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死出山怪奇少年探偵団一  作者: 無名人
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死の記憶 小学校の七不思議

第五章 死の記憶

青波台の住宅街の一角、風見鶏がある家に卓達が住んでいる。そこの二階の一室が瞬の書斎になっていて、帰ってから卓はそこで調べ物をしていた。

死出山の桜について調べる為だった。そこで卓はあらゆる物から桜についての情報をかき集めていたのだ。

ただ、卓の能力が突然発動し、瞬の書斎の本の中の記憶の中で血塗れの人が見えてしまう事もあった。それが現実と錯覚するくらいの鮮明なものなのだ。

どうやら卓の能力は、実際にその出来事の時にあったものだけでなく、それを記した本や映した写真なんかも見る対象になるらしい。

卓はそれでかなり疲れてしまった。そして高い本棚を見上げた。そこには卓が大好きな『闇深太郎』の本が全巻あった。卓は椅子から乗り上げてその中の一冊を取り出そうとしたが、うっかりそれから落ちて、雪崩のように本が頭上に降ってきた。

「痛っ…!」

そして、その中の一冊を取って読もうとして手に触れた時だった。突然赤黒い気が現れ、卓の首や手首に巻き付いた。

「えっ…?」

前感じたメモの記憶とはまた違う恐怖だった。その中でまた感じたのは『狂気』、卓はそれから逃れようと手を離そうとしたが、中々離れてくれない。

「卓、一体どうしたんだ?」

瞬がやって来たお陰で、卓はなんとか手を離す事が出来た。 

「お父さん…」

卓は自分の手の平を見つめた。

「お父さん…、俺、自分の力が怖いんだ………。」

卓の体は小さく震えていた。

「その場所やそこにあったものだけじゃない、そこを映した写真や本の記憶を読んでしまうんだ。」

「卓…辛いんだろうな、実は父さんもそうだった。」

瞬は卓の肩をそっと持った。

「えっ…お父さんも?」 

「父さんだって、最初霊が見えるのが自分だけだと知った時は怖かった。本当は見なくていいものが見えてしまうんだからな…。でも、それがこの町の本当の姿だったんだ。

卓、力というのは『目』みたいなものなんだ。それで直視出来ないような真実を見てしまうかもしれない。

すぐ慣れろとは言わない。ただ、いつかは受け入れなければならない事を覚えといてな…。」

そして、散乱している本を見た。

「これは、一体?」 

卓の足はすくんだ。

「お父さん、闇さんの本に触れた時『狂気』を感じたんだ。あれは一体なんだったんだろ…、」

瞬は本を片付けながらこう答えた。

「卓は『風見の少年』の話を知ってるか?」

「それって、狂気に塗れた作家を主人公の少年が元に戻したって話でしょ?何回も読んだよ!」

「あれ、実は父さんなんだよ。」

「えっ、ええっ?!」

卓は驚いた。言われて見れば名字も同じで、持ってる能力も同じだが、卓は今更ながら自分の父親にも子供だった頃がある事に気付いたのだ。

「狂人の作家はあの本の作者なんだ。卓はきっと狂気に塗れていた頃のあの人の本に触れると、狂気を呼び出してしまうんだな…。」

「そんな事が…。」

そんな中、卓が拾ったのは『夜桜』という本だった。

それに触れても狂気は感じない。

「この本って、小学校の桜の話だよね?」

「ああ、そうだよ。」

幼少期の瞬が言ってた通り、この桜にはある言い伝えがある。それは桜の木の下に死体を埋めると、もう一度その人に会えるといったものだ。

それを元にしたものが『夜桜』という小説なのだ。

「う〜ん、一体どういう事なんだろう…。」

卓はそれを考えながら、本棚に本をしまって自分の部屋に戻った。


翌日、その日は普通に学校があった。卓、優月、亮也は放課後の教室に残ってずっと話し合いをしていた。

亮也の机には宿題のドリルが広げられ、ページは半分くらい終わっている。一方、卓はまだ範囲の十ページしか解いていない。

亮也はドリルをしまってこういった。

「なるほど…。たしかにその言い伝えがあるとしたら……、あのメモの意味が分かったかもしれない。」

「どういう事?」

「つまりだな、あのなつめという子は自分がもし死んだら桜の木の下に埋めてくれ、って言ったんだよ。」

「なるほど…。」

優月は机に腰掛けて考えた。

「本当に埋めたか分かんないけど、もし埋めたとしたら、誰なんだろう。」

その時、卓の脳裏にある映像が思い出された。

「そうだ、なつめちゃんの事を凄く大切にしている人が居たんだった!」

