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恋愛短編集

終わる恋と始まる恋

作者: 月影 鈴夜

葉月君と咲菜ちゃんの恋物語。

私は好きな人がいる。その人は明るくて素敵なの。だけど私は知っている。


彼の好きな人を。なぜなら彼の好きな人は私の友達だったからだ。


彼から相談を受けた時はショックで苦しくて上手く笑えていたかわからない。


だけど微笑み手伝うと言ってしまったのだ。私は今までこんなにも頑張った。


でも、この恋は叶いそうもなかったのだ。私は稲葉いなば 理紗りさ


彼は栗林くりばやし 葉月はづき。中学二年生。同い年だ。


友達は柏木かしわぎ 咲菜さな。以下略。咲菜はかわいい。


葉月君が好きになって当然だ。私はどうしていつもこうなのかな。


一番になれない恋ばかりしてしまう。どうしてなのかなって思っている。


この話は彼と出会った日からこの恋の結末まで語ろう。


私はもう二十歳。だけど今でもこの恋が忘れられないから語るね。


出会ったのは中学の入学式だった。彼と席が隣だったの。


どうして隣だったかというと私が出席番号が四番だったの。


彼が十番だった。席は六列で出席番号順に座っていくから隣になったの。


偶然でしょ?この偶然が私を中二の時に苦しめる事になったの。


彼とはすぐに仲良くなった。他愛もない話をして盛り上がったけ。


話しているうちに彼がLINEを交換しようと言ってくれた。


そこからは家に帰っても彼とLINEで話したりしたよ。通話だってしたよ。


本当に幸せな一年だった。好きになってしまうのは仕方ないよ。


こんなにも話したもの。私ね、男子と話した事、全然なかった。だから尚更。


そして中二になった。咲菜とはクラスが離れたよ。葉月君とはまた一緒だった。


今回は隣の席にはなれなかったが当たり前だよね。だけどそんなにも遠くない。


私はこの時にはもう気づいていた。自分が葉月君が好きだと…。


だから、毎日話しかけた。くだらない話でもいいから葉月君と喋りたかった。


こんな気持ち初めてだった。今までの私は意味のない話がめんどくさかった。


だけど…彼と出会い私は変われた。前よりも明るくなれた。彼になりたかった。


彼に憧れていたの。この恋が叶わなくてもいい。だから彼の傍に居たかった。


なのに…そう思っていたはずなのにショックはおきた。


「なぁなぁ稲葉。ちょっと相談があるんだけどいいか?」と彼が言う。


私はいつものように明るく笑って「いいよ!」と言う。葉月君が話し始める。


「俺、柏木さんが気になっているんやけど手伝ってくれん?」と言う。


頭が真っ白になる。呼吸が苦しくなる。一分間くらいフリーズしていただろう。


ショックで動けなかった。だけど…私は笑って「いいよー!」と言った。


なぜか葉月君が俯く。栗色の髪がさらさらと動く。その仕草すら好きだった。


というかなんで葉月君が下を向くのかわからない。私が傷ついているのに…。


彼はすぐにパッと笑顔になり「サンキュー!」と言った。


「じゃあさ、俺と柏木が仲良くなれるようにどっか遊びに行こうぜ」と彼が言う。


本当に唐突な事ばかりで辛かったけど葉月君と私が遊べるかもしれないのだ。


なら笑顔でOKできた。彼が立てた計画はこういうものだった。


葉月君と私と葵君と咲菜の四人で映画を見に行く。その後ショッピングをする。


プレゼント交換を最後にして誰が一番プレゼント選びが上手か投票する。


という内容だった。楽しそうだねって私が言うと葉月君は複雑そうな表情だった。


葵君というのは門脇かどわき あおい。今、席が隣な人よ。


葉月君とめちゃくちゃ仲の良い人だよ。きっとその人にも相談したのかな。


そうして時は流れていく。葵君と私は結構仲良くなった。


そして、あの作戦は実行される事が決まった。実行日はクリスマスイブ。


私はもう受験の事とかで頭がいっぱいだった。二年生で一番大変な時期は超えた。


今からは三年に向けての受験勉強を頑張っていた。期末テストはやばかったから。


葵君は結構頭が良くてしょっちゅう教えてもらっている。


今日も教えてもらう為に彼を家に呼んでいた。なぜか葉月君も来た。


まぁいいや。嬉しいし。咲菜が居ないのも嬉しかった。私って最低だね。


友達なはずなのについ嫉妬して嫌になってしまう。咲菜も葉月君が好きらしい。


私はその事を誰にも言っていない。言いたくなかった。バレてほしくなかった。


そして、咲菜には応援していると言ってしまった。私だって好きなのに…。


そう言えたらどんなに楽だったかな。そしてクリスマスイブは来た。


朝から家を出る。待ち合わせ場所に行くと葉月君が居た。


私は「おはよー!」と声をかける。彼が振り向き微笑んでくれる。


やっぱり好き。どうしようもなく葉月君が好き。


