17:迷子
セゾン嬢を無事に部屋に送り届けた後、私は探検を再開しました。部屋でじっとしているのは、やっぱり暇です。
しかし、行けども行けども廊下。同じような部屋、風景。
「あれ、ここは先程通りましたよね……いや、違う?」
嗚呼、情けない。
いい年こいて、迷子になってしまいました。運悪く、近くにメイドさんの姿もありません。
「さ、最悪……」
「何が?」
「うわあっ!」
背後にひょっこり現れたのは、チョコレートブラウンの髪に空色の瞳をした少年。
朝食の席にいたショコラという人ですね。外見年齢は、今の私よりも少しだけ年上に見えます。
「えっと……」
「もしかして、迷子かな?」
その通りです。恥ずかしくて、顔が真っ赤になりました。
「部屋まで送るよ」
「すいません……」
ショコラが部屋まで送ってくれる間、少し話をしました。
「へぇ、ショコラは五歳の時にこちらの世界へ来たのですか」
「そう。一応野良だけど、前世の記憶は殆ど無いんだ」
という事は、現在の年齢に加算して……実年齢は二十代前半ってところですか。
私よりも年下ですね。
五歳でこんな世界に放り出されて、さぞかし心細かった事でしょう。
お話をしているうちに、見覚えのある廊下に出ました。
セゾン嬢が寝ていた場所近くの廊下ですね。
「ショコラ、ありがとうございます。ここまで来れば、部屋に帰れます」
お礼を言って、彼と別れようとしました。彼にも用事があるでしょうし。
「いいよ、どうせ暇だし部屋まで連れて行く」
「え、でも……」
「それとも、ミエル以外の雄は部屋に入れてくれないの?」
「……!」
それは、今朝のミエル少年乱入事件のことですか。何でショコラがそんな事を知っているのですか。
「ミエルをつがいにするの?」
「……」
先程まで浮かべていたショコラの笑みが消えました……。




