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露程も知らない幻想組曲  作者: 熱帯長草草原地帯
第一章 不穏な足音
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焚き火を片付け

 焚き火を片付け気持ちを新たにする。足に力を入れて歩き出す。

 迷子になったとノアタやヒボラに知られたらどれだけからかわれるか……


「さて、行くか。」


 戻ってもどうせ見覚えの無い森だ。そのまましばらく進んでみる事にする。足元は落ち葉が厚く積もり歩きやすくなった。何か手がかりは無いかと周囲に目を配る。

 やはりそこここに花が咲き時おり風に運ばれて花びらが舞う。どれも春に咲く種類の草木だったはずだが……

 森の中には陽当たりの関係か時おり季節はずれの様子を見せる場所があったりする。それでもこんなに広範囲なことは……

 暖かな陽射しに自然と肩の力が抜け足取りが軽くなる。

 徐々に木立が疎らになりちらっと何かが動いたのを目が自然と追う。

 遠くに人影が見えた。


「子供か?」


 少し近づいて様子を見る。

 山菜採りにでも来ているのだろうか?10歳くらいの少年と少女が二人でうろうろと歩き、何やら摘み取ったものを籠へ入れている。

 しばらく眺めているが大人は近くに居ないようだ。そのうちに疲れたのか平らな岩に仲良く腰掛け話しをしている。

 子供だけで来られるほど、この辺りは安全でなおかつ近くに町か村でも有るのだろう。

 少年は俺より少し濃い茶色い髪。だが少女は黒髪、俺の住むフォス国では見かけない色だ。

 やはり国外まで来てしまったのだろう。


「ガサリ」


 わざと音をたて二人から少し離れた場所へ姿を現す。

 敵意が無いことを示す様に手のひらを見せゆっくりと二人の方へ向かう。声をかけずに森を彷徨うくらいなら多少の危険には目を瞑ろう。おおよその位置でも分かれば良いのだ。

 俺が視界に入ると、二人はあからさまに警戒の目を向けてきた。

 俺の剣と顔を交互に見ている。

 同い年くらいに見えるが、先に少年が立ちあがり少女を隠すようにその前に立つ。


「おい、少年ここはどこだ?プロス国か

 ロブド国か?」


 出来るだけ優しい声を出そうとしたが、俺の問いかけに少年は驚いた表情をした。


「ここは、槐国(さいかちこく)です。」


 その答えに俺は呆然としてしまった。全く聞いたことの無い名前だ。少年の発音にもどことなく違和感がある。

 何も言えなくなってしまった俺の前で少年と少女が会話している。

 その言葉は俺の使う言語と違うようだ。内容は分からない。


「おじさんはどこから来たの?」


 黙ってしまった俺の困惑を感じてか少年も困った顔で話しかけてくる。


「フォス国だ、森を抜けたらここに辿り着いた。帰り道が分からなく成ってしまってな。」


 我ながらなんとも情けない返答だなと思ったが素直に言う。サイカチ国とは聞いたことの無い名前だが……新しい国なのか?

俺の返事に今度は少女も含め驚き、二人で会話を始める。

 フォス国と言う言葉が会話の中から聞こえて来るので俺の国を知っているようだ。

 二人の会話が終わるのをしばし待つ。

少し頬を上気させ、少年が話し出す。



 少年の話をまとめると……

 フォス国と言う名前は知っているが場所は不明。

 少年の父親がフォス国の事を研究?しているので詳しくは会って話し合ってほしいと。

 戻りたいのかも知れないが村まで案内するので是非来てもらいたいと。


 色々分からない事は多かったが、少年の父親に興味が湧いた。

 研究ってなんだと思わないでも無かったが、少しでも手がかりは欲しい。

 戻りたいと言うのは有るがそのためにこそ村へ行きたい。


「宜しく頼む」


 そういうとじっと俺を見つめていた二人がしっかりとうなずく。

 二人に前を歩いてもらい、ついていく。


 途中少年を介してお互いの事を自己紹介する。

 少年は思ったより大きかった。

 15歳。

 名前はホウジ。

 少女も同い年で名前はサワ。

 二人は薬草を集めていたらしい。


 そして俺も自分の事を話す。

 25歳、名前はヒダッカ。

 職業狩人。


 ホウジは俺の剣に興味が有るようだ。

 サイカチ国にも狩人はいるが、剣は使わず弓や鉾それに罠を使うらしい。


 サワはフォス国はどんなところか、皆俺の様に大きいのか、家族はいるのか等と聞いてくる。


 フォス国について、自国の事とは言え俺は町と森しかしらない。


 北東に王都があり、海に面しているくらいしか知識がない。

 田舎の町を嫌い外へ出ていくものもいるが俺は特に出ていきたいと思ったことはなかった。


 サワから見れば俺は大きいのだろう。

 背丈は大体180㎝くらいの俺が一般的だ。

 ノアタは俺より少し背が高く、ヒボラは少し小さい。


 家族は父と年の離れた弟がいる。

 母は弟を生んだあと、すぐに流行り病にかかって死んでしまった。

 サワは聞いてはまずい事だったかと思ったようで、神妙にうなずいた。


 言葉少なくなりなだらかな丘を登り続ける。

 上方に白い花をつけた木々が見えてくる。

 ホウジに聞くと果樹園だそうだ。

 今は人工受粉をさせる時期だそうで、人影も見える。


 俺たちは先ほどまでの山道を抜け石で整備された広い道を進む。

 果樹園を右手に平らな道を進むと村が現れた。


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