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御馳走
若林舞子は夕食の唐揚げをを頬張りながら、キンキンモールのゼネラルマネジャー藤原喜太郎について母に話す。しかし、どうも母・若林泰子は自身のパート先の清掃会社「アベーレ」の人間関係にしか興味がないようだ。
舞子はキンキンモールに所属するテナントのひとつハワイアンパンケーキ店「ランナーウェイカフェテリア」でアルバイトをしている。
「あんさ、後ろに手組んでさ、ぼそぼそ言いながら店の前ぷらぁぷらぁと通んねんゼネマネ。何しとんやろうな。接客もせんとあんなんで給料貰えるとかマジ最高やんな」
と、舞子が話しても
「ゼネマネ、おっちゃんなんか?アベーレな今度入った鮫島さんいうオバチャン何歳や思う。70歳やで70歳!社長もようそんなん雇うわ。掃除の仕事、ただでさえ夏で余計にしんどいのにオバチャン倒れても知らんで本間に」
と泰子は人の話しは聞き耳持ちませんという態度でいる。舞子もそうとなったら面白くなく黙って母・泰子の話を聞いてやることに徹した。
甘い香りがこびりついた鼻で唐揚げとみそ汁の塩っけを堪能する。
「ちょっと、あんた聞いてんの?」