其ノ九 合流
其ノ九
あれ?ここどこだ?さっきまでルートだと思ったんだけど…
「ん?なんだ?ここどこだよ?」
「さぁ…?」
「おーーい!希華くん!愛鬼くん!美希ちゃん!」
「あ、零奈ちゃん!どこ行ってたの?」
「みんな…良かった…」
そう言うと零菜はこちらに倒れてきた
「うわっ、ど、どうしたの?」
「いえ…なんでも…」
すると後ろから1つ目小僧が走ってきた。まぁそうだろう。テレビとか遊園地のお化け屋敷で散々見てきたしもう驚かない。
「お、いたいた。いやー無事で何より」
「無事?つーことは俺達命の危機に晒されていたと?」
「おうよ。全身黒づくめで目隠し?してる男がお前達を殺そうとしてたんだ」
「なっ…!?」
「そんな…」
「マジかっ…」
「おい、そいつについて詳しく教えてくれ」
「え?ええっと…カラスとか使役してたな。ゾンビとかスケルトンとかも。あと一瞬男か女かわかんなかったな」
「…死神」
「え?なんて?」
「あん?なんでもねぇよ。ちょっと気になっただけだ」
ふむ?今ボソッと死神と呟いた気がしたけど…まぁいいか。
しかしそんなことになっていたとは…
「で、その男はどうなったの?」
「おうよ、そこの龍のお嬢ちゃんが撃退しちまったぜ!」
「零奈が?凄いや!!ありがとう!!」
「おおっ…ありがとな!」
「零奈ちゃん!ありがとねっ!」
「いえいえ…出来ることをしただけです…それに…見逃してもらったって言った方が正しいですし…」
「そっか…そんなに強かったのか…ん?どうしたの?」
「え?あ、いえいえ!なんでもないですよ!」
「ん?そう?そっか…」
どうしたんだろう。こっちを見て…
「もしかしてその男が僕について何か言ってたの?」
「えっ…あ、えっと…」
ちょいちょいとこちらに手招きした。
「ん?どしたの?」
「実はですね…その男の人がこう言ったんです。希華くんが…騎狐だって…」
「………」
は?ちょ、ちょっと待て。
「え…?その男が…そう言ったの…?」
「はい…闇を抱えているから…とても危険だって…」
「そっか…そっかそっか…」
僕が闇を抱えている…?
「おい、何してんだよ。さっさと戻ろうぜ。先生達心配してんだろ」
「え?あ、ああそうだね。そうしよう」
なんでその男は僕のことを知ってるんだ…そして僕に闇?いや、ある筈がない。僕は至って普通の少年だ。
しばらく歩いて先生達の元に着いた。
「あっ!戻ってきましたよ!!」
「あ、どもっす!大丈夫でしたよ!」
大丈夫さの欠片もなかったけどね。
まぁ取り敢えず今日は終わり。お風呂に入ってお部屋に戻るだけだ。
「まぁとりあえず、何があったか話してくれるか?」
「えっとですね…」
それから零奈は話し始めた。僕たちの身に何があったのかを。そしてそれに対してどう対処したのかを。
「なるほどな……遂に動いたか…まずいな…」
「どうしたの?愛鬼、さっきからずっと悩んでるけど…」
すると愛鬼はこちらに近付き耳打ちしてきた。
「なぁ、希華、話してしまっても…いいか?お前の転生のこと」
「愛鬼が話してもいいと思ったんならいいよ。生殺与奪の権は愛鬼にあるんだし」
「そこまでじゃないけど…まぁよし分かった」
そこで愛鬼は零奈に向き直った。
「実はな?こいつ、転生してきてんだよ。異世界から」
「そうなんだよね。別の世界からこっちに来たんだよ」
それから僕が何故ここに来たのか、愛鬼が何者なのか、全てを話した。
「………」
まぁそりゃいきなりこんなこと言われても戸惑うさ。
「そうだったんですか…じゃあ希華くんが騎狐だって言うのも…」
「うん、本当だよ。まぁ見ての通り全く力は使えないんだけどね」
「なるほど…分かりました!」
「え?」
「へ?」
僕と愛鬼の声が重なった。分かりました…?え、納得したと?
「はい!もちろん!2人が言うんですから!そうなんでしょう!」
あっさり信じて貰えた。大丈夫かな…悪い人に騙されたり…は、しないか。そこの線引きは出来る子だ。
「まぁでもあれだよ。僕の狐が起きることはないと思うし、僕が化け狐になることはないよ。まぁもう1回人生を歩ませてもらえるんだから…有難いもんだよ」
「はははっ!感謝しろよー?…今世は責めて…幸せになってくれ…」
今度は小さなその呟きを聞き逃さなかった。
だがしかし、その願いを聞き届けることは出来なかった。