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25:リビングで

 前回のシエルの偵察の護衛というお仕事は、なかなか面倒なものでした。

 この国とお隣の国の関係が、悪くなっているそうです。隣国は、この国の国境を幾度となく脅かしているとか。

 今回も、無断で国境沿いの町に攻撃を仕掛けようとしていたことが明らかになったそうですが、調査に向かった人達のおかげで未然に防ぐことが出来たようです。

 隣国の侵略行為ために、王様やシエルの仕事は忙しくなっています。

 仕事がない時も、シエルは研究室に籠ることが増えました。

 私は魔法関係の仕事はできないので、休憩時にお茶を出したり、簡単な片付けや整理をしています。


「ネージュ……君はなんて素晴らしいペットなんだ! ペットにしておくのが勿体ないよ!」

 シエルは些細なことでも私を大げさに誉め称えます。これが過保護な彼の通常運転なのです。

 感極まった飼い主にきつい抱擁をされるのにも慣れてきました。

 シエルはそのままリビングのソファに座り、私を膝に乗せると満足げに微笑みます。大人しくしていると、後ろから頭や体を撫でられました。

 完全なるペット扱いなので、私も安心しています。たまに彼の手が際どい場所に触れるのですが、ワザとではないのでセーフでしょう。

 見上げると、金色の目が優しげに細められました。


「はぁ、こうしてネージュとずっと一緒にいられればいいのにね」

「……一緒にいるじゃないですか」

「三日も離れていたし、離れている間に事件があったから」

 ペットホテルの件ですね。

 大丈夫だと何度も言ったのに、シエルは未だにレザンさんの件を深く悔やんでいます。

「これから、泊まりがけのお仕事があるときは、私をどうするのですか?」

 出来れば、この家で留守番をしたいですが、前回はそれを却下されました。

 しかし、ペットホテルというのも心配です。オーガ・レザンさん事件で少しトラウマになってしまいましたから。

「その件なら大丈夫、陛下が城を使えばいいと言ってくれているから」

「……お城に滞在させてもらえるのですか?」

「城も少し心配だけどね」

 そう言うと、シエルは後ろから私を抱えたままソファに寝転びました。

 抱きかかえられたままの私も一緒にソファに倒れ込みます。ガッチリとホールドされて身動きが取れません。

「うー」

 不満げに唸ってみましたが、シエルは意に介さず……私を抱きしめる腕を離してはくれませんでした。


「城にいた間、陛下に困らされなかった? 見合いを勧められるとか……」

「大丈夫です。皆とは普通に仲良くなりました。ミエルは弟みたいですし、ショコラは友達ですし、シエルが心配するようなことにはなりませんでしたよ」

 シエルってば、娘を心配する父親のようですね。

 そんなに心配しなくても、精神年齢はいい大人なのでヘマはしませんよ。

「よかった……」

 シエルは安堵したようで、やっと腕の力を緩めてくれました。まだ、解放してはくれませんが。

 彼の腕の中は数少ない私の安らげる場所で、ペット生活も悪くないと思わせてくれます。

 ショコラはここを優しい世界と言いましたが、私にとってもそうなのかもしれません。

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