44:見舞い
「こ……これは」
私は唖然として、目の前のお見舞いの品を見つめました。
台車の上に四角い箱のような棚が乗っており、その上のテーブルには沢山の肉料理が置かれています。
「お嬢ちゃん、この中に入りな」
「え……?」
肉料理の中に……?
「台車の上の棚の中だよ。中は空洞だ」
「いつもは中に、上官の酒を入れてこっそり運ぶんだ」
え、これって酒泥棒の道具なのですか……
でも、シエルに会いたい一心で私は棚の中に入ります。
「狭くて揺れるけど、ちょっとの辛抱な」
ノワールさんが、外から声を掛けてくれました。
「大丈夫です。ここまでしてくださって本当にありがとうございます」
「いいって、いいって。シエルを揶揄える機会なんて滅多にないんだから」
ブランさんが楽しそうに笑っています……もしかして、そっちが狙いですか?
ガタゴト、ガタゴト……台車が揺れています。
私は三角座りで体を丸めて大人しくしていました。
乗り心地は間違いなく最悪の部類です。お尻が痛い。
しばらく揺れていた台車が止まりました。
「お嬢ちゃん、着いたぜ?」
外からノワールさんが教えてくれました。
獣人である二人は、病室に入ることを見咎められないみたいです。うう、差別だ!
台車は病室に入ると、ゆっくり進んで直ぐに止まりました。
「もう出てきて大丈夫だ」
ブランさんが、棚の扉を開けてくれます。
「あ……ありがとうございます」
私は、フラフラしながらも、棚の中から這い出しました。
白くて広い病室です。シエルだけしかいない個室でした。
「シエル」
中央のベッドに銀色の髪の毛が見えます。私は彼に駆け寄りました。
「シエル、シエル……」
ベッドの上のシエルは、目を閉じています。まだ彼は目覚めないのでしょうか。
首の上に包帯が巻かれています。頬にもガーゼが当てられていました。見ていてとても痛々しいです。
「シエル……起きて下さい。大丈夫だって言ったじゃないですか」
自分の声とは思えないような情けない呟きが漏れます。
「ん……」
「……! シエル?」
シエルの頬がピクリと動きました。
私は彼の手を握りました。すこしひんやりした滑らかで大きな手です。
「ネージュ?」
彼の目が薄く目が開いています。
「はい、そうですよ。心配でお見舞いにきました」
「ネージュ!」
シエルはそう言うと、ものすごい早さで半身を起こし、ベッドサイドにいた私に抱きつきました。
私はそのまま腰を引き寄せられて転びそうになったので、咄嗟に彼の枕元に手をついて体を支えます。
しかし、シエルはそれには構わずに、私を抱き上げてベッドの上に乗せました。私は完全に彼の体に乗りかかってしまっています。
「だ、大丈夫なのですか? 上に乗ったりして……シエル、怪我をしているのでしょう?」
……痛くはないのでしょうか?
「平気だよ。ネージュに会えたことの方が嬉しい……それに、ネージュはとっても軽いよ?」
シエルは上に乗った私の頭を撫でながら、頬擦りしてきました。
「シエル……会いたかったです」
ぽろりと、私の口から言葉が溢れました。




