2話
「美樹、おっはよぅ」
ちょうど言葉にしたらそんな感じの掛け声。
「春香ちゃん、髪切ったの?かわいいね」
「えー、そうかな?ありがと!」
なんだか嬉しそうな春香を見て、美樹はふと不安になる。
「ねえねぇ、もう美樹も転校しちゃうかもしれないし、一応みんなで買い物にでも行かない?」
誰からともなくそんな声が聞こえてきた。
なんで、買い物なんか…
京北中は、学歴を求めなかった。面接と試験の結果が5:5という、全国的にも珍しい学校だった。親もそれに納得して、子供もそれに納得した。それが「普通」だったから。
これで良かったのだろうか。
美樹はずっと迷っていた。こんな田舎だけど、友達はみんないい人で、一通りの施設は揃っていて、自然はたくさんあって。この街は、好きだった。
東京は、どんなところなんだろう。
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その週の土曜日、みんなで買い物に行くことになった。
みんなでいける最後の買い物。
明日は引越し。それに転校生になる。
ファンタジーに必要な要素は全て揃ってた。
別に、関係ないけど。
「ねぇ、何か映画でも見ようか?」
あれなんかどう?といって誰かが指差した映画は、「転校生になろうか」だった。
ケータイの小説から話題になった映画。まぁまぁおもしろかった。
「あれってどうなんだろ?」
「小説の方なら読んだけど、結構面白かったよ?あれもいいとおもうなぁ」
じゃぁあれ見ようか、と成り行きで、私たちは「転校生になろうか」を見た。
感想といえば、薄っぺらな純愛小説という言葉しか思い浮かばなかった。
それすらいえなくなってしまうほど・・・・・
いや、なんでもない。
いろいろな店をまわって、最後に入ったお店は郊外の小さなケーキ屋さんだった。
地元でも話題のケーキ屋さん。小さくて、かわいかった。
なにやらみんなが店員さんと相談していた。
一通りケーキを頼み終わって、みんなが席に着き始めたので、私は急いで席に着いた。
最初に紅茶が運ばれてきて、次に小さいゼリーが運ばれてきた。
私は普段と違う雰囲気にやっと気がついて、友達に聞こうとした。
でも、聞けなかった。聞いてしまったら、この時間が終わるような気がした。
店員さんが何か大きなものを運んできた。
やっぱり何か違う。
それをテーブルにおいて、フタをあけると、チョコレートプレートの載った誕生日ケーキが。
「今日は誰の誕生日でもないよね?どうして?」
春香がおもむろに口を開く。
「美樹。転校しても、あっちで頑張ってね。これはみんなからのプレゼント!」
誕生日プレートなんかじゃ、なかった。
「みんな・・・・・・・・。ありがとぅ・・・・ぁりがとぅ・・・・!」
今までの自分。みんなを疑ってた。
みんなが自分の悪口を言ってるんじゃないかって。
そう。みんなも、自分も・・・・
「怖かったの・・・・・・。ごめんね、みんな、ごめんね・・・・・!私、がんばるね・・!時々こっちにも来るからね!ありがとう・・・・ありがとう・・・・!」
みんなは、最後になって美樹が泣き出す事は予想できても、謝ったり、感謝したりすることは想定していなかったみたいだった。
みんながすごく戸惑った顔をしていて、すごく困っていた。
でも、それは私を友達だと思っていてくれた証拠。
みんな信頼しあっていた証。
だから、私は頑張ろうと思う。
こんなにつまらなくなるはずなかったのに…。絶望したw!
コメントをいただいたので修正しました。ありがとうございます!