魔女の家
馬車をでると、朝のよく澄んだ空気を胸一杯に吸い込むと、 ゆっくりと深呼吸を数回してから、魔女に弟子入にしてくれる様にお願いした。
すると、拍子抜けするほどあっさりと、そのつもりで連れて来たと言われたのは凄く嬉しかった。
川で水を汲んで来て、 石で囲んだだけの簡単な竈に火を入れたら、早速湯を沸して朝食を作る手伝いをした。
食事をすませると、さっそく出発した。
森を抜け開けた場所に入ると、夕焼けに照らされた魔女の家が見えてきた。
魔女の家は、その半分が驚くほど巨大な木の根に抱えられていてる。
一部は完全に同化をしている様にさえ見える。
一体どれほどの時間をかければこの様になるのか想像も出来ない。
巨大の迫力で見落としていたが、庭の草花も手入れが行き届いている。
魔女の家に着くと「お帰りなさいませ、お師匠様」とポニーテールを小気味よく揺らしながら女の子がやってきた。
腕輪をして要るので、少なくとも年齢は15才以上ではあるはずなのだが、どこか幼く見える。
目がパッチリとして大きいからだろうか? それとも、あまりににも控えめなサイズの胸だからかは判断出来ない。
「ただいまエミリー」
「先生またそんな変身して、悪い事してたんですか?」
「まったく、この子ときたら、人聞きの悪い事をお言いで無いよ」
「悪党から、ホ・ン・ノ.少しだけ上前をはねるだけさ」
そう言いながら変身を解いた魔女は、瘡蓋でもとれる様にボロボロと表面が崩れ落ちて消えていった。
すると、中から現れたのは、アラフォーと言った雰囲気のエルフだった。
モデルかダンサーの様にスラリとして手足も長くなり、わずかに微笑むその顔には、品がある様にさえ思えるから不思議なものだ。
「お師匠様、そちらの男性は誰ですか?」
「ああコイツかい? 違法奴隷だったんだが、魔法の才能を持ってる様だったし、買ってきたのさ」
「お師匠様、違法奴隷は流石に不味いですよ」
「だから弟子にするのさ、お前の後輩て事で色々と教えてやりな」
「ほら、こういう時は自己紹介するんだよ」
「そらの つばさ15歳です、よろしくお願いします」
「私は、魔女様の一番弟子で エミリー ポニーテルテです、エミリーと呼んで下さい」
「自己紹介も終わった事だし、私が家の中を一通り案内するから、食事の支度をしておくれ。」
こうして、お師匠様に家の中を案内してもらった。
玄関から入りすぐの部屋は広いリビングルームになっている。次の部屋はファミリールームで、とてもくつろげそうな空間だ、その奥はトイレになっていた。
更に横の部屋はダイニングルームでその奥にはキッチンがある。
キッチン横にはヌックもあり軽食を食べられる、その奥には、お風呂があった。
キッチンまで戻ると階段を挟んで更に奥に行くと魔法の研究施設と図書館の様に本が沢山有る部屋がある。
魔法の研究施設にある機材や薬には危険な物が沢山有るから触るなと念入りに注意された。
二階は個人的なスペースでお師匠様の部屋とエミリーさんの部屋の他3部屋があり、一つを俺の部屋にしていいとの事だ。
師匠様の部屋は一番奥で、その手前がエミリーさんの部屋だ、俺はエミリーさんの部屋の隣を選んだ。一番階段に近い部屋で下からよい匂いがしてきた。
部屋の確認も出来たし、ダイニングルームに行くと既に料理が完成していた。
「良かった、ちょうど料理が完成したので、呼びに行こかと考えてました」
「いい匂いがしていたからね、ちょうど頃合いだと思ったよ」
そう言うとお師匠が席についた。
俺とエミリーさんも席につき、食事をした。
豚ロース肉の薄切りを二枚に重ねて焼いたお肉を、卵とチーズを溶いたものにくぐらせて、丁寧2~3回焼いたんだろう。
卵の黄身が黄金色に輝いて見える。
一口食べると、豚の旨味と白胡椒の香りが広がってくる、薄い肉を重ねてあるのでとても柔らかく、卵のおかげでしっとりと仕上がっている。
2つ目は、手元に置いてあるソースをつけて食べる。
ゆむきしたトマトをみじん切りした玉ねぎと炒めて甘味に干したプルーンを裏ごしして入れたのだろう。
トマトベースにウスターソースを少したらした感じのソースでお好み焼きにも良く合いそな味わいだ。
当然付け合わせのキャベツの千切りとも相性はバッグンである。
パンに挟んで食べるとコレがまた堪らないのだ。
トマトベースのソースが程よくパンに染み込んだとこなど最高に旨い。
余りにおいしく、忘れていたが、スープを飲んでいなかった。
ジャガイモのスープだ。
あえて崩したであろうジャガイモがトロミを出し炒めた玉ねぎの甘さと合わさった旨さは何とも言えない。
パンを浸して食べると具とスープのバランスが崩れるのでしないが、最後の一口だけは、具をパンでかき集めて食べた。
至福の時が終わると、洗い物を済ませた。
明日からは、魔法の修行だ