「えっ、それは誰なの?」

「う〜ん、分かんないけど。お兄さんくらい年が離れてた人だったな。」

中々手掛かりは見つからない。亮也の父親は警察官で、そっちも動いてるらしいのだが、詳しくは分かってないようなのだ。

卓達は帰りながらも考えていた。


家に帰ってきた卓は、来客が居ることに気付いた。そして、居間に行くとそこにはなんと、卓の叔父にあたる友也がいたのた。

「おじさん!」

卓はそこに駆け寄った。

「久し振りだね、卓君!」

「お久しぶりです!」

卓は友也と一緒にソファに腰掛けた。

「どうして急に来たのですか?」

「まぁ…色々あってな、」 

その時、由香がお茶をもって来た。

「友也さん、突然来て、珍しいわね。」

「由香さん、まぁ…ちょっと気になる事があって。」

「一体何なんだ?」

「兄さん、実は…」

友也はある日の新聞の一ページを広げて見せた。

それはら卓達も目撃したあの殺人事件だった。

「やっぱりあれは事件だったんだ…。」

「実はその被害者、僕の同級生なんだ。」

「…えっ?!」

「大西壮矢、小学校で一度だけクラスメイトになったんだ。」

卓はその記事をじっと見た。その間、友也は壮矢の話をし始めた。

「結局会話という会話をして無いからな。詳しくは何も知らない。ただ…あの人はずっと年下の女の子と一緒に居たんだった。」

「年下の女の子?」

「ああ、平岡夏目だったっけ、友達はそんな事を言ってたなぁ…。」

卓はその名前に反応し、友也の話を聞き始めた。

「あの二人、なんでかは知らないけど、ずっと側に居た。休み時間も、放課後もずっと仲良くしてた。」

「そうだったんだ…。」

卓は新聞から目を離して、メモを書き出した。

「後…、壮矢の事が好きな人が居たんだった。名前は、え〜と、山口美代だったっけ?あんまり覚えてないや。」

卓はしっかりとそれについてもメモを取っていた。

「…で、なんで卓はメモを取ってるんだい?」

卓はあっ、と言ってから友也の方を見た。

「いや…、何か気になって。」

「そうか…。」

卓はメモを置いて友也の方を見た。

「卓、実際の事件に興味持つなんて珍しいな。」

「あ、はい!実は俺達死出山怪奇少年探偵団と言うのをやってて。」

探偵団の事を大人の人に言うのは初めてだった。

「そうか…、それで熱心にメモを取っていたのか…。」

「この事件についても実際追ってて、」

「なるほどな。」

そして、ある話を持ち出した。

「あの、小学校の桜の木の話って実際あった話なんですか?」

友也は少し考え込んだ。

「あぁ…、実はな、夏目はある時行方不明になって学校に来なくなったんだよ。その時に誰かが桜の話を持ち出して…。」

「実は…夏目ちゃんの手紙というかメモに、『さくらのしたでまたあおうね』って書いてあったんです。」

「えっ、そんな事が…。」

「その話っていつからあるんですか?」

「小学校の七不思議…。」

由香がふとそんな事を呟いた。

「お母さん?」

由香は卓の方を向いてこう答えた。

「あっ、そういえばその話私達の頃からあったっけ…。」

「そうなんだ?」

そして、友也が卓にある事をすすめた。

「そうだ、卓君。そういった話はあの人が詳しいよ。」

「あの人って…?」

「そうだ、卓もよく知ってるあの人ならきっと何か知ってるだろう。電話しとくから次の休みに行くと良いよ。」

「おじさん、どうもありがとう!でも誰なんだろう…。」

そして、友也は自分の家に帰ってしまった。



第六章 小学校の七不思議

翌日、卓は優月と亮也と話していた。

「死出山について詳しい人かぁ…会ってみたいな!」

「俺も凄く楽しみにしてるよ!え〜と、亮也は?」

「僕はその日用事があるから行かない。」

卓と優月はその場で固まってしまった。

「そっか…仕方ないよね。」

そして次の休みの日、友也の手書きの地図を頼りにそこへ向かう事にした。


山と海の狭間にある青波台、そこの北側は海側の都会と違って、田舎の風景が広がっていた。山は青々としていて、田んぼには水が張り、人が作業をしている。

卓と優月はバスに乗ってそこへ向かい、降りてからは手書きの地図を頼りに目的地へ向かった。

「こんな所があったなんて、知らなかったよ。」

「うん、凄くいい所だよね。」

そして、集落の中で一番大きな平屋の和風建築の家が見えた。卓が扉を叩くと、引き戸が開いて中から自分のお祖母ちゃんよりも少し若いくらいの一人の女性が現れた。

「こんにちは、卓君とそれからえ〜と、」

「篠原優月です。」

