2024/4/1
2024年4月1日
私は高校生になった。
新しいセーラー服に袖を通し、髪を結う。
新生活は楽しみでもあるが、不安でもある。
どんな高校生活が待ち受けているのだろうか。
鞄を持ち、ローファーを履く。
そして家を出る。
今日は入学式だ。
電車に乗り、学校へ向かう。
今日から行く高校は知っている人は誰も居ない。
どんな人が居るのだろう。
電車を降り、改札を抜ける。
駅から10分ほど歩き、学校に着いた。
入学式の看板が建てられ、大勢の人が群がっている。
誘導されるがままにクラスが書かれた掲示板の元へ行く。
自分の名前を探すのも大変だ。
1年4組18番 空上海奈
自分の名前を見つけた。
じゃれ合う同級生を横目に早足で1年4組の教室へ向かった。
教室に入る。
黒板には入学おめでとうと書かれていた。
自分の席を探す。出席番号順の並びらしい。
多分ここだよね?
そう思いながら着席した。
チャイムが鳴り、スーツ姿の先生が現れた。
「ご入学おめでとうございます。今年度担任を務める如月です。よろしく。」
綺麗な女性の先生だ。
「今から式の説明をします。」
話を聞いても頭に入ってこない。
周りに合わせれば大丈夫だろう。
「それでは体育館へ向かいます。」
出席番号順に並び、体育館に行く。
パイプ椅子に座り、式が始まるのを待つ。
なんだか緊張してきた。
「只今より第〇〇回入学式を始めます。」
式が始まった。
国歌を斉唱し、校長先生の長い話を聞く。
先生たちも紹介された。
気付けば式は終わっていた。
「今から教科書を配ります。」
分厚く重い教科書たち。
1年でこの量を終わらせるのかと思うと嫌になる。
昼過ぎになり、今日の学校は終わった。
大量の教科書と大量の書類はとても重く、体力を蝕む。
入学式だから親が来ている人も多く居て、親に荷物を預けている人も居た。
うちは違った。なんだか悔しく寂しかった。
結局誰とも話さなかったな。
そう思いながら帰路に着く。
鞄を投げ捨て、ソファに埋もれる。
制服を着たまま、眠りに落ちた。
「みな…、海奈。」
誰かが私の名を呼ぶ。
目を開けると、海に居た。
私、砂浜で寝てた…?なんで?
「海奈、久しぶりだね。今日の夜、ここに来てよ。待ってるから。」
美しい女性がそう話す。
なぜ私の名前を知っているのか。
なぜ会ったこともないのに久しぶり、なのか。
疑問ばかりが膨らむ。
風が吹き、視界は砂に覆われた。
目が覚める。
あれは夢だったのか。不思議だったな。
辺りは既に真っ暗で、街灯の光が差し込んでいた。
海、行ってみるか。
そう思い、ショルダーバッグに荷物を入れる。
行ってきます。
誰も居ない家に挨拶をした。
暗い夜道を歩き、海へ向かう。
私の家は海の近くだ。
歩くこと20分。海に着いた。
海風は冷たく、波打つ音だけが聞こえる。
堤防の光に照らされる人影が見えた。
近付くと、こちらを振り向いた。
「来てくれたんだね。会いたかったよ、海奈。」
優しく微笑みながら彼女は言った。
私、あなたと会ったことないよね?なんで私の名前知ってるの?
「忘れちゃったかー、そうだよね。少しお話しようか。」
…ちょっと待って、その足。人魚?え?
「今更気付いたの?私は人魚だよ。びっくりした?」
驚きを隠せない。なんでこの海に人魚が居るんだろう。
「海奈がまだ小さかった時、この海で溺れていたの。私が助けてあげたんだ。えらいでしょ。」
少しだけ溺れた記憶がある。当時の私と同じくらいの背丈の人が浜辺に打ち上げてくれたのだ。
あれってあなただったのね。助けてくれてありがとう。
「どういたしまして!あれから海奈と毎晩遊んだ。楽しかったんだよ。なのに海奈が…。あんたが私のことを誰かに話した。」
なにも覚えてないよ。それって本当に私だったの?
「私と海奈はペナルティを受けた。私は10年間地上に上がることは許されなかった。海奈は私と過ごした記憶が泡になって消えた。」
10年経ったからあなたはまたここに来たの?
「そうだよ。ようやく会えた。私のことは誰にも言ってはいけないよ。そうじゃないとまたペナルティ受けるんだから。」
分かった、ごめんね。
「私の名前は天美。またよろしくね。
よろしく、天美。
高校1年生最初の日。
私は幼い頃の友達と再開した。
でもそれが人魚だったなんて。
夢のような時間がこれから始まる。