27:侯爵邸
本日は、セゾン嬢のお見合いの日であります。
私はと言うと、彼女との約束通り一緒にお見合いに付いてきてしまいましたよ。
だって、不安そうなセゾンを見ていられなかったのです。
王様の許可も頂きました……セゾンが。
端から見たら、ジャマ以外の何者でもないということは分かっております。
王様、セゾン、私、護衛の方々でセレアル侯爵邸へと向かいます。
セレアル侯爵は割と城の近くにお住まいでした。城下街のど真ん中に大きなお屋敷があります。
「やあ、待っていましたよ!」
全員で侯爵邸の客室に通されてしばらくすると、主である侯爵が鎖を引いて現れました。
鎖の先には首輪をした青年がいて、やる気なさそうにノロノロと歩いています。
あれがミエルのお兄さん、ミラネさんフラジエさん夫婦の二番目のお子さんなのですね。
ミエルと同じハニーブラウンの髪に菫色の瞳の儚げな青年です。年はセゾンと同じくらいに見えました。
彼は生まれてすぐに、セレアル侯爵に手渡されたそうです。なので、ある程度大きくなってから城に貰われたセゾンとは面識がありません。
「こちらがうちの人間、二十年くらい前に陛下から頂いた純正、ビスキュイだ」
侯爵は王様と同年代の男性で、白い頭に白い髭のヤギの獣人です。この二人は仲が良さそうです、あの王様が人間を譲渡するくらいですからね。
「ああ、元気そうでなによりだ」
王様、彼の持っている鎖には突っ込まないんですか?
私、鎖に繋がれている人間は初めて見ましたよ?
「こちらが、うちのセゾンだ。彼女もまた純正だ」
「そちらのお嬢さんは?」
侯爵は私の方を見てきました、そうですよね……見知らぬ人間がもう一人いたら気になりますよね……。
「ああ、セゾンの友人のネージュだ。セゾンが不安がっていたから一緒に連れてきた」
こうしてお互いを紹介し合っている間も、ビスキュイという青年は我関せずといった様子で窓の外を眺めていました。
「では、あとは人間同士で……」
王様と侯爵が席を立ちました。私も彼らに続きます……ん?
「ネージュ!」
先程からセゾンが私の腕を掴んで放してくれません。
いや、私がいてもお邪魔ですから!
「一緒にいて!」
えええええ。そんな珍妙なお見合い聞いたことありませんよ???
「え、えっと……」
私は助けを求めるように王様を見ましたが、王様がセゾンに甘いことを失念しておりました。
「よしよし、分かった。ネージュもセゾンに付いていてやってくれ」
こうして三人の奇妙なお見合いが始まりました。




