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36:なれそめ

「ねえ、だったらさあ……」

 不意にショコラが言いました。

「何ですか?」

「……僕と付き合ってみない?」

「へ?」

 確か、ショコラは(つがい)になる気はないと以前言っていたはずです。

「ショコラ……でも……」

「急に(つがい)になるなんて、勿論言わないよ。付き合ってもいないのに番になるなんて、前の世界に比べたらおかしいもんね」


「あの……」

 私が混乱しているのが分かったのでしょう、ショコラが引いてくれました。

「ま、すぐに返事ちょーだいとは言わないから、考えといてよ……」

 そう言うと、ショコラは立ち上がり、部屋を出て行ってしまいました。


 後には、呆然としている私だけが残っています……。

「告白されたのなんて、何年ぶりでしょうか」

 柄にも無く、焦ってしまいました。初めてでもないのに、情けない事です。

 ショコラは、番には興味が無いようでしたので、完全に油断していました。

 不意打ちの破壊力ってすごいですね。しばらくソファーの上から動けませんでしたよ。



 翌日、図書館に向かう途中で、珍しい人に声をかけられました。

「あ、アンタ。ちょっと今話せる?」

 前の方からアナナさんが歩いてきました。

 一瞬、昨日の修羅場が頭をよぎりましたが、私には馬乗りになる事は無いでしょう。大丈夫。

 そのまま、アナナさんの部屋へお呼ばれしました。


 アナナさんのお部屋は、何と言うか……汚部屋でした。

 特にこだわりのなさそうな簡素な家具がちぐはぐに乱立しており、床一面に衣類が散乱しています。

 机の上にはアクセサリやお菓子が所狭しと並べられており、ベッドの上は物置と化しています。

 かろうじてソファーの上が空いています。

 メイドさんは、あまりの汚さにこの部屋の掃除を放棄してしまったのでしょうか……。

「座って座ってー」

 昨日とは打って変わり、今日はご機嫌なアナナさん。

 勧められるまま、私はソファーに座りました。


「ねえねえ」

「何でしょうか?」

「聞いたわよ、アンタ獣人に恋をしているんだって?」

「……はぇ?」

 何だか変な噂が一人歩きしているようですね。昨日もショコラに聞かれましたし……。

 犯人の目星はついておりますよ。ロシェ、今度あったら覚悟して下さいね。


「シエルとは飼い主とペットの関係でしかありませんよ?」

「またまたぁー」

 ここにもいました、人の話を聞かない人が。

「隠さなくても良いのよ? 私も同類だから! 私、獣人と付き合っているの」

「はぁ……」

 知っています。修羅場もばっちり見てしまいました。

「彼とね、近々一緒に暮らす事になったのよ……」

 昨日の問題は解決したのですね。上手くいって何よりです。

「で、獣人の恋人と同居するにあたり、アドバイスとかない?」

「……あどばいす……」

 困りましたね。私とシエルは恋人同士ではないので、何もアドバイスできることなんてありませんよ。

 このままではいけないので、話題を変える事にしましょうか……。


「アナナさんと獣人の恋人は、どのようにして出会ったのですか?」

 狙い通り、アナナさんは勢い良く恋人とのなれそめを教えてくれました。

「私、十年前にこの世界に来たのよ、外見年齢は三十代半ばってところかしら……ここの世界に来てすぐに保健所に捕まって城に引き取られた……そのとき私を迎えにきたのが彼だったのよ」


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