人間になれない人魚
美海の記憶と人生と引き換えに手に入れた足。
え?美海自身も手に入れてるじゃないかって?
あの子は私の人形になる運命だったんだ。
足があっても上手く歩けない。
練習して少しは歩けるようになったけれど、まだ難しい。
もう人魚ではない。人間だ。
歩くのも走るのも、もっと上手にならなくては。
美海みたいに歩きたい。
靴、というものを初めて履いてみた。
すごく歩きづらい。
人間はこんなものを履いて生活しているのか。
裸足とはまた違う感覚だから気を抜くと転けてしまいそうだ。
美海と一緒にお風呂に入る時、どうも泳いでしまう。
広めに作った風呂は泳げるサイズ感だ。
水中でずっと息を止めるのはもちろん、ノンストップで泳げる。
人間の足があっても、人魚じゃなくなったわけではない。
私がなりたい姿はこんなものだったのだろうか。
美海には空を見るな、と言いつけてある。
理由は「空」は「水面」だからだ。
ここは地上ではない。海中だ。
美海には水中でも生きれるように呪いをかけておいた。
その呪いは、水面を見てしまうと解けてしまう。
つまり溺れて死ぬ。
そんなことはあってはならない。
私の手で殺めるまでは。