この想いはきっと今日、終わる気がした。


きっと今日二人は付き合うのだろうと思った。どっちかが告白するのだろうな。


葉月君かな。咲菜は大人しいから告白なんて大胆な事しないだろうな。


そんな事ばかりが頭を廻っていく。泣きそうになるよ。好きなのに。


上手くいかない。彼が好きだから今まで気にもしなかった髪とか手入れしたのに。


毎日頑張ったのに…。葉月君の栗色の髪がさらさらと風に揺れる。


その姿に私は一瞬、好きだと伝えてしまいそうになる。危なかった。


言わずにすんだのは咲菜が来たから。葵君も走って来る。黒髪が風になびく。


涼しい顔して走っている葵君はとてもクールだった。私は元気を出して笑う。


そして、電車に乗って映画館ショッピングモールに着く。


まずは映画館に向かう。映画館は最上階にあるようだ。


ポップコーンやドリンクを買って座席を選んでチケットを買う。


感動系の映画らしい。隣は葵君と葉月君だった。咲菜は葉月君の隣で角だ。


きっと傍から見れば私達ってダブルデートみたいに見えるのかな。


こんな複雑な思いをもった少女がいるなんて思わないだろうな。


映画の後半はとても感動的で私は号泣してしまった。ハンカチで涙を抑える。


その時横からティッシュを渡された。葉月君だ。一瞬ためらいでもすぐ受け取る。


鼻水をかむ。泣きすぎているようだ。私ってこんな涙もろかったかしら。


映画の内容のせいよね。だって主人公の女子が片思いの男子に恋愛相談される。


その恋の相手は自分の友達だった。ショックで言葉を失う主人公。


だけどいいよと言ってしまう。そしてダブルデートをする。


デートが終わり帰ろうとした時だった。友達が彼に告白する。


彼は喜んでOKする。その後主人公は今日伝えなきゃと思い二人きりの時に伝える。


彼はごめんと言いもっと早く言ってほしかったなと心の中で呟いていた。


そして時は過ぎて…-「おい稲葉」と葉月君に言われて我に返る。


気付くと昼ご飯を食べている最中だった。プレゼント選びはまだ途中だ。


葉月君が私をじっと見つめてくるから緊張する。どうして私を見るのよ!


と突っ込みたくなる。葉月君は「そうだ。柏木一緒にプレゼント探そう」と言う。


咲菜とプレゼント選びってどういう事?だってプレゼントって咲菜に渡すのに…?


私が不思議そうにしていると葵君が「理紗ちゃんは僕と回らない?」と聞かれる。


笑顔で頷くと葵君はホッとしていた。そっか、そうだよね。二人きりにするのか。


これも作戦の一つって事かな。もしかしたらこのタイミングで告白するのかもな。


私が葉月君を見ていると葵君は「ずっと思ってたんだけど…」と何か言いかける。


だけど黙り「二人を尾行する?」と聞かれる。ためらいながらも頷いた。


そして私達は尾行した。二人は人気のない所に行く。やっぱりと私は思った。


咲菜が「ずっと前から栗林が好きだった。私と付き合って下さい」と言う。


答えなんて決まっている葉月君は喜んでOKするだろう。


葉月君は固まっていた。一瞬髪で顔が陰った。でもすぐにパッと笑顔になった。


そして「いいよ」と言った。俺も好きだったとかは言わなかった。シンプルだ。


私は葵君と二人でその光景を見つめていた…。そして私の恋は終わった。


叶わなかった。もう二十歳だ。あれから六年が過ぎた。私はあの日泣いたっけ。


泣く事すらできなかったけ。中三になって葉月君とはクラスが離れた。


そして疎遠になった。葵君とはまた同じで修学旅行の夜、告白された。


私はOKした。だけど、中学を卒業するとあまり会わなくなってしまった。


今でもLINEはよくするけどね。お互い忙しいから。それに…


結局まだ葉月君が好きなままだから。心の奥底ではいつも葉月君を呼んでいる。


咲菜と葉月君は高校の時、別れたと言っていた。葉月君から振ったらしい。


理由は咲菜の事が好きになれなかったとかまだ好きなままの奴がいるとか。


そんな事を言われたと咲菜が泣いていた。その話を葵君にすると苦笑していた。


まるで、何もかも知っているような感じだったな。今日は中学の同窓会だ。


久々に葉月君に会えると思うと胸が高鳴ると同時に苦しくなる。


葵君と私は今付き合っているのかいないのか曖昧だ。それも確かめたいな。


そんな思いで同窓会に出る。葵君は相も変わらず黒髪美少年だった。


葉月君は-あっ!栗色の髪がさらさらと揺れている。私の傍に来るとこう言った。


「稲葉、俺はお前がずっと好きだった」


衝撃と嬉しさと複雑な思いで固まってしまう。どういう事なの?


私はあの日嘘を吐かれていたの?どうして嘘を吐いたの?


葉月君の手が私の肩を掴んで「落ち着いて聞いてくれ」と言った。


私は動揺しながら頷く。彼は安心したように話し始める。


「俺さ、柏木が好きなんて一度も言ってない。


お前が勝手に勘違いしていただけだろ。何故付き合ったって思ったか?


