冒険者の宿
無事冒険者カードを手に入れた俺は、今夜の宿を探す事にした。
「たびたび、申し訳無いですが、どこか安い宿泊施設は無いですか?」
「そうですねー ナギサと言う冒険者の宿が、食事も美味しくて良いと評判ですよ」
受付のお姉さんに、場所を教えてもらい、ナギサへと向かった。
こちらの世界は、地球と比べたら旅行する人間は少ない。
巡礼をする人も居るが一生に1回か2回有るかどうかだ。
そう言う人間は、教会に泊まるし、 裕福な人、例えば貴族なら、別荘を使うケースが多いのだ。
よって、地球で言う、ホテルや旅館を使うのは商人と冒険者と言う事になる。
この町は中型の町の規模なので、お姉さんがどの宿がいいか、考えなくてはいけない程度には、宿は有るみたいだ。
ひょっとしたら、お師匠様たちが、魔王を倒したおかげで、平和になったので、一般常識よりも、旅行者が多いのかも知れない。
そんなムダな事を考えながら歩いていたら、宿の看板を見つけた、冒険者の宿ナギサと書いてあるので中に入った。
「いらっしゃいませ、お食事ですか? それともお泊まりで?」
エプロン姿が良く似合う女の子だ。
「泊まりたいんだけど、料金を教えて貰えるかな?」
「お泊まりね、お一人様なら朝食も付いて、銀貨40枚よ、因みに朝食無しでも同じ金額だからね」
良い笑顔だ、銀貨40枚て事は4千円て事か、安いかどうか良くわからないが、多分安いんだろう。
「了解、なら一週間泊まるよ」と金貨3枚を手渡してた。
「ちょっと待って下さいね」くるりと回転して「ママ、お客様泊まるて」厨房の方へ元気に走っていった。
厨房の奥からでてきた、さっきの女の子と一緒に出てきた女将さんは、夢と希望がタップリと詰まった胸をもつ女性だ。
女将さんを見て、この宿は、間違い無く安いと確信が出来た。
いやー例え高くても、この宿に泊まりたい!!
「いらっしゃいませ、奥にいて気がつかなくてごめんなさいね」
「ナギサ、このお兄ちゃんを部屋に案内してあげて」
「ハイ、ママ」「お兄ちゃんこっちよ」
お釣りを貰うと、部屋へとナギサちゃんが案内してくれた。
「お兄ちゃんは、この町は初めてなの?」
「そうだよ、この宿は、ナギサちゃんとママだけで営業してるの?」
「朝とお昼は、私とママとパパだけだよ。 夜はバイトのお姉さんが何人か来るよ」
「そうなんだ」
「お兄ちゃん、この部屋よ、はい鍵」
「ありがとう」
鍵を受け取り中に入ると、シンプルな部屋だった。
テーブルとイス、それにベッドと足掛け、鎧や剣をしまう台があるだけだ。
窓からの城壁がみえ、景色はなかなかの物だ。
因みにお風呂は残念ながらなかった。
宿の確保も出来た事だし、町を散策する事にした。
出来れば武器屋や防具屋を覗いてみたいのだ。
さっそく出かける事にした。
ナギサちゃんに鍵を渡して、武器や防具のお店を聞いてみた。
「お兄ちゃん、新人でしょ? 鎧は高いんだよ、お金有るの?」
「お金は余りないから、下見だよ。 見るだけならダダだしね」
「そっか」
凄くいい笑顔で返事をされると微妙にへこんでしまう。
とりあえず、武器や防具のお店が沢山ある商店街の場所を教えて貰ったので行ってみることにした。
適当な店に入り剣や防具を見ると、剣はそれなりの金額だが、防具は異常に高いのだ。
安い防具もあるにはあるのだが、とても命を預ける気にはならない防具ばかりだった。
因みにこちらの世界では。
剣は、金属製が主流なのだが、防具については、モンスターの皮で作られた鎧が一般的に使われている、鉄で作るよりも、丈夫なうえに軽いからだ。
商店街をぶらぶらしていたら、暗くなっていたので、宿に帰ってきた。
一階の食事スペースは、既に食事客で賑わっていた。
「あ、お兄ちゃんおかえりー。 食事は済んでるの?」
「まだだけど、席が無いみたいだね」
「あそこに、相席出来るか頼んでくるね」
ナギサちゃんが、両手を丸くあわせて、OKサインを出している。
相席をさせてくれたのは、この宿の常連の女性冒険者たちだ。
2人の内1人は、冒険者カードを作る時に居た受付のお姉さんだった。
「やっぱり、新しいお客さんて、つばさ君の事だったんだ」
「なに? ナオミ知り合いなの?」
「知り合いて言うか、今日冒険者登録した子よ」
「なんだ、てっきり新しい彼氏かと思ったのにな」
「いくら私でも、そんなに早く吹っ切れ無いわよ」
ガールズトークについていけずに、固まって居ると、日替わりの夕食が運ばれてきた。
俺は銀貨2枚を支払い夕食を食べた。
「そう言えば最近、町の近くでゴブリンを見かけたて、情報が何軒あるのよねー」
「まさか、ゴブリンの巣でも出来たんじゃない?」
「それは、どの辺りなんですか?」
「今日の報告では、町の周りにある、畑に水を送る水路で見かけたらしいわよ」
「単独で迷い込んだのならいいけど、もし巣があると危険だから行ったらだめよ」
「ちょっと確認するぐらい大丈夫ですよ」
明日は、ゴブリン退治に行く事を心の中で決めてた。




