2024/4/2
あれから家に帰り、シャワーを浴びて寝た。
昨日のことは現実だったのだろうか。
可愛かったな。
食パンを焼き、食べ進める。
テーブルの上にお金が置かれているのに気付いた。
今月分の食費、日用品等のお金。
深夜に母が帰ってきたらしい。
お金じゃなくて家族の時間が欲しかった。そう思ってしまう。
制服を着て、身だしなみを整える。
時間が過ぎるのはあっという間で、既に7時30分だ。
急いで学校に向かった。
今日の授業はオリエンテーション。
学校中を周った。
私立だからなのか校舎がとても広く、余裕で迷子になれる。
施設自体は綺麗なので過ごしやすそうだ。
教室に戻り、自己紹介をすることになった。
初めは担任だ。
「如月優羽です。よろしく。」
すごく簡潔だった。もうちょっと紹介してほしかった。
1番から順に、自己紹介を進めていく。
自己紹介といってもみんな名字しか言わない。
自分の番になるまでずっと緊張してしまう。
気が付けば自分の番になった。
空上海奈です。よろしくお願いします。
なんとか言い終え、安堵する。
そして全員分の自己紹介が終わった。
「お疲れ様でした。今年1年、この35名で過ごします。部活や合同授業で他クラス、他学年とも交流がありますが、まずはこのクラスに慣れていきましょう。」
チャイムが鳴り響いた。
今日は午前授業。やっと帰れる。
「明日から6時間目まで授業が始まるので忘れ物にはくれぐれも注意を。それでは気を付けて帰ってください。」
さようなら!と威勢の良い挨拶が教室中を満たす。
足早に家に帰った。
友達なんて要らない。誰かと一緒に過ごす時間は私にとって苦痛だ。
あの学校に行きたかったわけではないし、進学する気もあまりなかった。
ただ、死ねないから生きているだけ。
あの人魚は私に彩りを加えてくれるか?
お昼ご飯はカップ麺。作るのは面倒くさい。
ラーメンで腹を満たし、自室に戻る。
ベッドにダイブし、スマホをいじる。
どれもこれもつまらない。私の好きはどこにもない。
私が私である以上、この現状は変わらないだろう。
ふて寝していたら夜になってしまった。
こうやって時間を無駄に過ごす。
いい加減学習してほしい。
布団から起き上がり、ボサボサになった髪をまとめる。
本当は大好きなツインテールをしてみた。
あの人魚の前なら。自分らしく居られるかもしれない。
髪飾りもつけて、家を出た。
「来てくれたね。嬉しいな。」
そう天美は言う。
「あ、ツインテール。あの頃と同じだね。やっぱり可愛いの好きなんじゃん。」
あの頃って小さい時?可愛いのは…、好きだよ。
「私の前では好きな格好して好きな自分で居ていいから。素直になれよ。」
ありがとう。天美は優しいね。
彼女の顔を見ると満更でもない表情をしていた。
「海奈の親どうしてんの?やっぱり仕事なわけ?」
ずっと仕事だよ。2人とも帰ってこないし。
「ずっと変わってないんだね。何年も1人じゃ寂しいでしょ。」
もう寂しいとは思わない。だけど―
気付けば泣いていた。
天美は私のことを抱きしめてくれた。
「海奈、私が居るからもう寂しくないよ。」
彼女の優しい声と言葉で心が溶けそうになる。
「これであんたは私の物だね。」