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12.何かできるかもしれない

 何があったのか、それは翌日になるとすぐに皆の知ることとなった。

 アルバートが使用人たちを集めて事情を話してくれたからだ。

 

 どうやら、この屋敷は別の人へ貸すことになったらしい。そしてアルバート達は、もっと南にある他の屋敷へと移ることにしたそうだ。

 新しいこの屋敷の主人はアルバートの知り合いだそうだ。この土地から離れるのが難しい人は、このまま新しい主人に雇ってもらえるし、そうでなければ南の屋敷まで着いてきて欲しいという内容だった。


 新しい屋敷は良く伯爵たちが旅行で行っていた場所で、気候の良い地域らしい。

 アルバートが皆へ説明する前に広がっていた噂に、不安になっていた使用人達もそれを聞くとホッとしたような顔をしていた。


「保養地で観光地でもあるのよ」


 オーロラの算数の問題の添削をしながらポピーが教えてくれる。

 

「ポピーさんも行ったことがあるんですか?」

「ええ。何度かね。こっちと違って天気も良い日が多いから、奥様の御容態もよくなるかもしれませんね」


 ポピーが眉を下げてほんの少し寂し気に微笑みながら言う。

 この屋敷から離れることに対して、やはり寂しいのかもしれないとエヴァは思った。


「ポピーさんも一緒に行くんですよね?」

「もちろん。今は家庭教師も良い条件で雇ってもらうのが難しいの。お嬢様が学校に入られるまでは働かせて欲しいわ」


 エヴァはもちろん着いて行くつもりだ。

 王都以外であればどこでもいいのだ。

 

 ただ、何故屋敷を人に貸すことになったのだろう? 使用人たちは勝手に「破産」したんだ。とか噂しているけれど。

 確かに昨日今日と弁護士が屋敷に来ているようだった。


 エヴァはここではただのお嬢様の小間使いだ。

 詳しい事情なんてアルバートが教えてくれる訳がないだろう。

 エヴァからオーロラや、他の使用人に広まっても困るだろうし。

 

 ただの使用人。

 深入りすべきじゃない。

 でもエヴァには他の人達にない伝手もある。

 そして何よりも、エヴァはアルバートを助けたいと思っているのだ。


 ――困っているなら助けたい。だって私には何かできるかもしれないもの!


 あてがわれている使用人部屋へと戻ると、書き物机の上に一通の手紙が置いてあった。

 宛名を見ると姉からのようだった。

 ここで働くエヴァのことを慮ってか、無地の封筒が使われていて封蝋もされていない。


 封を切ると、便箋には今エヴァが一番知りたい情報が書かれていた。

 文字を追うごとに頭が痛くなっていく。

 

「なるほどそれで……。類は友を呼ぶと言う言葉がぴったりですこと」


 溜息を吐く。

 手紙を書き物机の引き出しにしまおうかと考えたが、考え直してポケットに入れて持っておく。

 そしてトランクからタロットカードを取り出した。

 王都を出てからなんだか見る気もなくなって、トランクの中にしまっていたっきりだったけれど。

 パラパラと絵柄を眺める。

 

 母国ではタロットカードなんて、女性のちょっとしたお遊び程度の認識だった。実際エヴァもお友達と恋占いをして遊んでいた程度だった。

 それかインテリア扱い。

 綺麗な絵柄を集めて収集するのだ。

 

 でもこちらの国に来たらタロットカードへの考え方が違うのか、妙に信ぴょう性が高く受け取られてしまうことが多かった。

 そのこともあり、怖くなって占いをすることを止めたのだった。

 

 エヴァはそれも準備をすると、日曜日が来るのを待ったのだった。

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