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10:獣人国産人間

 さて、再びシエルと王宮に来ています。

 この間と同じ部屋で王様と対面しました。王様は今日も頬を緩めて私を見ています。

 その王様の隣には、この間のソルとは違う人間がいます。

 紅い大きな高級ソファーの上に優雅に寝そべっているのは、サラサラのハニーブラウンの髪の美少年です。……王様、小出しにしてきますね。

 客の前で堂々と寝そべっている少年に、王様は注意をする様子もありません。

「陛下……」

 何故かシエルの機嫌が悪いです。さっきまではそうでもなかったのですが……。

「ん? 何だシエル、そう怖い顔をするな」

「……見合いの件は断ったはずですが?」

 見合いというのは、この間の話の続きですか。ということは、この少年は……。

「ああ、分かっている。無理には進めないさ。取りあえず、年齢の近い者同士を顔合わせさせてみただけだ」

 王様、それを見合いというのでは……?

 まあ、「結婚を前提に」とか「今すぐ付き合え」とかではないので、私は気にしませんが。

 シエルはものすごく嫌そうな顔をしています。王様は諦めた様に息を吐き出しました。

「せっかく適齢期の雌を持っているのに勿体無い……」

 むっ……ちょっと嫌な言い方ですね。余計なお世話なのですよ!

 自分の事は自分でなんとかしますから、放っておいて下さい。……まあ、放っておかれた結果があの前世なので、強く言えないのですがね。

「お前達、悪いがまた席を外してくれるか?」

 王様の言葉に、少年が気怠そうに起き上がりました。スタスタとこちらへ歩いてきます。

「え……」

 少年は私の腕を引っ掴むと、歩調を緩めずに隣の部屋へ、スタスタ歩いていきます。

 私は少年に連れられて隣の部屋へと向かいました。

 振り返ると、シエルが今まで見た事が無いような顔で、少年を睨んでいました。……怖いです。



 少年と一緒に隣室に入りました。

 この部屋も、客室程ではありませんが十分な広さがあります。

 部屋の中央には、客室と同じ大きさのソファーが置いてありました。先日、ソルと向かい合わせで座ってお話ししたオリエンタル柄のソファーです。

 少年は私の腕をつかんだまま、一直線にソファーに向かいます。

 そのまま、ボスンと私をソファーへと座らせて、彼はその隣に陣取りました。ハニーブラウンの髪がサラリと揺れます。

「あ、あの……初めまして」

「……」

 とりあえず、話しかけてみたのですが反応がありませんね。どうしたものでしょう……。

 まずは、自己紹介ですよね。気を取り直して話しかけてみました。

「私、ネージュと言います」

「知ってる。アルトに聞いた」

 アルトとは誰でしょう? 王様ですかね?

「……そうですか……。あなたのお名前は?」

「……ミエル」

「ミエル、宜しくお願いします」

「うん」

 彼は口数が多くはないようです。

「ミエルは転生者ですか?」

「……違うよ?」

 ということは、この世界で生まれた人間という事ですか。ソルの言っていた野良じゃない人間のうちの一人という事ですね。

 そうこうしているうちに、隣にいるミエルがポスンともたれ掛かってきました。初対面なのに、距離が近すぎやしませんか?

「あ、あのっ……ミエル」

 戸惑いつつも、ミエルから距離を取ろうとします。彼の翠色の瞳が不満げに眇められました。

「どうして離れるの? ネージュは俺の()()()なんでしょう?」

「つがい……?」

「アルトが、俺かショコラをネージュのつがいにしたいって言ってた」


 あのオッサン! シエルではありませんが、思わず心の中で叫んでしまいましたよ。シエルのお断り文句を完全無視してくれちゃってますね。

 それに、こんなイタイケな男の子をも騙すなんて!

「あのですね、王様が言われていた事は全て仮定の話であってですね……」

 ミエル少年を傷つけない様に言葉を選びつつ説明をします。この子自身に罪は無いのですから。

「アルトが言った事は、絶対だよ!」

「ええっ!?」

 話を途中でぶった切られましたよ! 今までに無い強い口調で。

「アルトが言う事には従わなきゃ……皆そうしてる」

 ……王様だから……ということですよね? それとも飼い主だからということでしょうか?

 あ、また腕を掴まれてしまいました。

「でもですね、ミエル自身の気持ちもあるでしょうし……」

「どうして? アルトが言っているのに……ネージュはショコラの方が良いの? でも俺はショコラに君をあげたくない」

 …………話が通じません……。

 でも、ここは忍耐強く説得です。私は大人、私は大人…………。


「ちょっと待って下さい、ショコラって言う人については知りませんが、王様に言われたからって簡単に決めてしまって良いものではないと思うのです。生涯の伴侶ですよ?」

「? そうだけど」

 キョトンとされましたよ。キョトンとしたいのは私の方なのですがね……。

「その、好きな人とかが現れた時に……ミエルだって困るじゃないですか」

「ネージュが好きだよ?」

 ああ! 言いたい事が全く伝わらないというのは、何とモドカしいのでしょうか!

 ふかふかソファーの上で頭を抱えて唸っていると、ミエルがもう片方の腕も掴みました。自然と彼と向き合う様な格好になります。

 綺麗なお顔ですね。でも私は年上の方が好みなのです。なんてったって、アラサー女ですからね。二十代後半からで無いと受け付けられませんよ。

 なので、まだ十代の少年を伴侶になんて出来ません! NOT犯罪!

 しかし、私の意思とは無関係に、ミエル少年は爆弾発言をかましましたよ。

「俺と、つがいになって」


初、ルビ振りに挑戦してみましたが、これで合っていますでしょうか?

とても不安。

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