「そうなの、私は渡辺志保、二人は茂に会いに来たんだっけ?後で呼ぶからとりあえず居間に居てね。」

「あっ、分かりました。」

卓と優月は畳のある居間に座った。

「ここ、なんか落ち着くよね。」

「うん、初めて来たはずなのに何処か懐かしいな…。」

すると志保がガラスのコップにはいったオレンジジュースをもって来た。

「なんか、わざわざすみません。」

「いえ、良いのよ。こうしてお客さんが来てくれるの嬉しいから。そうだ、茂は今書斎で仕事をしてるから、ここでしばらく涼んでから来てね。」

そして志保は行ってしまった。

「俺達に会わせたい人って誰なんだろう…。」

「でも、なんとなく感じは良さそうだよね。」

「うん、でも仕事してるって言ってたからなぁ…邪魔する訳にも行かないし…。」

そして、

ジュースを飲み切った卓達は台所にコップを返しに行った。そして、志保に案内してもらって書斎に向かった。


扉を開けると、そこは瞬の書斎よりも大きな所で死出山関係の本が所狭しと並んでいる。また、文机には大量の原稿用紙がうず高く積まれていた。

その奥で、深緑色の着物を着た男性が、何かを書いていたが、卓達の存在に気づくと、こっちを向いてそっと微笑んだ。

「君達が、私に会いたいと言った子達だね?」

「あ、はいこんにちは。」 

男性は老眼鏡を外すと、文机の引き出しにしまった。

「私の名は渡辺茂、この部屋を見ての通り、小説家さ。君達が卓君と優月君だね?二人の事は瞬君から聞いてるよ。」

「あっ、そうなんですか。」

卓は質問がしやすいように自分の『夜桜』の本をカバンから取り出した。すると茂から驚きの声が聞こえた。

「それは…、私が書いた本だ。」

「えっ、ええっ?!」

卓は驚きと興奮の余り体が震えていた。

「あ、あなたが、闇さんですか?!ま、まさかこんな所で会えるなんて思ってなかったです…。」

茂は目をぱちくりさせた。

「卓君?君は一体どうしたのかね?」

卓は本とペンを差し出した。

「さ、サインお願いします!」

茂は戸惑いながらもそれを受け取った。

「えっと…『闇深太郎』の方で良いんだね?」

「もちのろんです!」

そして、本を受け取った卓は文字通り舞い上がった。

「うわぁ…こんな事があるだなんて…。」

「卓君、大丈夫?」

優月は卓に向かってどんな顔をしたらいいのか分からなくなった。

「まさか、君達のような若い子達がこうして私の小説を読んでくれるなんて思ってなかったよ。」

「闇さんの事は誰よりも尊敬してます!」

「闇さん…?ああ、あんなペンネームだからか。あれは私が自分で付けたものだか、実際そう呼ばれるとなんか恥ずかしいというか…自分が呼ばれているような気がしないんだ。」

「やっぱりその呼び方は駄目ですか…それなら、先生!」

「先生?!。ま、まぁ…良しとしよう。」

卓の目の輝きは失せる事がなかった。その様子をみて優月はため息をついた。


卓の興奮がようやく冷めた所で茂は話を始めた。

「さて、本題に入ろうか、二人は志手山小学校の七不思議を聞きに来たんだっけ?」

「あ、はい!特に桜の木について教えてもらいたいのですが。」

「卓君達の小学校にも七不思議はあるはずなんだ。ただ、志手山小学校のものは根本的なものが違う。それは実際の事件を元にしてるかどうかなんだ。」

「実際の事件を元に…?」

「あの小学校の七不思議は実際の学校での死亡事故や小学生が巻き込まれた事故を七つまとめたものなんだ。それであるが故に年代毎に変わっていく。桜の木の話は私の時にはなかった。」

「そうなんですか?」

「ああ、桜の木の他には、校庭の砂が他より白いのは白骨死体が埋まってたから、とか真冬のプールが赤黒く染まってて水死体らしきものが浮いていたとか、首が取れた人体模型を見ると自分の首も取れるとか…。」

卓は青ざめてしまった。

「うっ…想像出来てしまう自分が怖い…。」

「それ、全部本当なんですか?」

茂は頷いた。

「ああ、むしろ言い伝えられてるものよりも実際は酷かったって事が多いな。」

「それじゃあ桜の木も…、」

「様々な人の話を聞く限りは、死体はかなり埋まってたようだな。」

「へえ…そうなんですか、」

「で、他に聞きたい事はあるかい?」 

「それは……、」

その時、玄関が開いて中から誰か入って来た。その人物というのは…、

「ようやく会えましたよ、渡辺さん。」

「亮也?!どうしてここに…」

亮也の目はどういう訳か険しかった。

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