22:談話室
シエルはまだ帰ってきません。
明日、王都に戻って来る予定です。
王様の依頼を受けた彼は、隣の国に視察に出かけているのでした。
視察に危険が伴うかもしれないということで、シエルは彼ら視察係の護衛に付いているのです。
魔法使いという職種の人は、そういうお仕事もあるみたいですね。
「心配ないさ、無事仕事は終わったと連絡が来たから」
王様が休憩時間に訪ねてきて、人間用の談話室でシエルについて話をしてくれました。
ここは、主に人間たちが集まったり寛いだりするのに使う部屋のようです。
人間用の談話室ということで、当然他の人間も訪れています。
「アルトー! 遊ぼ! 遊ぼ!」
王様との会話の間中、セゾンが彼の背後で騒いでいました。王様はそんな彼女を叱りもせず好きにさせています。本当に人間が好きなのですね。
「ところでネージュよ、ミエルやショコラとはどうだ? うまくやっているか?」
……王様ってば、まだ余計なお世話を諦めない気ですか。あなたのお見合い作戦には乗りませんよ!
私は、彼に向かってはっきり答えます。
「普通です。二人に恋愛感情はありません」
だから、私たちのことは放っておいてくださいね。
「そうか……ミエルはともかく、ショコラは上手くやると思ったんだがなあ」
「ショコラは、今のところ、つがいを持つ気はないと言っていましたよ」
彼との会話を王様に教えてあげると、何故か妙な表情をされました。何なのでしょう?
「……そうか…………もう少し様子を見るかな……」
そんな残念そうな顔をしないでください。
どんな顔をされても、私もまだつがいを持つ気にはなれないのですから。
王様の後ろでは、相変わらずセゾンが彼にちょっかいを出しています。
彼の頬をツンツン突いたり、引き延ばしたり……恐れ多いことを。
「うむ……念のため、他の人間のお見合いについても検討しておくか。ちょうど、部下のところにセゾンくらいの年齢の雄がいたはずだ」
セゾンまでお見合いさせる気ですか? 王様……?




