ほろほろ月
掲載日:2026/05/03
眩しくなる日差しは止まない雨に滲む
言葉にならなかった心
わかりたかった心
わからなかった心
追い付けなかった言葉
あのひとのように潔くはいられなかった
向かい風の中を走る自転車
運動場を駆ける足が立たせた砂埃
龍のように風にきえてく
目が紅い理由 沁みた理由
水溜りの中に映して
風と雨と紅い目でさがした
どこにもいなかった
真夜中の霧 細やかに流ゆく雲河を透かして灯る月
肩をたたいて呼び止められなかった幻は
「あなただって幻だ」と言う
さようなら 互いに幻なんだね 僕らはみんな
瞼の中の水溜まりは記憶の光を湛えて
浮かぶ蜜の葉脈からほろほろと溢れてゆく雫の肌に
刺されたまま止まない雨に駆けてゆきたいただひとつの想い
こんなわたしにありがとう 沢山沢山ありがとう
この言葉しかないけれど 動けぬままに
情けなく終わりを想う
月の頬を伝う雨 月の頬を伝う雨
咲夜はね さようなら さようならの満月だった
さようならが夜咲く花なら
ほろほろほろほろと月の頬を撫ぜる潮風をぬるませてゆく




