7:人間
赤毛のお兄さんの名前はソルというそうです。外見年齢は二十代前半くらいでしょうか。
話しやすそうな雰囲気のワイルドな男性です。
「外から来た人間って珍しいな。大抵は、王族や貴族の一部しか連れていないのに……」
「そうなのですか、そう言えば以前行った獣医(?)さんがそのような事を話されていた様な気がします」
そんなことよりも、私は彼に聞きたい事があったのでした。
「あの……つかぬ事をお聞きしますが、あなたもこの世界に転生した人ですか?」
疑問だったことを直球で聞いてみました。変な人だと思われてしまうかもしれませんが……。
「ああ、そうだぜ?もともと野良だ」
直球で答えが帰ってきましたよ。ソルは何てことないように話しますね。
「ということは、私と同じなのですね!……ここでは、転生者の事を野良というのでしょうか?」
「ああ、そうだ。俺は野良で、転生後にすぐ保健所に捕まって、ここの城に連れてこられた……アンタは自分以外の人間に会うのは初めてなのか?」
「はい、保健所の職員から逃げ出して、シエルに拾われました。人間に会うのは、ソルが初めてです」
「あー……あれは恐怖だったよな。訳が分からないまま放り出されて、獣人に捕獲されて……」
ソルは遠い目をしました。
彼はもともと三十代の男性で、飲食店の店長をしていたそうです。仕事をしていて休憩を取っていたはずが、気が付いたらこの世界にいたらしいのです。
この世界で、彼も見た目が変わってしまったようでした。私も外見年齢は十代、この世界に来た人間は皆見た目がこちらの世界仕様に変わってしまうようなのです。
「俺の妻も転生者、野良だった。陛下は大の人間好きで、八人の人間を飼っている。もしアンタが保健所に捕まっていたら、九人目になっていた可能性が高いな」
「ソルには奥さんがいるのですか!」
「ああ。妻は看護師で、俺たちと同じ経緯でこの世界に来た。茶色の髪の綺麗な女だよ、今度会わせたいな」
ソルと奥さんは、この城で出会い、一緒に過ごすうちに仲良くなって結婚するに至ったみたいです。
「ぜひ!機会があればソルの奥さんともお会いしたいです。女性の方とも一度お話ししてみたかったのです」
「分かった!予定が合えば、他の奴らも紹介するよ。この城の野良はいい奴が多いから……」
「先程から、野良野良と言われていますが、野良じゃない人間もいるという事ですか?」
「ああ。この世界で生まれた人間は野良とは言わない、あと、子供のうちに飛ばされてきた奴も野良のくせに野良っぽくないな……」
「そんな人もいるんですね……」
「あいつらは……悪く言いたくないが、ちょっと同じ生き物とは思えない……お前も会ってみれば分かると思うが、何て言うか不気味だ……」
「はぁ……」
会った事が無いので、それについてはよく分かりませんが、この城にも二人野良じゃない人がいるそうです。
ソルは面倒見のいい人で、そのあとも楽しくお喋りしました。
シエルと王様の話が終わったようなので、再び客室で二人に合流しました。
「お前が王室付きになってくれれば話は早いのにな」
「僕は今の暮らしが気に入っているんです、御用の際はまた参上しますよ」
「そうか……」
シエルが帰る支度をしだしたので、私もソルにさよならの挨拶をしました。
「そうだ、シエル!」
帰り際に王様が言いました。
「ネージュとウチの人間をお見合いさせてみないか?丁度同じくらいの年頃の奴がいるんだが……」