48:シエル3
真っ赤な高級ソファの上で、ネージュがうたた寝をしている。
今日は、色々とあったので疲れてしまったのだろう。
「可愛いな……」
自分の為に、一生懸命になってくれる彼女が、愛おしくてたまらない。
今日だって、無理をして病室まで来てくれたのだ。
無理をして、台車の中にまで入り込んで……可哀想に。
きっと、狭かっただろう。
長くてまっすぐな銀色の髪の毛が、ソファから下に流れ落ちている。
「それにしても」
先程怒鳴り込んできた人間の雌は、僕の事を「ネージュの彼氏」と呼んだ。
どういう事なのだろうか。
ネージュがそう言ったのか……或いは、僕の行動からそう判断したのか。
銀色の髪をかき上げ、溜息をつく。
やはり、自分がネージュに接する態度は、飼い主がペットに対してするものではないのだろう。
「僕は、ネージュに」
彼女に……ペットとしてではなく、自分と同格の恋人として接しているのだろうか。
この年になるまで、恋なんて一度もした事がないので、まるで勝手が分からない。
この国の王であるオッサンに拾われる前までの僕は、ろくな人生を歩んで来なかった。
拾われて、魔法使いとして働き出した後は、仕事で戦争に駆り出されて必死に戦う日々だ。
僕は、戦いで活躍して、国を救った「英雄」としての名声を得たけれど、たくさんの敵を殺したし、一緒に戦った仲間もたくさん殺された。
心穏やかに過ごす時間など、あるはずもなく……
ようやく、戦争が中断し……僕は、城付きの魔法使いを辞めた。
もう、誰かを殺す仕事に、うんざりしていたのだ。
……心が、疲弊していた。
たまにオッサンから来る、戦闘以外の仕事依頼を受けながら、淡々と日々を送っていた。
ネージュに会うまでは。
彼女といるのは、とても楽で……心が癒される。
彼女は僕の大事なペットで。
いや……きっと、もう、ペット以上の存在になっている。




