74.私の一番大切なもの、妙子の場合
(一番大切なもの、妙子の場合)
良一、目を覚ましてよ。
このまま死んじゃうなんてことないよね。
良一のおかげでお母さん、やっと目を覚ましたのに……
あんたが病気になってどうするのよっ!
あたし、良一のこと好きよ……
大好きよっ!
いつもわがまま言ってごめんね。
もう良一を困らせたりしないから。
お料理も後片付けもお掃除もするから、だから目を覚ましてよ。
あたし、これからどうすればいいのかわからないよ。
もう良一なしでは生きていけないから……
小さいとき、あなたが始めて、あたしの家に来たとき、弟ができたみたいで嬉しかった。
本当いうと、弟っていう意識はなかったけど、大きなお人形か、子猫か子犬を飼うみたいで大喜びしたのよ。
でも、すぐにわかったわ……
お人形よりも、子猫よりも、良一が最高にいいって……
私のもの、私の全てって思ったのよ。
それに何でも言うことを利いてくれて、何でも一緒にやってくれて、良一がいつもあたしを見ていてくれたから、安心して何でもできたのよ。
良一が後ろで支えていてくれたから、大きな勇気がもてたのよ。
本当にあたしの分身のように思っていた。
あのお風呂、気持ちよかったね。
体中、石鹸だらけにして、体を擦り合わせて、ぬるぬるぬるぬる、とっても気持ちよかったね。
私、またあれやりたい。
良一と一緒にお風呂入りたい。
良一も、お風呂一緒に入りたいでしょう。
洗いっこしたいでしょう。
今度は、わたしが良一を支えてあげるから……
良一のためなら何でもするから……
だから目を覚まして……
お願い……、お願い……




