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41:ショコラ2

 僕は虎の獣人であるアルトに「ショコラ」という名前を貰った。

 城の中では自由に動くことを許され、同じ人間であるミエル一家やセゾン、アナナと共に生活している。 


 僕は家族のいるミエルや、恋人のいるアナナが羨ましかった。

 今の世界でも元の世界でも、自分は独りだったから。

 純正の人間であるセゾンは、特に独りであることを気にしていないようだったけれど。


 両親が居ないなら恋人が欲しい、その恋人と家族になれば良い。単純にそう思った。

 でも、セゾンを恋人にするのは、なんだか違う……

 彼女は、どこか人間らしくない。

 

 十年経ったある日、新しい人間が来た。茶色の髪の、僕よりも少し年上の女だ。

 彼女はアルトによって「ロシェ」と名付けられる。

 恋人になってもらうには理想的な人間だったので、僕はロシェと仲良くなり、恋人になってくれと頼んだ。

 けれど、ロシェの返事をもらう前にに「ソル」という男が来て……彼が僕からロシェを奪っていった。

 ソルとロシェは、そのまま恋人同士になってしまい……それ以来、僕とソルはあまり仲が良くない。


 ああ、どうして、こんなにも上手くいかないのだろう。



 そんなある日、城で人間を見た。

 狐の獣人に連れられた、僕と同じ年格好の女の子だ。


「アルト、あれは誰?」

「ああ、シエルの連れていた人間か」

「たぶんソレ」

「ネージュという雌の人間だ、シエルに飼われている……まだ発生して日が浅いみたいだな」

「ふぅん?」


 シエル・ラテールという魔法使いは、僕でも知っている。

 過去の戦争で活躍し、数年前まではこの国のトップにいた魔法使い。

 今は辞職したけれど、たまに城に顔を出している。

 冷酷な性格で、人間なんて飼いそうにない奴だったんだけど、人は見かけによらないものだね。


「そのネージュと話してみたいな」

「それはいいな。年も近いし見合いでもさせるか」


 でも、見合い相手にミエルが選ばれたので、僕は荒れた。

 絶対上手く行きっこないと思うよ、純正の人間って僕らと何かが違うもの。

 獣人達はあんまり分かっていないみたいだけれど……


 案の定、見合いは上手くいかなくて、途中でソルがフォローに回っていた。

 やっぱりね。

 ミエルは、初対面で相手に「つがいになって」と迫って振られたみたい。

 いくらアルトにそう言われたからって、そんな風にぶっちゃけてしまうのは良くないと思う。


「アルト、僕も彼女に会いたい……」

「まあ、機会があればな」

「いつ会えるの?」

「そのうちな」

「そのうちっていつ?」


 その日は意外と早く訪れた。

 ネージュが城に保護されたのだ。初めて間近で見た彼女はとても可愛かった。

 早く、彼女に近づきたい。


 廊下で迷子になっているネージュを発見したので、案内がてら彼女の部屋へ入ってみた。


 彼女はつがいを必要としていなかった。僕と同じ独り(・・)なのに。

 だから、彼女の意思を尊重することにしたんだ。

 アナナ達だって恋仲ではあるけれど、まだつがいではないからね。

 いい感じに彼女の警戒心も溶けて、仲良くなれた。


 ネージュは、こちらの世界の常識を殆ど知らない。真っ白だった。

 それなのに、大人ぶろうとするところが可愛い。

 彼女はまだ、前にいた人間達の世界に未練があるみたいだ。


 何日かしたら、ネージュの飼い主が仕事から帰って来て、彼女は家に戻ることになった。

 いつも取り澄ました表情をしていたシエル・ラテールの表情がなんだか緩んでいる。

 ネージュを大事そうに抱いて彼女の部屋から出て来た彼を見て、何かが引っかかった。

 シエル・ラテールは、ネージュを本当にペットとして(・・・・・・)可愛がっているのだろうか。

 ……気に入らない。


「ネージュ、また会おうね」


 挨拶する僕に、ネージュは笑って手を振ってくれた。

 彼女の中には飼い主に対する疑いは微塵もないらしい。


 早く彼女と恋人同士になってしまったほうが良いかもしれない……

 僕は少し焦っていた。

 タダでさえ人間は少ないのだから、人間は獣人とではなくて人間同士で結ばれるべきだと思う。

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