2024/4/3
明るい光が差し込み目が覚めた。
辺りを見渡すと砂浜だった。
海を見ると天美はもう居ない。
甘い蜜のような言葉が心を溶かす感じがしてから記憶がない。
家に戻り、急いでシャワーを浴びる。
髪を乾かし、制服を着た。
走って学校へ向かう。
なんとか電車に間に合い、車内で髪を結んだ。
朝はいつも時間がない。
始業10分前に着き、遅刻は免れた。
もう既にグループが出来ており、みんな騒がしくしている。
机に突っ伏して陰キャになる。
寝そうになった時チャイムが鳴り響いた。
「早く席に着いてください。」
担任は可愛い見た目だが指導は甘くないらしい。
「昨日言ったとおり、6時間授業が始まります。初めての授業で慣れないこともあるでしょうが頑張ってください。」
HRは足早に終わった。
1時間目が始まるまでクラスが動物園と化す。
また机に突っ伏し、お腹が空いたことに気付いた。
あれ、昨日晩ご飯食べてない。朝ご飯も食べてない。昼ご飯…。弁当作ってない。
ご飯を完全に忘れていた。
学食はあるらしいが、お金すら持っていない。
1日ご飯抜きが確定した。
「はい、数学の授業始めます。誰か号令してくれるか?」
見た目から性格まで陽キャな女が手を挙げた。
「私がやります!起立。礼。着席。」
お腹が空いて倒れるかと思った。
「まず自己紹介から―
じゃあ授業初めます。」
意味不明な数学の授業。
中1のときに躓いて以来、数学は敵になった。
まるで暗号を聞いているようだ。
50分経過し、授業が終わった。
名指しされなくてよかった。
なにも答えられずに吃るのはとてもじゃないが恥ずかしい。
2時間目は理科。3時間目は国語。4時間目は社会。
どれもこれもつまらない。分からない。嫌になってくる。
昼休みになった。
何もすることがない。また寝た振りをする。
虚無。
5時間目は家庭科。6時間目は道徳。
記憶は全部抜けている。
気付けば帰りのHRも終わっていて電車の中に居た。
どうも向いていない。この世界で生きること。
ただいま。
誰も居ないのに言う必要はあるのだろうか。
学校、長続きしないだろうな。
そう思いながら制服を投げる。
買いだめしているカップ麺のビニールを剥がし、湯を沸かす。
蓋を開け加薬と粉末を放り込んだ。
揺れる火を見ていたら湯が沸騰していた。
湯を注ぎ、3分待つ。
自分のためにご飯を作ることはない。
作れない。作る気力がない。
自己嫌悪しているとタイマーが鳴り響いた。
台所の床に座り麺をすする。
冷たい床と熱い麺。
空っぽになっている胃を満たす。
心は満たされないが。
食べ終え、布団に逃げた。
現実から、自分から逃げる。
弱虫だなんて言わなくていい。
自分自身が一番良く分かっている。
寝れない。
天美に早く会いたい。
夜しか現れないあの人魚に。
天井を見つめていると窓から入ってくる光が段々暗くなってきた。
夜が来る。
重い体は天美に会えるというだけで軽くなる。
髪を結び直し、タンスの奥底に仕舞っていたワンピースを取り出す。
少しキツいが着れないことはない。
靴を履いて海へ行く。
「海奈だ〜来てくれてありがと。」
会いたかったよ。辛かった。
「そっかー、私なしじゃもうダメでしょう?」
まるで悪魔のような笑みを浮かべる。
天美が居なきゃ嫌だ。あなたが居ないとダメ。
「いい子だね。明日くらいにはいい知らせをあげるよ。一晩待っていてね。」
そう言いながら私の頭を撫でる。
温かく、柔らかい白い手。
「ずっと一緒に居ようね。」