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11:助け舟

「……ゴメンナサイ、ワタシマダ、結婚トカ、考エラレナイノデス」

「どうして? どうして? ねえ、どうして?」

 ああ、こっちが聞きたいです。どうしてこんな事になっているのですか? 私はどうすれば良いのでしょうか?

 両腕を固定されたまま質問ラッシュに耐えていると、扉が開く音が聞こえました。


「あーあ、やっぱりこうなったか」

 首だけで扉の方を振り返ります。

 そこには、先日お会いした赤髪の青年が立っていました。

「ソル!」

「よう、ネージュ」

 ソルは長い足でこちらに歩いて来ると、ミエル少年を引き剥がしてくれました。

「なにするの、ソル。邪魔しないで」

 ミエルはとたんに不機嫌になってしまいましたが。

「ネージュが困っているだろう、あまり強引だと嫌われるぞ?」

 ソルの言葉に、ミエルは黙り込みます。流石です、一緒に住んでいるだけあってミエル少年の扱いが上手いですね。

「いきなりで驚いただろう、陛下がコイツを焚き付けたのが原因なんだけどな」

「……あはは」

 日本人の得意な曖昧笑いでその場を凌ぎました。とても驚きましたよ。

「まあ、ミエルの方はもう一人と違って、ちょっと話が通じないだけで根は良いやつだから。程々に仲良くしてやってくれ」

 やはり、話は通じないのですね。前にお会いして時に、不気味とか言われてましたものね。

「ソル、どうすればネージュとつがいになれるの? アルトは俺とネージュを……」

「はいはいはい、あれは陛下のいつものおフザケだ。本気にするな」


 ミエル少年は、飼い主である王様の言葉に忠実です。中身など考えてもいないのでしょうね、まだ十代半ばなのだから。

 ソルと比べても、世慣れていない純粋さが目立ちます。思い込みの激しさもその表れなのでしょう。


 この世界で生まれながらにペットとして育てられると、人はこうなってしまうのでしょうか。



 ソルのおかげで、無事にお見合いを回避する事が出来ました。ミエル少年には申し訳ありませんが、一度しか会っていない相手(それも十歳以上年下)と結婚するのは無理な話です。

 あの後、ミエル少年は不本意そうな様子でしたが、あれ以上()()()について言及する事はありませんでした。


「本当に、あのオッサンは!」

 今は、シエルと王宮から家に帰ってきたところです。本日のお見合いの件について、しつこく言及されました。

「この世界で生まれた人間というのは、私の様な野良人間と、ああも違うものなのですね」

 シエルは荷物を棚に置くと、近くにある椅子に座ってこちらを見ました。私もシエルの近くのクッションに座ります。

「あの人間は『純正』の人間だったんだ……」

「純正?」

「この世界で生まれた人間の事を『純正』と呼ぶんだよ。野良と比べて飼いやすいから人気みたいだ……ああ、僕は勿論ネージュの方が可愛いと思うけれどね」

 純正……確かに、前世の記憶もなく純粋にこの世に生まれてきた彼らは『純正』と呼ぶにふさわしい存在なのかも知れません。ミエル少年も、度が過ぎるくらい真っ直ぐな人でした。


 シエルはクッションの上の私を抱き上げると、ブラッシングを始めました。

 彼といるのは楽です。この世界で彼と出会えて、私は本当に好運だと思うのです。

 そして、この生活が続けば良いと思います。

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