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死出山怪奇少年探偵団一  作者: 無名人
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憎しみの先に 再び死出山へ 

第七章 憎しみの先に

「君は…、一体どうしたのかね?」

亮也は早足で部屋の中に入ると、茂の方を見た。

「あなたが僕のお父さんを!」

茂は戸惑いながらも亮也の方を見た。

「ちょっと待ってくれ、一体何なんだ?」

亮也は両手を握りしめた。

「僕のお父さんは警察官なんです。それで、死出山に調査に行く時にあなたに相談しました。そして、その通りに動いてお父さんは怪我したんですよ?!一体どうしてくれるんですか?!」

「亮也、少しは落ち着けよ!」

卓はその体を押さえたが、すぐ振りほどかれてしまった。

「落ち着けられるか!お父さんは数週間くらい入院した、その間僕達は何も動けなかったんだ。」

卓が亮也の左手首に目を向けると、普段は無い良い腕時計が巻いてあった。

「亮也、それは一体?」

「ああ、これ?お父さんの腕時計だ。確か、怪我した時も付けてあったっけ…」

「ちょっと貸してくれないか?」

「…いいけど、どうしてだ?」

「この時計の中の記憶、ひょっとしたらここに答えがあるかもしれないなって」

卓に時計を手に持つと、そのまま目を閉じた。そして、いつかの出来事が脳裏に浮かぶ。


…亮也の父親は、ある事件の調査に死出山を訪れていた。現場は大分奥地にあって入り組んだ道を進まなければならなかった。そして、崖に着いた時。足元の絡まった枝に引っ掛かって、そのまま落ちてしまった。


卓は目を開けると、亮也にさっき見た事を話した。

「やっぱり、仕方がなかったんだよ。」

「お前も渡辺さんの援護をするのか?!」

亮也は詰め寄ったが、卓は表情一つ変えずに淡々と話した。

「あの調査したという事件がここで起きたなら、仕方がないんだよ。だから怪我したという理由と責任を先生に押し付けるのはどうかと思う。」

亮也は次の言葉を見失ったようだった。

「…そっか、卓の能力は本物だ。僕も真実に目を背け過ぎたな…。」

そして、茂の方を向いて謝った。

「なんか、すみません。勝手にあなたに理由をつけたりなんかして…。」 

茂は亮也の頭をそっと触れた。

「分かったなら、それで良い。」

そして三人はまた茂の話を聞いていた。


「いや〜、茂さんの話面白かったよね?」

帰りのバスで三人はそんな事を話していた。

「いやぁ〜、夢のような時間だったよ。だって…、」

卓はポケットや体を触ったが、カバンが見当たらない。

「嘘…、せっかくの先生のサイン本や話をメモしたノートがあるのに…、そのカバンを忘れただなんて…。」

「卓、取りに行くの?」

卓はこれ以上無い程に落ち込んでた。

「うん、そうしないと明日生きれないかも…、」

「そこまでか?!」

そして、バスは卓達が暮らす住宅街に着いた。



第八章 再び死出山へ

翌日、卓達はまた死出山に行った。

その車内で三人は深刻そうに話をしていた。

「あの桜の木…、あそこに答えがあるのかな…。」

「卓君?」

「死の記憶はたくさんありそうだけど…、その中に夏目ちゃんのもあるのかな。」

景色はだんだん山道になっていく。

「あの能力の事は卓にしか分からないだろう?」

「そっか…、そうだね。」

そして、死出山に着いた卓達は歩いて小学校に向かった。

「小学校ってこんなに遠かったっけ?」

確かにここまでは二十分掛かるが、それ以上にみんなの足取りが重かった。

「俺、ちゃんとやれるのかな…、」

死出山の上空は分厚い雲で覆われていた。


そして、小学校の校庭に着いた。桜の巨木は今も深緑の葉を覆い茂らせている。

「この桜の記憶を見なければ、でも…。」

卓の手は震えていた。

「卓君!今こそその力を活かす時だよ!」

卓は桜の木に眠る死の記憶を紐解く事を恐れていた。実際、あの記憶の映像はかなり鮮明で頭に強く残る。

「俺は、どうすれば……、」

「卓、」

その時、背後に瞬が現れた。

「言っただろう、どんなに直視出来ないような真実でもいつかは受け入れなければならないって。」

「お父さん…。」

「この桜の記憶がどんなものかは分からない。だが、その前にこの桜の本当の姿を見せなければならない。」

瞬が桜の木に触れると、風が舞い起こったと同時に、みどりの葉が消え、枯れ木になってしまった。

「そんな…一体どういう事?」

「本当は、死出山に桜は咲かないんだ。だが霊が見せた幻で今も生きているように見える。」

そして、卓の方を向いた。

「卓、お前はどうするんだ?この桜の記憶が直視出来ないような痛ましい事でも、それを受け入れられるのか?」

「お父さん、俺は……」

卓が目を閉じて覚悟を決めた途端、周囲に風が吹き込んでいった。

そしてゆっくりと目を開いた。

「俺は、どんなに痛ましい過去だって、受け止めてみせるよ。」


卓は枯れ木となった桜に手を触れ、目を閉じた。周囲の音が消え、意識が闇の底へと沈んでいく。

その後見た記憶は、どれも鮮明なものだった。言い伝えを信じて死体を桜の木に埋める人々、幼い子供も、先生も次々とそこを訪れた。

そしてその中の一人に夏目と壮矢の姿もあった。涙を流しながら夏目を埋める壮矢。そしてその背後には血濡れたカッターナイフを握り締めた少女の姿があった。

季節が何度も巡り、死出山に人が消える中で何度もそこを訪れたものが居た。壮矢は大人になっても夏目の事を忘れなかったのだ。そして、そこを去った所で映像は途切れた。


卓は目を開けた。

「夏目ちゃんが埋められたのは本当だったよ。」

「そうだったんだ…。」

「で、誰に埋められたんだ?」

「壮矢、でも…夏目ちゃんは別の誰かに殺されてた。」

「えっ?!」

優月と亮也は驚いた。

「それは…、一体誰なの?」

「えっと…女の人?それも壮矢と同い年くらいの…」

その時、背後から足音がして、卓達は一斉に振り向いた。

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