それはな、柏木に告白されたから。それと…葵が稲葉の事、好きだったから。


お前の気持ちなんて知らないからさ。葵が幸せになればいいと思った」


私そんな事、全然気づかなかった。いや違う。気づこうとしなかったのだ。


彼はたくさんヒントをくれていた。曇った表情をしたりしていたではないか。


忘れもしないあの告白現場でも一瞬髪で顔が陰っていたではないか。


なのに…気づかなかった。悪いのは私…そんなわけない葉月君だ。


嘘を吐いたではないか。気になるって好きと意味ほとんど同じよ!


私は彼をポカポカと殴り「バカ!葉月君なんて大っ嫌いなんだからね」と言う。


葉月君はクスっと笑い「なんだよ。嫌よ嫌よも好きのうちってやつか?」と聞く。


今にも泣きそうな私に彼が言う。「お前って意外とツンデレなんだな」と言われる。

目線を逸らすと「っていうか告白の返事下さいよ」と言われる。


私は長年の想いを吐き出すように一気にまくし立てる。


「私だって葉月君がずっと好きだった。何回も諦めようとした。


でも無理だった。葉月君はずっと私の憧れのままだった。


葵君にはほんとに迷惑な事したと思う。好きじゃないのに付き合った。


あんたの事…忘れたかったから。私、あんたが思うよりも良い人じゃない。


あんたは本当に私でいいの?後で後悔したって知らないんだから!」


そんな脅しみたいな言葉を言ったのに彼は私を優しく抱きしめる。


「稲葉…理紗じゃなきゃダメなんだよ」と言う。初めて呼ばれた私の名前。


そんな言葉に惑わされるものですか。だけど、心臓はどくどくと早くなる。


優しくされたら困るじゃん。あんたは明るく自分勝手にすればいいのに。


そうしたら少しくらい嫌いになれただろうに。今までの想いが込み上げてくる。


昔、四人で見に行った映画の最後を思い出す。久々に再会した二人は話す。


そして彼から告白される。本当はお前が好きだったのだと。まさに今の私だ。


こんな事本当にあるなんてと涙がどっと溢れて流れていく彼の服に染み込んだ。


慌てて離れようとする私に彼は「いいから傍にいてほしい」と言われる。


私は、込みあがる想いを押さえながら、でも結局抑えきれずにもっと泣いていた。


そこに葵君がやって来て「理紗ちゃんはやっぱり葉月が好きだったんだ」と言う。

とても悲しそうな…だけど何かが吹っ切れたような清々しい顔だった。


その顔を見て私は葵君は私と葉月君が付き合う事を許しているのだと知った。


そこに咲菜がやって来て「理紗も葉月君が好きだったってほんと?」と聞かれる。


バレてしまったなーと頷く私に咲菜は「なんで言ってくれなかったの⁉」と叫ぶ。


葵君が私に殴りかかろうとする咲菜を取り押さえる。そしてこう言ってくれた。


「理紗ちゃんは今まで散々我慢したんだよ。君が分かってあげろよ。


君の事が大事だから自分の気持ちを押し殺していたのだろう?


なのに、君が怒ったら理紗ちゃんは傷つくよ。分からないのか⁉」


あの…段々葵君も怒鳴り気味になってますけど…。葵君は言い続ける。


「それにな、理紗ちゃんは葉月から君が気になるって言われてたんだぞ⁉


そうしたら絶対自分の気持ちなんて優先出来ないだろ?


君だって理紗ちゃんの立場になったらわかるはず」無口な彼がこんなにも喋った。


私はきっと葵君にとても大切に思われていたのだろうな。


葵君ごめん。私はきっと生涯あなたという人を選ばなかった事を後悔するだろう。

今ならきっとまだ間に合うだろう。


でも、いいのだ。私が好きなのは葉月君だ。


もう二十歳なら結婚だってできるだろう。だが、今はいいの。


六年間会わなかったのだから六年間を埋められるような思い出を作ろう。


二人のアルバムが出来たら、居心地がいいと思ったら結婚しよう。


私は心の中でそう呟いた。咲菜はまだ諦められないと嘆いている。


そして私を睨んでいる。恋する乙女って怖いね。それとも咲菜が怖いのかな。


葵君はこんなにも清々しいのに…。きっと葵君の性格がいいからだよね。


私は考える。葵君は何を望んでいるのだろうか。私、葵君に何かしたい。


私の気持ちに気付いたのか葵君が「友達になろう」と言ってくれる。


嬉しくてパッと笑顔になる。久しぶりに心から笑った。


葵君も微笑んでくれる。私達は手を振って別れた。


葉月君が家まで送ってくれると言うので一緒に歩く。


彼が私の手をギュッと掴む私もそっと握り返す。


二人の想いは今日やっと重なり合った。私の恋は終わってなんかいなかった。

最後は交わる二人の想いになぜか俺まで感動した。

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― 新着の感想 ―
葵君がかっこよかった 理沙ちゃんの思いが叶ってよかった
葵君がかわいそう…。けど、最後は理紗にとってのハッピーエンドになってよかったです!
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