最高の尻
ねぇ、知ってるかしら?
私のお尻は老若男女を魅了する、最高のお尻なのよ。
ピンクや赤い色とりどりの服に、とっても良く合っているの。
たまに興味のない人はいるけれど、そんな事はどうだって良いの。
私はどこにいっても、どんな時でも人気者。
そんな私の人生は、いつだって波乱万丈だった。
あれは……いつもの様にまあるく愛らしいお尻を見せつける様に、道を通っていた時だった。
突然上から何かが降ってきて、私は身動きを取れなくなったの。
本当に怖かったわ。
降ってきたのは網の様な物で、時間が経つ程……空間は狭くなっていった。
私以外の方も捕まったらしくて、一緒に怯えたわ。
一度他の人の重みで潰されそうになったけど、自慢のお尻を守るためになんとか踏ん張った。
その後は文字通りお先真っ暗……暗闇が続く小さな部屋に監禁された。
怖くて怖くて、一緒に捕まった方々と怯えていた。
暴れまわる方、私のように怯える方、死んでしまう方。
虚ろな目をした体が近くに寄ってきた時は、自慢のお尻を引っ込めてしまった。
「ここから……ここから出してっ!!」
必死に叫び始めて、何時間経ったのかな。
私は暗闇の中で、永遠と感じる程長い時間を揺らされ続けていた。
周りの方々も弱っていく中、たまたま一緒に閉じ込められていた仲間と再会して、お互いに励ましあった。
「きっと、大丈夫だから。」
「うん、そうだね。」
絶望している時でも、仲間がいると少しだけ心にゆとりが出来る……そう思っていた時だった。
バンッ
頭上で大きな音が鳴り、それと共に目が眩む程眩しい光が差し込んできた。
もしかしたら、救出に来てくれたのかもしれない!……なんて考えは私の身よりも甘かった。
いきなり閉じ込められていたところが上に上がっていき、仲間と離れ離れになるわ壁や他の方にぶつかるわでパニック状態になる。
より強い光の当たる場所で一度揺れは安定したが、閉じ込められていた部屋の外から大きな生物が確認できた。
そいつらは私達を丁寧とは言い難い手つきで部屋から出し、動く床の上にたたきつけた。
その上で自慢の服が傷つく位に、まるで醜い魚の様にバタバタと暴れても、大きな生物は気にも留めない。
怖くて怖くて、とても憎い。
それからまた、小さな部屋に連れて行かれると、仲間が勢ぞろいしていた。
「みんな!」
「おおっ、君もいたのか!」
「また会えて嬉しいわ!」
そう言う仲間達は、笑顔を浮かべているけれど固く冷たい何かが敷き詰められた部屋に寝かせられている。
私も同じく寝かされて、これからどうなるかは本当に予測できない。
「……あれはなんだ?」
仲間の一人が言うから、みんなで視線の先を見てみると、大きな生物が平らな物を持って近づいてきている。
その足音はとても大きくて、震えるしかなかった。
平らな物は私達の部屋を塞ぎ、再び暗闇にしてしまう。
そしてまた、揺られ続けていた。
次に光に当たれたのは、どこか大きな建物の中。
大きな生物が無数と歩き回り、抵抗する力も失った仲間の一部を殺した。
容赦なく殺していく様子は、酷い吐き気を覚えた。
運良く生き残った私も、少し経つと銀色の器具に挟まれて、狭い何かに閉じ込められた。
同じ所に閉じ込められた仲間は、段々息が弱くなり……もはや虫の息ならぬオキアミ息だ。
またまた揺られて、最終的に着いたのは、比較的小さな……それでも大きな生物二匹と、かなり大きな生物一匹がいる場所。
一番小さな生物は、仕切りに私の敏感な体をツンツンと触ってくる。
その指は次第にお尻へと向かっていくので、私は必死に抵抗した。
「この子をどうしたい?」
二番目に大きな生物が、一番小さな生物に聞いた。
「んーと……丸裸にしたい!!」
ちょっと……何を言っているのよ!!
「ねぇ~、そっちはどうしたい?」
二番目に大きな生物が、一番大きな生物に聞いた。
「丸ごとで!」
ま、丸ごと!?
「了解しましたぁっ!!」
二番目に大きな生物が、隣で息絶えてしまった仲間の服を無理やり脱がし、こことは別の黒い部屋に投げ入れた。
パチパチと音がなり、遺体の焼ける臭いが漂ってくる。
「よーし、次は君だぞぉぉっ!!」
やけにハイテンションな二番目に大きな生物が、今度は私をつまんで水をおもいっきりかけてきた。
「体を綺麗にしないとね~♪」
体を綺麗にして、何をするって言うの!?
お尻が綺麗になるのは嬉しいけれど、その後が嫌な予感しかしないわ!
「うふふふふ。」
いや……。
「やめてぇぇぇぇぇぇっ!!!!!」
ジュワァッ
「息子くんが食べたいって言った海老のピラフと、夫くんが食べたいって言った海老の素揚げよぉぉぉっ!!」
「おおっ、いつも思うが、いずみの料理の腕は一流だな!」
「ママすごーい!!」
「も~、食べてから言ってよね!!」
海老のプリっプリのお尻は、大きな生物を魅了する魅惑の尻。
ー終ー