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バイオレット・ヴェノム 一回目の生涯 ~バイオレット・ヴェノムはこうして出来上がった~

バイオレット・ヴェノムは、父アルベルト・ヴェノムと母ロゼッタ・ヴェノムの長女として誕生した。


ヴェノム家はローゼンハイム王国の王家の分家となる公爵家であり、アルベルトは現国王陛下の右腕である宰相として辣腕を奮っていた。


父と現国王ジルベルク・ローゼンハイムとは幼少期からの幼馴染で、公私ともに家族ぐるみの付き合いがあり、その関係性からもヴェノム家は国中の貴族・平民を問わず一目置かれる存在でもあった。


また、父は知略の権化の宰相職にありながら、王立学院卒業後は10年間騎士団にも所属しており最終的には騎士団長を務めるまでとなった。


退団前の2年間は戦地に赴き陣頭指揮を執り、敵国の策略に嵌って囲まれた部下100人を救うため、アルベルトのは精鋭の部下と共に20人で敵地に乗り込み、見事救い出したことは未だに語り草となっている。


その際、敵は逆にアルベルトの策略に嵌り、たった一夜にして3000人が全滅。

あたりは血の海になり、そこから笑いながら走り去った美貌が悪魔的な美しさだったという逸話から、アルベルトには『ブラッディ・ローズ公爵』との二つ名もついた。



母は隣国アーツバーツ帝国の兄が3人いる末っ子第一皇女として生まれ育ち、蝶よ花よと両親と3人の兄たちから可愛がられてきた。


ロゼッタはもともと国王ジルベルクに嫁ぐと聞かされ育てられていたが、初めてローゼンハイム王国に外遊へ来た際、アルベルトに一目惚れをし、猛アタックの末今の座を勝ち取った。



国王ジルベルクにも昔から想い人がおり、相手が王妃に相応しい女性だったことと、相手の女性も憎からず思っていたが、ロゼッタがいることであきらめていたらしい。


国王ジルベルクはアルベルトと共謀し、お互い想い人と添い遂げるため知略を駆使してお互いの両親と国民を納得させる形で今の妻をもらい受けた。


それが現王妃のマリアンナ・ローゼンハイムだ。


バイオレットは文武に長けた父とガッツのある母から生まれたことを誇りに思い、素晴らしい両親の娘に生まれてよかったと常々思っていた。


父から譲り受けたプラチナブロンドと、母から譲り受けたアメジスト色の瞳で、顔立ちは生まれながらにして高潔で、5つ離れた兄であるルークベルト・ヴェノムが生まれたとき動揺、天使の降臨とさえ言われた。



バイオレットは望むものは何でも与えられた。


元来神経質なところを持ち合わせた彼女は、赤子のころからその性質がでており、ちょっとでも暑いとぐずり、寒くてもぐずり、産着の収まりが悪いとぐずり、という具合にぐずり倒していたが、そのたびバイオレット付きの侍女やメイドが変わるほどだった。


自我が芽生えたころには、ちょっとでも気に入らないことがあると泣き出し、玩具や食べ物を投げつけるようになった。

だが、侍女やメイドは解雇を怖がりなにも言わず、主人である公爵夫妻には「とてもいい子にしていた」と報告するようになっていた。


4歳~6歳のころは、アルベルトやロゼッタが連れてきた所謂遊び相手と遊ばせていたが、やはりそこでもちょっとでも気に入らないことがあると、棒で叩いたり、階段から突き落としたりと、相手にケガを負わせていた。

だが、遊び相手は公爵家より格下の子供ばかりだったので「自分からぶつかってしまった」「転んで階段から落ちてしまったようだ」と親たちはアルベルトとロゼッタに報告していた。


そんな経緯から、バイオレットは自分が気に入らないことで、相手に不遇を押し付けても何も言われないことが「当たり前」となって育ってしまった。


学院初等部に入学後は、ますますエスカレートする。


宿題は人にやらせるのが当たり前。

「だって私はやりたくないけど、お友だちは私の宿題をやりたいと仰ってるもの。」


移動教室の荷物を持ってもらうのは当たり前。

「だって重いものを持つと疲れますもの。お友だちが私のものを持ちたいと仰ったの。」


授業を聞かないのは当たり前。

「だって先生のお話は微塵も理解できないわ。理解できないお話をする方が悪いと思うわ。」



中等部に上がると、自分の考えを押し付けるようになった。


クラスメイトの制服を切り刻む。

「だってあの方の制服はお姉さまのお下がりで古臭いのよ。

 着れなくなってしまえば新しいのを買ってもらえるでしょう?」


クラスメイトの教科書を窓から投げ捨てる。

「だって休み時間もお勉強してらっしゃるのよ。

 私と一緒に遊んだほうが楽しいわ。」


クラスメイトのお弁当をトイレに流す。

「だって毎日薄いハムを挟んだパンしか召し上がらないのよ。

 学院のカフェテリアの食事の方が美味しいわ。」



高等部に入るころには、バイオレットに阿るものが出てきて行為を煽った。


扇子でありとあらゆるところを打ち付ける。

「だってバーダック伯爵令嬢があなたから謂れのない嫌がらせをされたと仰ってましたわ。

 同じことをして差し上げたのよ。自分がやられたらお嫌でしょう?」


突然髪の毛を切る。

「だってビグモダー男爵令嬢が前髪を突然あなたから切られたと仰ってたわ。

 刃物が目の前に来るのは恐ろしいでしょうから、私は後ろにしてあげたのよ。」


服を脱がせて公開身体検査を行う。

「だってダルケン子爵令嬢があなたが万年筆を盗むところを見たと仰ったわ。

 服のどこかに隠したとも仰ったわね。調べただけよ。」


ただバイオレットはなにも思わない。

むしろ、級友を助けたという満足感さえあった。


バイオレットが両親、特に父であるアルベルトから溺愛されているのは周知の事実で、誰も表立って抗議をするようなことはしなかった。


また、バイオレットの「親切」が学園内だけで行われていることによって、公にされることはなかったし、両親の耳にも入らなかった。

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