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43:想定外

 シエルが帰ってくるまで、あと半分。

 今日は城に来て四日目です。あと三日でシエルがお仕事を終えて戻ってきます。


 そうそう、ソルに聞いたのですが、ショコラの引取先が決まった模様です。

 王弟の娘さんの元に引き取られたとか。新しい家族が見つかって良かったですね。

 ショコラからの告白の返事は保留になってしまいましたが。

 これで、セゾン、ショコラ、アナナさんの引取先が決まりました。

 残されたソル達夫婦や、ミエルの家族はどうなるのでしょうか。

 それを心配しながらも、自分に与えられた部屋で寛いでいた私は、突如王様に呼び出されました。


「どうされましたか? 王様」

 王の自室に通された私は、巨大なベッドに半身を起こしている王様に対面しました。

 王様は今日は体調が優れないみたいで、いつもよりも顔色も悪そうです。

「しんどかったら、横になって下さい。無理しないで」

 別の日に出直そうかと彼に問えば、首を横に振られてしまいました。

「これだけは話しておかなくてはと思ってな」

「なんですか?」

 彼はやや逡巡してから、覚悟を決めたように私に話し出しました。


「実はな、昨日シエルが怪我をした。国境沿いで大きな争いが起こった際に味方を庇って負傷したようだ」

「……!」

 私は衝撃を受けました。

 戦が起こりそうな状況で、国境沿いで仕事するのは危険だと頭のどこかで思ってはいました。

 ですが、実際は現状を何も知らず、状況を軽く考えていたのです。

 シエルが怪我なんてするはずなく、三日後に元気に帰ってきてくれると……信じきっていたのです。

「それで、シエルは大丈夫なのですか? 大きな怪我なのですか?」

 私は矢継ぎ早に王様に質問をしました。

「ああ、命に別状はないが大きな怪我のようだ。今日、一足先に治療の為に城に転送されてくる手筈になっている」

 あの転移用の魔法陣で此処へ送られてくるのですね。


「シエル……大丈夫だって言っていたじゃないですか」

 元気に出て行ったシエルがこんなことになるなんて、胸を締め付けられる思いです。

 私は人間で、無力で、シエルの仕事を手伝うことすら出来ません。

 もし、私に獣人達のような力があれば、彼の力になれるのに……力になりたいのに。助けたいのに。

 人間というか弱い愛玩動物でいることが、どうしようもなく嫌になります。



 王様の話を受けたすぐ後に、シエルが城へ運ばれてきました。

 獣人兵達がざわめいています。獣人の使用人達も慌ただしく動き回っています。

 シエルの他にも、負傷者が多数出ているようですね。心配です。

「シエル!」

 私は彼に駆け寄ろうとしましたが、看護師の獣人に遮られてしまいました。

 ペットは病室に入れないんだそうです。

 シエルは意識がない様子でした。側にいたいのに……歯がゆいです。

 結局、その日、シエルは目を覚まさなかったようでした。



 翌日、私は獣人兵の訓練場へ足を運びました。彼らに会うためです。

「ノワールさん! ブランさん!」

 私は彼等に駆け寄りました。

 二人は今日も一緒に訓練をしている様です。

「おう! ネージュじゃねえか」

「どうしたんだ? 暇なのか?」

 私は、二人に頭を下げました。


「お二人にお願いがあるのです。シエルの様子を見に行ってくれませんか?」

「……ん? シエル・ラテールの?」

「そういや、味方の兵士達を庇って怪我したんだっけか?」

「シエルが起きていたら伝言を伝えて欲しくて……看護師さんは他の兵士の看病もあるから忙しそうで、人間の私にはまともに取り合ってくれないんです」

「ははーん、読めたぞ。その看護師、女だな」

「相変わらずだな、シエルの奴」

 ノワールさんとブランさんは、顔を見合わせます。

「わかったぜ、良いこと思いついた。お嬢ちゃんも協力しな!」

 そう言うと、二人はニヤニヤ楽しそうに笑いながらシエルのお見舞いの準備を始めたのでした。

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