天美の呪い
天美の歌声に引きずり込まれる。
洗濯機に入れられたかと思うくらいに視界が回る。
苦しいと思う暇もないくらいに回り続けた。
目に映る桃源郷のような世界。
天美のソプラノが風を起こす。
どうなってしまうんだ、私。
気がつくと花畑に居た。
「おはよう、海奈。お花の冠作ったからあげるね。」
色とりどりの見たこともない花。
頭に載せると、記憶が飛ぶような感覚がした。
「あなたの名前は夜咲美海。私があなたの主人よ。」
よさき…みう?わたし、あなたのこと、
「なにも考えないでいいの。私に従えばいい。いい子だから分かるでしょう?」
分かった、
海奈…いや、美海は今までの記憶が消された。
消されたというよりも泡になった。記憶が詰まった泡は、天美の手の中で潰されるか潰されないかの運命にかけられている。
天美は美海に問いかける。
「私とどんな家に住みたい?どんな理想でも叶えてあげる。」
海みたいな家がいい。天井にはお月さまが浮かんでるの。
「分かった。」
天美は再び歌った。
高い声は辺り一面を包み込む。
強い風を巻き起こしながら、天美の長い髪は美海の視界に絡みつく。
どこにも飛ばされないように身体中を縛り上げて。
「美海起きて!出来たよ〜」
きれいなお家だね!
海のような澄んだ青の壁紙。天井には満月のランプ。
家具は白で統一されている。
「美海は私の隣にずっと居てね。絶対離れたらいけないよ。」
天美ちゃんの隣ずっといるね。言われたことは守る!
「いい子だね、美海。」
「私の操り人形完成」