53:ミラネ2
私は、小さな小さな町工場の社長だった。
家の裏にある工場で、企業に治めるための部品を作っていた。
よくある話で、中国製の安い部品が出回る中、その企業から全ての契約を打ち切られてしまったのだ。
町工場は潰れ、後には借金だけが残った。
従業員達にせめてもの退職金を渡して、妻とは離婚した。子供達は妻が引き取った。
孤独だった。
働いても働いても、借金の返済のために金は消えて行く。
ついに私は倒れ、気が付けば変な場所にいたのだ。獣人の国である。
私は、若返っていた。姿も生前とはまるで違う。
見慣れない場所に戸惑っていると、緑色の服の男達が私に網を投げてきた。失礼な奴らだ。
奴らによって、私は城に引き渡される身となったのである。
そこで、自分と似た境遇の年の近い女性……フラジエと出会った。
彼女との間には三人の子供が出来たが、末っ子のミエル以外は他の獣人達に引き取られていった。
王が亡くなり、再び家族離散の危機に陥ったが、なんとか一家揃って同じ場所に留まれたのは幸運だ。たとえ、引っ越し先がふざけた施設であっても。
そう言えば、近々隣国との戦争が起こるらしい。
貧しい隣国よりも、この国の方が力は強いと言われているが大丈夫なのだろうか。
この世界で、ペットとして扱われている人間に戦う術はない。
私は、このまま家族で平穏に生きていけることを望んだ。
「人間ちゃん、また遊びにくるね!」
「またね!」
そう言って手を振る、娘ぐらいの年の獣人の少女達。
この世界での戦争がどういったものなのかは未知数だ。
けれど、ペットである身としては、大規模な災害とならないことを祈るばかりである。
次回から、主人公視点に戻ります




