其ノ伍 合宿(その1)
其ノ五
我々は争い傷つけ合う。互いを攻撃し責める。攻撃なんて言っているが所詮この行動も保身に過ぎない。結局の所攻撃が最大の防御であり最大の汚点なのだ。攻撃するから攻撃される。保身によりその身を滅ぼすなど愚なることこの上ない。しかしこの事に気付くことが出来ないものが多いため結局は傷つけ合い嬲り合うしかなくなるのだ。安を知らず恐れに捕われ生きるが故にそうなるのだ。生半可な恐れしか知らぬが故に攻撃するしか能がない。その末自分の首が無い。
僕はこの前ドッヂボールで、そう悟った。
「悪かったって!血が騒いじまったんだよ…」
「……死ぬかと思ったよ…殺されるかと思ったよ…殺られる前に殺ってやろうとも思ったよ!!!」
「ひっ…ご、ごめんて!黒鬼の性なんだよ…」
「むーっ!まぁいいけど…生きてるから…後で覚えとけよ…」
「ん"!?今とてつもない殺気を感じた気がするんだが…?」
「ん?気の所為だよっ!」
「ん…?お、そ、そうか…そうか…」
「今とてつもない殺気を感じた気がするのですがどうしたしたのですか!?」
あ、零奈にバレた
「ん?んーん?なんでもないよ?気の所為じゃない?」
「そう…ですか…な、ならいいんですが…」
ちなみに零奈は敬語系の子。育ちがいいみたい。そーれーにー。成績もいい。抜群の秀才、なんという努力…
本人にそれを言うと
「そんなことはありません。私にはこうならなくてはならない使命があるのですから!ちょっとしたことでも友達の役に立てるのって嬉しいんですよ?」
なんてカッコイイこと言っていた。やっぱりイケメンだなぁ…惚れそう。とか言ってw
さて、そんなイケメン美少女な零奈さんにも苦手なものがあるのです。意外と普通の女の子なものが苦手です。そう、それはお化け。ゾンビとかフランケンとかマミーとかろくろ首とかのっぺらぼうとか。意外なことにそのへんが怖いらしい。
実は僕が化け狐だってことがバレたら怖がられないかな…
まぁ力もないし大丈夫か…はー!!力が目覚めないってホーント便利!!
一生雑魚のままでいいや。前世は怖かったものも今では大好きになれたから!あれ?前世で何を怖がってたんだっけ…ま、いっか!怖いものなんて思い出す必要ないよねっ!
さてさてさて。そんなお化けが関係する行事と言えば?そう!林間合宿です!!
いやー!実に15年振り!!懐かしさで破裂しそう。
そうそう。言い忘れてたけど僕が今いるこの世界。僕が元々居た世界と時代がおんなじなんだ!
ちなみに今は2015年。前居た世界で僕が小6だった時と一緒。どうやら軽い時間旅行もしてるみたい。ヒューッ!凄いっ!
てなわけで話を合宿に戻そうか。
1日目。まずは登山。
楽しみそうな子もいれば不安そうな子もいる。僕は楽しみな部類だ。ワクワク。
愛鬼はもちろん乗り気。てか凄い張り切ってる。
「うっし!準備万端!あ、湯沸かしとかは俺持つぜ!なんせいっちゃん体力あるからなっ!」
可愛いくらいの張り切りっぷりだ。
「だってよぉ!ここまで生きてきて登山なんてしたことねぇんだもんよー!テンションの一つや二つ上がんだろーっ!!」
上げるテンションは1つで十分だが愛鬼が張り切ってくれるのは百人力だ。
正直助かる。
さて、先生からの注意事項だ。
「はい、じゃあ今から登っていくわけなんですけど、来る前に言ったこと!覚えてますか?…はい、そう。慌てないってこと。見てもらったらわかる通り霧も少しでてます。でも慌てない。前の人に着いていけば大丈夫だから。次、藪漕ぎの注意について、ね。しっかり袖下ろしてください。被れることもありますから。わかりましたか?」
まぁやっぱり普通。まぁそりゃそうか。時折忘れるけどここってば異世界なんだもんなぁ…いや、今の僕からしたらこれが僕の世界か。異世界の筈なのに異世界でない…。朱に交われば赤くなるとはこのことかな?
まぁ何やかんやで登山が始まったのであった。