自分のことくらい自分で制御しやがれ。」
「・・・ごめん、ありがとうりゅうちゃん。」
「・・・ん。休めって言いたいけどシャワー・・・って、あまり良くないんだっけ。ちょっと待ってろ。」
蒼依は朝から風邪っぽく熱も微熱があり、本調子ではなかった。今になって熱も上がり、倒れた時には結構上がってしまっていたのだ。
しばらくすると琉晟が自分はシャワーでも浴びたのか、着替えて頭も濡れた状態で何やら持ってきていた。
「・・・蒼、これでせめて身体を拭け。そして着替えて寝ろ。」
「・・・ん。ありがとう。」
「おい、寝んな。なんなら俺が脱がせて拭いてやろうか?」
冗談半分で言ったその言葉にも「うん。」などと言い、自分でなにかする気にもなれて居ないらしい。テキパキと着替えと服を着替えるのを手伝うと、ベッドへ連れていき、休ませた。スっと寝息をたて夢の世界へ入っていく蒼依を見ると可愛さに額に軽くキスをしていた。
「・・・バカ。んな寝顔見せんじゃねぇ。でも俺以外に見せるのも許さねぇ。」
聞こえないだろうがボソッと呟き、キッチンにたつと、蒼依のためにお粥を作り始める。琉晟は以外にも料理は得意なのだ。起きた蒼依に心のこもった料理を食べさせてやる。それが琉晟が今できる精一杯の愛情表現。本当は女として好きな蒼依への。琉晟の看病の甲斐があって一晩で蒼依は良くなった。風邪が良くなってやはりいつも全力の蒼依。そんな蒼依について行くように成長していくサッカー部。さらにサッカー部の面々が少なからず蒼依に好意を抱いていることも。蒼依が時々見せる素の笑い顔は人を引き寄せる笑顔に惚れていることに気が付き始めた琉晟。けど、サッカー部面々は蒼依が男であると思っていることは調査済みで、いかにして蒼依が女であることを悟られないようにするかと琉晟は戦っていた。