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第32話 夜空に咲く花火、そこに君はいなくて

—1—


 仙台七夕花火の打ち上げ時間は19時15分から20時30分。

 オレは電車と地下鉄を乗り継ぎ、西公園までやってきた。

 時刻は18時30分。

 例年45万人の人出があると公式ホームページに書かれているだけあって会場はかなり混雑していた。

 花火を見る前に人に酔ってしまいそうだ。

 藤崎さんは部活の練習が押しているらしく到着までもう少し掛かるらしい。


「この混み具合だと出店で食べ物を買うだけでも一苦労だな」


 藤崎さんが来るまでに焼きそばでも買っておこうかと思ったが出店の前には長蛇の列ができていた。

 花火を見るスポットも人で埋まっていてもはや空いているスペースを探す方が難しい。

 今までは里緒奈の父親が場所取りをしてくれていたからすんなり花火を見ることができたが、今日は頼れる人はいない。

 どこか良い穴場スポットはないものか。

 辺りを見渡しながら歩いていると右も左もカップルだらけでちょっとだけ気まずい。

 1人で歩いているとなんか恥ずかしいな。

 というかこれだけ混んでいたら藤崎さんと合流できるかすら怪しい。


「喉渇いたな。自動販売機でも探すか」


 出店でラムネを買うよりも自動販売機を見つけた方が早く買えそうな気がする。

 歩きながら無意識に腕を掻いていたら足まで痒くなってきた。

 どうやら蚊に刺されたみたいだ。こんなことなら家を出る前に虫除けスプレーをしてくればよかった。

 なんか始まる前から肉体的にも精神的にも結構なダメージを受けてる。辛い。


「お、秋斗じゃん!」


「深瀬くん、ヤッホー!」


 颯と更科さんが人混みに流されながらこちらに歩いてきた。

 出店で色々買い込んだのか颯がビニール袋を持っていて、更科さんはチョコバナナを食べている。

 今日の更科さんは特に変装をしていない。

 この人の数だし、花火が上がってしまえばみんな空を見上げるから変装する必要もないのか。


「まだ藤崎さん来てないのか?」


「ああ、部活が長引いてるらしい」


「そうか。もうそろそろだから間に合うといいな」


「祭、花火見るの楽しみにしてたみたいだよ。人も多いし、ナンパされないように深瀬くんがしっかりエスコートしてあげてね。祭、可愛いから」


「エスコートって。でもまあここにいても仕方ないから駅まで迎えに行ってみるよ」


 駅までは徒歩3分。

 人でごった返しているだろうが会場にいるより見つけやすいはずだ。


「応援してるよ〜」


 更科さんと颯に見送られながら会場を後にする。

 駅に向かう途中で藤崎さんにCROSS(クロス)でメッセージを送るも既読は付かない。

 恐らく移動中なのだろう。


 自動販売機で水を2本買って喉を潤す。

 どこもかしこも人、人、人。

 夏祭りや花火は小説を書く上では定番イベントの1つだが、自分が物語の主人公のような経験をすることになるとは夢にも思っていなかった。

 藤崎さんとのフリースロー対決の時は空振りに終わったからな。


 藤崎さんは何を思ってオレを花火に誘ってくれたのか。

 真意は分からない。

 けれど意味もなく異性を誘ったりはしないはずだ。


 だめだ。

 花火会場に来てからカップルを見過ぎて脳が恋愛に侵食され始めている。

 過度な期待はするな。

 きっとオレが花火に誘ったことを覚えていて誘ってくれたんだ。

 そこに深い意味はない。


 暑さと人の熱気から逃れるように水を口いっぱいに含む。

 ペットボトルが空になり、夜空に花火が打ち上がる。

 大きく咲いた一輪の花は水族館で見た海月くらげのように綺麗だった。

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