表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

オズウェルと未来と手紙と

作者: なな

 オズウェルは茶色い小箱の蓋を開いた。

 中には色褪せた一通の手紙、そして白黒写真。


 写真には一人の男。きついつり目はこちらをにらみ、髪は白髪混じり。

 分厚い眼鏡の彼は、とても20歳とは思えない。


 10年前の自分の姿にため息をつくと、オズウェルは手紙を開く。

 神経質そうな、美しい字である。


『俺はオズウェル、20歳の数学者だ。好きなものは数学。

こんな未来の自分に対しての手紙も、正直馬鹿らしいと思う。書くことは特にない。

最後に一つだけ。嫌いなものは、人間だ。』


 オズウェルは手紙を丁寧に箱にしまうと、涼しそうな青の便箋を手に取った。

 お気に入りの鉛筆を便箋に走らせては、消しゴムをかける。


 字はどこか、温かみを感じるものだった。


『私の名前はオズウェル、二児の父である。妻と料理屋を営んでいて、毎日が楽しい。今回は書くことがあるな。


まず、結婚した。三年前だ。そして子どもが二人。妻は日本人である。10年前の私が嫌っていた、人間と結婚したのだよ。

出会いを話してやろう。簡潔に言う。私は彼女に一目惚れした。

ありえないか?馬鹿らしいか?でも私は一目惚れの存在を、証明してしまったよ。

10年前とはもう別人だ。私は彼女を経て、変わった。自負するよ。

別に、数学が嫌いになったわけじゃない。しかし私は、この生き方を選んだんだ。


10年後のあなたへ。あなたは今、満足していますか?まだ料理屋をやっていたら、嬉しいです。

そして私の愛するものは、人間です。


今は亡きクリスタ先生に、感謝を。』


 オズウェルは何度も読み返しては、頷いた。

 昨日撮った写真を机から出し、手紙と一緒に箱にしまう。

 そして箱を元の場所に戻すと―


「パパァ!ゴハン!!」

階下から、娘の舞奈の声だ。

 微かに漂う焼き魚の匂いに、オズウェルの腹の虫が鳴く。


「今行く!」

オズウェルは改めて、幸せを感じていた。

お粗末過ぎて笑えますね。

問題の10年間の話を書ければよかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