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翌朝、早くに目を覚ました亜樹は、まだここが過去であることを確かめてから、そっと階下に下りた。

畳の部屋でくっついてよく眠っている沙耶と美結を起こさないように、そっと。


静かに台所を目指すと、なにやら罵声が聞こえる。

…伯母さんの声だ。


「あなたは人としてなってない。もともとあなたはうちの人間じゃないものね! その上いろんなことがしっかりこなせない、人間失格だよ!」


強い口調のその言葉を聞くやいなや、亜樹は台所へ飛び込んでいた。

ドクン、ドクン、と嫌な脈を打つ胸に無理やり静まれと言い聞かせ、伯母さんと多恵の間に割って入り、多恵をかばうように両手を広げる。


「お母さんは頑張ってるよ? 毎日朝早くから仕事して、私や沙耶や美結もしっかり育ててる。責めるなんておかしいよ!」


――伯母さん、父の姉は昔から多恵に辛く当たっていた。

流れている血が悪いだとか、生きてる価値がないとか、出ていけとか、多恵の存在を否定する言葉ばかり並べて。

多恵はいつも唇を噛みしめて「はい」と答えていた。

亜樹はそんな多恵の姿を知りながら、次は多恵に私が当たられるんじゃないか、と怯えて、いつも逃げることを優先して多恵をかばえることは少なかった。

伯母さんは多恵に負けず劣らず感情の起伏が激しかったけれど、皆それを見てみぬふりをしていたんだ。


「あ…亜樹、退きなさい! これはっ、私と多恵さんの問題だよ!」


いつもぼんやりした眼差しで一部始終を見守っていた亜樹が飛び込んだことに一瞬ひるんだ伯母さんは、ぐっと態勢を立て直して、ぎらぎらした眼差しで亜樹を睨んだ。

けれど、亜樹は退かなかった。


「…亜樹、そうだね亜樹にも半分は外の血が流れているから…それが悪さしてるんだね。馬鹿親子! 人の話に聞く耳も持たない! 呆れた! いつか天罰が下るよ!!」


伯母さんは怒りながら場を去って行き、亜樹はそっと振り返ると、涙目の多恵の背中に手を回し、手のひらを開いたままポンポン、と軽く二度叩いた。


「…お母さんは何も悪くないよ。泣きたい時には思い切り泣くといいよ、私がね、そばにいるから」


穏やかな亜樹の言葉に、多恵はせきを切ったように泣きじゃくった。

今までためにためていた涙を、全部吐き出すように――。


…そして、落ち着きを取り戻してから、多恵は亜樹を抱きしめて、小さく、ごめんね、と囁いた。


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