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超短編

違う日々。

作者: しおん

女の子は言いました。


毎日楽しいです。




男の子は言いました。


いつだって同じです。






「ほら、起きなさい!学校に遅刻するわよ」


私はお母さんの怒鳴り声で目を覚ました。時計は遅刻ギリギリの時間をさしており、


「やばい遅刻だ!お母さん、なんでもっとはやくに起こしてくれなかったのよ」


と、お母さんに文句をたれるのは毎日のことで、


「いつもそう言ってるじゃない。それで、朝ごはんは食べていくの?」


「いらないっ」


バタバタと慌ただしく支度を終わらせると、玄関に衝突してしまいそうな早さで突っ込んでいくと、私はそのままの勢いで扉を開いた。


「いってきますっ」





朝日が眩しいな。そう思いながら俺は、うっすらと目を開いた。起きたくないというのが本音だが、いつまでも布団に甘えているわけにもいかないので、仕方なく心地よいぬくもりから脱出する。


階下にあるダイニングへ足を運んでも、そこに食事と呼ばれるものが用意されているはずがなく、とりあえず冷蔵庫の中をを何か食べるものはないかと物色したが、なにも見つからないというのはいつものことだ。


朝ごはんを買うついでに、学校にでも行くかと生活感の欠片もない家を後にした。





バタバタと廊下を駆け抜けて、目当ての教室に勢いよく飛び込むとガヤガヤとした心地の良い雑談の音が耳に入ってきた。どうやら学校には間に合ったようだ。安堵にため息を漏らしながら席に着くと、「おはよう」と、お決まりの挨拶がとんでくるので、私はいつものように「おはよう」と、明るく言葉を返した。


少し膨らんだカバンから荷物を取り出してまとめて机へ押し込むと、足早に友達の元へと足を運び、自然と会話の中にまじっていく。昨日のドラマの話や先生の愚痴。話題は多種多様で、話もあちらこちらへとんでいく。聞き慣れたチャイムの音と、担任が教室の扉を開けた音を合図に、まとまって話していた私たちはそれぞれ自分の席に向かって散っていった。





コンビニで買ったパンを手に教室のドアを開くと、誰もいない冷たい空間が広がっていた。机と椅子が行儀良く並んだだけの場所で、バリバリとパンの袋を破いた。


愛情のないそれをのろのろと口に運んでいると、遠くから部活動の朝練の声が聞こえてくる。生憎、部活動なんてものに参加していない俺に、こんな朝っぱらから共に汗水ながすような仲間がいる訳もなく、クラスメイトたちが部活から戻ってくるまでの暇な時間をどう潰そうかと思案しはじめた。





授業が終わって、HRが終わって、放課後という遊ぶための時間がやってきた。今日はどこへ行こうか?何をしようか?そんなことを話しながら友達と帰り支度をする。


駅前に新しいクレープ屋さんができただとか、好きな俳優が出演してる映画を見に行こうだとか、とりあえずカラオケにいきたいだとか。やりたいことなど山のように出てくる。いつも違うことをして、毎日楽しそうに顔をゆがめて、目新しいものを見つけたらとりあえず会話にのせていった。外が暗くなってある程度遊びに満足したらそれぞれが家路につく。月に見守られながら家のドアを開け、夕食のかおりをたのしみつつ玄関へと足を踏み入れた。


「ただいま」





授業なんていう面倒なものが終わったら、財布と携帯だけがおさまっているカバンを肩に引っ掛け適当に街へ足を向けた。


何の目的もなく道沿いの店先を眺めながらぶらぶらと歩くだけで、店内でものをきちんと見たりはしない。ただ、目についたものを一瞥しては、次のものへと視線を動かしていくだけだ。


お腹がすいたら、その時目に入ったお店で適当なものを食べるし、歩き疲れたらそこら辺のベンチに腰掛けて一服するだけ。日がくれて辺りが暗くなったら、何も考えずに家へと帰るべく歩を進めた。街灯の明かりを背に浴びながら人気のない殺風景な家に着くと、無愛想な鍵でドアを開き、足早に自分の部屋におさまった。





そうして女の子と男の子の一日は、終わりを迎えた。


読んでくださって、ありがとうございます。


感想など、いただければ幸いです。

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