プロローグ
この世界は一つの丸い形の大陸がある。グランド大陸と呼ばれ、丸をちょうど半円にするように帯状に広がる森‐聖なる森‐がある。北側に魔族、南側に人族が住んでいる。魔族と人族は争っているが聖なる森が防波堤になり、互いの進行を妨げている。
帯状に広がる聖なる森の中央にエルフの里がある。偉大なるエルフの族長であり大賢者のティターニアの元、百に満たない数のエルフが暮らしている。エルフの里を全体を屋根のように覆う巨大な霊樹レティシエルが鎮座している。エルフの寿命は200年ほど、一番永く生きている族長も生まれた時から巨大なレティシエルを覚えている。一体樹齢何年か、不明である。
エルフの里の家は木そのものである。霊樹レティシエルに頼むと木の根が動き屋根と床を作り出すのだ。頼み込むと椅子などの家具も作り出す。エルフ全員が霊樹を尊敬し崇めている。族長の家は幹の穴を利用しており、部屋数は多く一部屋一部屋が大きめに作られている。そして、一室を集会所として利用している。広い集会所であるが、今は2名のみ。族長が上座に座り、その前に後ろで髪をひとくくりにした女エルフが膝をついている。
「ティターニア様、ご報告申し上げます。斥候からの報告によると、南方向からこちらに向かってくる人族の軍団を発見致しました。その数1万ほどと。」
報告しながらも額から流れる汗が松明に照らされて煌めいている。
「そうか…。ついに来たか。欲も数も多い人族が、この地を求めるのは当たり前のこと。しかし数が多い、私が前に出よう。お前たちは地下穴に潜り身を潜めよ。」
そう告げた族長ティターニアはすっと立ち上がる。長い銀髪と冷ややかな長い切れ目、身長180以上のしっかりとした体躯を持つ。エルフは全員美形であるが、ティターニアはその中でも特段と美しい。
「お待ちください、ティターニア様!無礼を承知で申し上げますが、おひとりで1万の軍勢を相手にするのはいかに族長が強いといえど無謀であります!ここは撤退いたしましょう!」
「ならぬ。やつらの狙いは私だ。安心しろ、霊樹レティシエル様のご加護が我々を守ってくださる。…あとのことは任せた、レナがみんなを纏め上げて導いてくれ。」
「族長…!そんな…!」
「では、生きていたらまた会おう。」
ティターニアはそのまま歩き集会所を後にした。
一歩出たところで木の壁に手を当てる。
「レティシエル様、お願いします。どうか、里の皆を御守りください。」
そして振り返ることなく南に向けて歩き続けた。
残されたレナの頬からは汗とは違う水滴が滴り、床に落ちた。一拍を置き、立ち上がると里の皆を集めるために駆け出した。
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聖なる森 深部
人族対大賢者
大賢者による先制攻撃、大規模破壊魔法により5割の減少。その後も自然を利用した立ち回り、中規模破壊魔法による攻撃で、人族を9割ほど撃退した。しかし、残り1割残った人族が厄介だった。
ティターニア視点
軍勢の後方に控えていたのは人族の中でも有力なものたちだったのだろう。…こちらが大規模破壊魔法を使用すると見込んで後方に下げ、我の力を削った後に強力なものをぶつける。嫌な作戦だ。
魔法の連発により魔力の枯渇が起き、体力も限界に近付いている。
右腕は消し炭になり、身体には幾本の矢が刺さっている。血も流し過ぎた。
だが、我がここで負けるわけにはいかない。里に近づけるわけにはいかない。残り1000人ほど、手練れは50人ほどか。
我の近くにわざとおびき寄せて、自爆を行えば全滅とはいかぬまでも大きく数を減らせるであろう。きっと里の皆でも十分勝てる…。
ふと気が付くと、足首に木の根が絡みついていた。敵の拘束魔法かと思ったが、敵意を感じない。
「なんだ…?」
目を凝らして見ると淡く青色に輝き、同時に己の魔力が増えているのを感じる。まさか、魔力譲渡が行われている…?!
「まさか、これはレティシエル様…?いえ、いけません!魔力譲渡は己の生命力を渡すと同義、レティシエル様が枯れてしまいます!」
その時、ティターニアの脳内に直接声が聞こえてきた。
ーティターニア、貴方を生まれた時からずっと見つめていました。ここで死んではいけません。あなたは里を護るものです。私の残ったほんの少しの力を貴方に…ー
「レティシエル様、レティシエル様…。我の力が及ばないばかりに、誠に申し訳ございません。」
魔力譲渡が進むにつれて枯れていく木の根を見つめながら、ティターニアは涙を流した。
そして、人族に向き直る。人族を写すその瞳は、一切の光が消えていた。
霊樹レティシエルは永い樹生を終え、枯れた。
霊樹レティシエルは最後にこう思った。
ーきゃっ、ついにティターニア様の一部になれちゃった…!ー と。
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樹の魂が転生してエルフの族長に嫁入りする物語です。
族長は霊樹の魔力により進化し、エンドエルフとなっています。
1000年後に進みます。
族長は激人間嫌い、樹はやや気持ち悪い思考をしている予定です。




