表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/57

1:獣人の国

 気が付いたら、私は獣人が沢山歩いている国にいました。


 今も私の周りには、動物の耳や尻尾を生やした変な人間が沢山歩いています。とってもメルヘンです。

「ここ、どこ?」

 レンガ作りの家が立ち並んでいます。どこかの街だとは思うのですが……。

「ヨーロッパ?でも、一昔前の景色みたいだし、変な人達が歩いているし……」


 取りあえず立ち上がって周辺を歩いてみることにしました。

 立ち上がろうとすると、自分の手が泥だらけになっていることに気が付きました。手だけじゃなく、足も泥にまみれています。

 着ている服もボロボロで黒ずんでいて汚いです。私、こんな服着ていましたっけ?

「取りあえず、手を洗いましょう」

 近くに用水路が流れていたので、手を突っ込んで洗うことにしました。

「あれ?」

 澄んだ用水路の水に、知らない女の子が映っています。ぱちくり。

 私が瞬きすると、水に映った女の子も同じように瞬きしました。

「これ、私なの?」

 泥だらけで、全体的に薄汚れていますが、銀髪に白い肌でくりっとしたピンク色の瞳の、おとぎ話で見る様な可愛らしい女の子です。

「えええええええええええええええええ」

 何ですか、この可愛らしさは!年齢も十代に若返っているようです。私の面影はどこにも残っていません。


 そこまで来て、思い出しました。私は一度死んだのだと。



 私はアラサーOLと呼ばれる生き物でしたが、残業続きで過労死したのでした。

 ブラックと噂されるIT系企業で、朝から日付が変わるまで働いていました。

 安い給料でほぼ泊まり込みで毎日仕事をし、休日出勤なんて当たり前。ですが、私は真面目に一生懸命働いていたのです。

 その会社が全てで、他の会社に移るという選択肢は思い浮かびもしませんでした。


 最後の方は精神的にもかなりキていて、体の不調は勿論、独り言を言ったり、動植物に話しかけたり、我ながらかなり危ない人間になっておりました。

 事務所でも、ガレージで寝ている社長の犬に話しかけたことがあります。

「お前は寝てばかりでいいねぇ」と。本気で羨ましかったのです。

 犬に話しかけた日、私は久しぶりに自宅に帰って寝て、そのまま目を覚ましませんでした。



 そうして、気が付けば今の場所に立っていたのです。

 とりあえず、現状把握しなければ。近くにいる獣人に、この場所について聞いてみることにしました。言葉は通じるのでしょうか。


「あの……」

 たまたま近くを通りかかった獣人の女の人に声を掛けてみます。

 茶色の熊っぽい耳と尻尾があるマダムです。


 その女性は私を見ると、驚いたようにあんぐりと口を開けました。

「に……にんげん」

 言葉は通じるようですね、でも何だろう。熊のマダムはとても驚いています。


 次に彼女が言った言葉は衝撃的なものでした。

「野良人間よーーーーーー!!!誰か、捕まえてーーーーーーっ!!!」

「えっ?」


 野良って何ですか、野良って……。このまま立ってたらヤバい感じでしょうか?

 私は、動揺しつつもその場を逃げ出すことにしました。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