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私は王と呼ばれ、邪龍と呼ばれた。


龍種と人種は数百年に渡り戦争していた。

龍種が住処にしていた森に

人種が領土拡大のために戦争を仕掛けてきたのが事の発端となった。


龍種は個体数が少なく、数百程度しかいないが

数百~数千の軍勢を一瞬で崩壊させる力がある。

人種の個体数が多く、数十万~数百万いるが

戦える者は多くて数万程度だがその中には

魔法を使う者もいるため龍種の力を防いでしまう。


そのため龍種と人種の戦争は決着がつかないまま

数百年という月日が経ってしまった。

だがその戦争に終止符を打つ龍が現れた。


その龍はある戦いの時に魔法を使う人種を喰らった事で

魔法が使えるようになった。

他の龍も魔法を使う人種を食らったが

魔法を使えるようになったのは、その龍のみであった。


その龍は同胞からは王と呼ばれ、人種からは邪龍と呼ばれるようになった。

彼は同胞を率いて数多の国や村を滅ぼした。

そして龍種は最後の戦いに打って出た。

結果としては、龍種が勝利し、人種は滅んだ。

だが、龍種も最後の戦いで散っていった。


この世界に残ったのは

龍種からは王と呼ばれ、人種からは邪龍と呼ばれた

龍しか残らなかった。


「終わったか・・・。」

彼は戦いが終わった後、戦場を一望できる小高い丘に移動していた。


彼は龍の姿から人の姿へと形を変えた。

彼は魔法が使えるようになったことで人に化ける魔法も習得していたのだ。

「人の姿の方が場所をとらなくていいな。」

彼はそう言いながら岩に背中を預けながら座り、

魔法で空間から一本の葉巻を取り出し一服をはじめた。

「この葉巻も懐にある分で終わりだな。」

取り出した葉巻はヴォルターが王になる前からの友人が製造していた

葉巻だった。

ヴォルターの懐には残り9本しかない。

その友人も戦場で散っていった。

葉巻は友人の最後の遺品となったのだ。

「結局は、私だけしか残らなかったか。」

彼は沈む夕日見ながらそう呟いていた。


そのとき、空から一筋の光とともに1人の女性が

彼の目の前に現れた。

「初めまして私はこの世界の創造主、いわゆる神と呼ばれる存在です。」

「名は、メアリと申します。お見知りおきを。」

私の目の前に降り立った女性はそう挨拶をし、軽くお辞儀をした。

流石だ、神と名乗るだけはある。

神と名乗るメアリからは、相当な力があると彼は感じていた。

「どうも、私は龍種の王ヴォルターと申します。」

ヴォルターは葉巻を咥えながら、軽く挨拶をした。


ヴォルターは思った。

神が私に何の用があるのかと、だがちょうどいい退屈していたところだ。

一杯付き合ってもらおう。

「さっそくだけどメアリ、ちょっと一杯付き合ってくれよ。」

「えぇ、あ、はい。」

唐突にそんなことを言われるとは思っていなかったメアリは

困惑しながらも咄嗟に返事をしてしまった。

「ちょっとまってな。テーブルとイス準備するから。」

ヴォルターは、魔法で空間からテーブルとイスを取り出し、配置した。

「どうぞ。」

ヴォルターに言われメアリはイスに座った。

「で、何飲む。言ってくれれば大抵の物はあるぞ。」

ヴォルターは空間から灰皿を取り出し咥えていた葉巻を灰皿に置いた。

「では・・・、リンゴ酒を。」

メアリからの注文を受け空間から

リンゴ酒の瓶とグラスを取り出し

グラスにリンゴ酒を注いでメアリの前にグラスを置いた。

「じゃあ私は、ウイスキーにするかな。」

ヴォルターは空間からウイスキーの瓶とグラスを取り出し

ウイスキーを注ぎ自分の前に置いた。


「では、乾杯。」

ヴォルターとメアリはグラスを持ち上げグラスを軽く合わせた

「カチャン。」

グラスを合わせた音は戦場だった場所、

そしてそこにある、人、龍の双方の亡骸に向かって

静かに響いていったように感じた。

ヴォルターとメアリは、グラスに口をつけた。

「そうだ。なんか、つまむものがないと味気ないな。」

「たしかチーズと燻製があったな。」

ヴォルターは空間から皿にのせたチーズと魚の燻製を取り出し

テーブルに置いた。

「まあ、どうぞ、どうぞ。」

「えぇ。いただきますね。」

メアリはヴォルターに勧められるままチーズと燻製を数切れほど

食べながらリンゴ酒を飲んだ。

それから2人の間には会話がなく数分の沈黙が流れた。


先に言葉を発しようとしたのは、メアリだった。

「あの・・・あなたに会いに。」

「ちょっとまって。」

メアリの言葉をヴォルターが途中で遮った。

「暗くなってきたから明かりをつけるよ。」

ヴォルターはそういいながら左手を上げた。

左手を上げた瞬間、ヴォルターとメアリを囲むように光が照らされた。

「遮って悪かったね。続きをどうぞ。メアリ。」

「えぇ、ありがとうございます。」

「あなたに会いに来たのには理由があるんです。」

「だろうね。私がこの世界で最後の1人になって退屈そうにしてたから

一杯付き合いに来たってほど暇な方ではないだろうな。」

「そうですね。ヴォルターさん。」

メアリは意を決した顔でこう言った。

「単刀直入に言いますね。」


「私は、あなたを殺しに来ました。」






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