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友の恋に胸の痛む
友の思わぬ告白に運ばれてきた美味しいはずのパスタは味がせず。天童と高野、二人の会話もなかった。
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月が雲から顔を出す。
仕事を終えて、車で帰宅する一時が天童亜依子を癒していた。
(もしも子どもが生まれたら<月>って名前にしよう)
結婚の相手もいないのに考えてどうもおかしくなり、一人ハンドルを握りながら大笑いする。
信号待ち、夜空を見上げると昼間の高野みどりの真剣な顔を思い出す。
(あんな真っ直ぐな思いを聞いたけど、私は、いったい何をすればええんやろか?)
大人になって誰かを「好き」と声に出したことがあっただろうか。天童の胸がきゅっと痛んだ。