リアルな女子高生
私、小出千咲。高校1年生。
先月に受けた模試の結果が返ってきたけど、その結果を見るなりお母さんは
「高校に入ったからって油断して、勉強から逃げてない?」
って言ってきた。高校入って数日の時にあった最初の実力テストだって、全然成績はよくなかったけどそんなこと言ってこなかったのに。模試でも成績のことは何も触れずに、志望校一覧みたいな欄を見てそう言ってきた。学校でやってる理科系の研究の授業が楽しいから、なんとなく理学部化学科志望と書いていた。これはいけなかったのかな?その時はばつが悪くて、宿題が多いから片付けたい、と言って誤魔化して逃げたら余計に心配された。宿題すらできない、と思われちゃったのかな。
そういえば、高校入学前のオリエンテーションで研究の授業をやるクラスを希望と書いた時もお母さんは反対してきた。うちの高校は地元では一応トップ校だけど、お母さんの高校は県内で上から2番目とか3番目とか確かそんなレベル。お母さんの高校の方が、よっぽど入るの難しいんだよね。うちの高校もだいぶ宿題多いけど、ひょっとして宿題も、お母さんの高校の方がさらに多かったのかな。研究の授業も、理学部化学科を志望すると書いたのも、お母さんからしたら全部逃げとしか思えないのかな。
この件から、家に居づらいと感じるようになった。
「やりたいことがあるのは素敵なこと」
なんてよくいうけど、その「やりたいこと」が自分の首を絞めているような気がしなくもない。とりわけこれといった大きな目標なんて何もなかった中学時代のほうが、楽だったかもしれない。ジーンズが欲しいとか、そんなことは普通に言えても将来の目標まではまだ言えない。こんな田舎の自称進学校だと、先生だって考えが古臭い。理学部行きたいなんて言っても
「甘えたい女の子のたわごと」
って思われそうで嫌だなぁ。気づけばやりたいことなんて言えない。学校で周りを見渡せば、割と垢抜けた子も多くて、カップルだって結構いる。土曜日の午後だって、部活で登校する子が多くて学校は賑やか。みんな、パワフルだな。いいな。